【アルペンスキー】W杯男子スラローム第1戦、日本チームからは小山陽平と加藤聖五が参戦

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【アルペンスキー】W杯男子スラローム第1戦、日本チームからは小山陽平と加藤聖五が参戦

10月29日のオーストリア、セルデンでの開幕戦、男子ジャイアントスラロームは、1回目47人が滑った時点で強風によりレースがストップ、そのまま中止となってしまった。

10月に入っても、ほとんど降雪がなかった今年のセルデン、ゴール近くにカバーをかけて溜めた6万立方キロメートルもの雪を伸ばしてコースを造成し、「奇跡」とも言える開催にこぎつけたのだが、思わぬ突風がレースの成立を妨げた形となった。

「Snow Japan」、日本チームは54番で加藤聖五(野沢温泉SC)、67番で若月隼太(GALA湯沢SC)の両選手がスタートするはずだったが、その前にレースは中止となり、今季の男子W杯開幕が「お預け」となった。

月が替わり、11月になってヨーロッパアルプス各地のスキー場で数日に渡って降雪があって心配された小雪も解消に向かい、多くのスキー関係者は安堵したのも束の間、11、12日の両日に、今季の男子の「事実上の開幕戦」となるはずであったW杯初開催、ツェルマット・チェルビニアの滑降が降雪と強風の悪天候続きでまたもや中止の憂き目にあう。

なんと、男子W杯は未だ「開幕」せず、11月18日(土)にオーストリアのグルグルのスラロームで、ようやく3週間遅れてのスタートを迎えることになる。

グルグルは毎年恒例の開幕戦セルデンの地から、さらに車で15分ほど山道を上がったところにあり、ツェルマット同様、W杯は初の開催となる。

昨季のこのスラローム種目別年間チャンピオンはノルウェーの23歳、ルッカス・ブラッテン。
今季も彼を中心としたスラローム戦線が予想されたが、開幕の2日前にセルデンの地で突然の引退表明。ノルウェースキー連盟との契約外ブランド着用をめぐるトラブルにより、「自分らしく自由でいたい」と涙ながらに訴え、騒動となった。

昨季のスラローム種目別王者23歳の早すぎる引退表明に周囲はただ驚くしかなかった 【写真:田中慎一郎】

大本命が突然、主役の舞台を降りてしまった今季の男子スラローム戦線は混沌としそうだが、ヘンリック・クリストッファーセン、クレモン・ノエル、マルコ・シュバーツら実力者を中心とした展開を予想する。

今季も「少数精鋭」の陣容で臨む加藤聖五(右から3人目)と日本チーム 【写真:田中慎一郎】

「Snow Japan」、日本チームからは加藤聖五(野沢温泉SC)、小山陽平(ベネフィット・ワンSC)の2選手が出場する。

加藤聖五は、夏の南米チリでの10日間、技術系スラローム(以下SL)のスキーは履かず、高速系スーパーGの練習に明け暮れた。
河野恭介チーフコーチの方針で、10月の欧州でも、アルペン競技4種目(ダウンヒル、スーパーG、ジャイアントスラローム、スラローム)の中で「スキー技術の基本」といわれるジャイアントスラローム(以下GS)を中心に練習を積んできた。

今季はその得意とするGSに加え、日本人トップのFISポイントを有するSLにもフル参戦し、さらに技術系だけでなく、高速系スーパーGのFISレースにも積極的に出場していく計画だ。

「高速系の練習でスピードへの耐性が上がり、(先の旗門を見る)目も慣れることが(滑走時の視界が広がり滑りに好影響なのが効果として)大きい」と語る加藤聖五、高速系、GSの技術をSLにも活かす好循環で飛躍のシーズンにしたい。

「今シーズンはGS、SL両種目でW杯ポイントを獲得し、日本選手のW杯出場枠を増やすこと、そして両種目ともに最終戦に出場すること」を目標に置く。
自身の体調はこれまでになく「万全」と開幕戦への準備は整っている。

昨季は自分の思うような滑りができなかった小山陽平、今季は基本を見直し練習を積んできた 【写真:田中慎一郎】

小山陽平は昨季、ドイツ、ガルミッシュ・パルテンキルヒェンで25位を記録したものの、成績はその1戦のみで、W杯出場8戦中、1本目40位台が3度、旗門をまたいだ途中棄権が3度と、何とももどかしい成績だった。

普段の練習でもポールをまたいでしまう失敗がほとんどない小山陽平だが、レースになると入れ込みすぎて、気持ちと身体が噛み合わない状態が続き、滑りを修正できずに焦っているうちにシーズンが終わってしまった。

今シーズンは10月中はGSをメインとした練習で基本を見直し、11月に入ってからSLの練習を行なっている。
「(順位などの)数字にとらわれず、一戦一戦、レースで自分の力を出すことだけに集中したい」と語る小山陽平、今シーズンはW杯SLのレースを中心に戦い、GSはFISレース、ヨーロッパカップに出場してポイントを上げていく計画だ。

アルペン強国オーストリアで「コーチ修行」を積んできた河野恭介男子チーフコーチ(日本チーム写真左から2人目)は、加藤聖五と小山陽平の状態について、
「自信を持って滑ってくれれば、自ずと成績はついてくるはずで、オーストリアやスイスの強国に比べれば練習環境は劣っているかもしれませんが、『ハングリー精神』旺盛な日本選手の『下剋上』に期待してください」と、その指導内容に自信をのぞかせる。

15日から3日間はグルグルのトレーニングコースでレース前の「仕上げ」の練習を行う日本チーム、基本に立ち返ってGSをメインにトレーニングを積んだ今季のSL初戦、まずは2人揃っての2本目進出なるかに注目だ。

文:田中慎一郎
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著者プロフィール

公益財団法人全日本スキー連盟は、日本におけるスキー・スノーボード競技を統括すると同時に、普及・振興の役割も担う競技団体。設立は1925年、2025年には設立100周年を迎える。スキージャンプ、ノルディック複合、クロスカントリー、アルペン、フリースタイル、スノーボードの6競技において、世界で戦う選手たち「SNOW JAPAN」の情報や、FIS(国際スキー・スノーボード連盟)ワールドカップなどの大会情報をお届けします。

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