【浦和レッズ】ストーリー性のある3試合を前に西川周作が思うこと「次が最後だと思って」「彼らが報われてほしい」

浦和レッドダイヤモンズ
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 2月18日に開幕した2023シーズンのJ1リーグも、残すところあと3試合――。

 11月12日にヴィッセル神戸戦、25日にアビスパ福岡戦、12月3日に北海道コンサドーレ札幌戦が組まれている。

 わずかながら逆転優勝の可能性を残す浦和レッズにとって、いずれも大きな意味を持つ対戦相手――その巡り合わせに、西川周作は胸の高鳴りを隠さない。

「まずは首位の神戸を叩かないことには始まらない。埼玉スタジアムにはたくさんのファン・サポーターが来てくれると思うので、勝利を届けたいと思います。その次は福岡とのリベンジマッチ。(YBC)ルヴァンカップの借りを返さないといけない。最後はミシャ(ミハイロ ペトロヴィッチ監督)率いる札幌。ストーリー性がすごくある3試合だと思うので、モチベーションが高まっています」

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 リーグ戦のラスト3試合をどう戦い、どのような結果を残すか――。

 まさに“マチェイレッズ”の真価が問われている、と西川は考えている。

「もちろん、ACL(AFCチャンピオンズリーグ)や(FIFA)クラブワールドカップも残っていますが、長いシーズンを戦ってきて、僕はリーグ戦の終わり方がすごく大事だと思っていて。ルヴァンカップ決勝で負けて、そのままずるずる負け続けるのか、再び勝利を重ねて終わるのかでは全然違います。

 今シーズンは本当に粘り強く戦えるようになってきた。チームとしての成長をすごく感じられるし、マチェイ(スコルジャ)監督のもとでチームのベースがしっかりと築かれてきたからこそ、ルヴァンカップの敗戦でガタガタと崩れてしまうのはもったいない」

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 5月6日に行われたアルヒラルとのAFCチャンピオンズリーグ2022決勝や、10月15日の横浜F・マリノスとのルヴァンカップ準決勝第2戦では、観る者の胸を焦がすようなヒリヒリとした戦いを制してみせた。

 今季の公式戦初勝利となった3月4日のセレッソ大阪戦や、後半開始直後から数的不利となった9月24日のガンバ大阪戦に代表されるように、逆転勝利を飾った試合も少なくない。その数はカップ戦を含めて実に7試合。昨季は逆転勝利が1度もなかったことを考えれば、大きな進歩と言える。


 リーグ戦での22失点はリーグ最少、5敗はリーグ最少タイの成績だ。GK西川とセンターバックのアレクサンダー ショルツ、マリウス ホイブラーテンを中心に鉄壁の守備を見せてきた。

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 一方、リーグ最多タイとなる12引き分けが表しているように、勝ち切れないゲームが多いのも事実である。

 37得点は上位陣の中では最も低い数字で、引き分けが多い要因として得点力不足が挙げられる。だが、それを攻撃陣だけのせいにするのは間違っている、と西川は指摘する。

「失点の少なさに関して守備陣がクローズアップされがちですが、今季は前線からのハードワークに非常に助けられてきたなって。前線からの追いかけ回しだったり、ボランチの(岩尾)憲や(伊藤)敦樹がスペースを消したり、最終ラインのカバーに奔走してくれて。

 そうやって前の選手たちが守備で頑張ってくれるから失点が少ないし、逆に彼らは守備にパワーをすごく使うから、攻撃に移ったときに難しい面もあったと思う。僕たちは全員攻撃・全員守備のチームなので、最後までその意識は継続して、後ろの選手たちも攻撃をもっとサポートできるようにしたいですね」

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 もうひとつの今季の課題が、試合への入り方が悪いゲームがあること。この課題が露呈したのが、11月4日の福岡とのルヴァンカップ決勝だった。立ち上がりから福岡のロングボール攻撃に後手を踏み、開始5分で痛恨の失点を喫してしまう。

 これにはマチェイ監督も「試合の立ち上がりが酷いものになってしまった。決勝の立ち上がり5分で失点してしまうのは、試合前のメンタルの準備で何かを間違ったということだろう」と認めざるを得なかった。

 最後尾からチームを見ていた西川は、どう受け止めているのか。

「大舞台によるプレッシャーが出てしまったのか、正確な要因は分かりませんが、先発した選手たちそれぞれが自身の最大限の力を発揮できなかったのは確かだと思います。GKチームがジョアン(ミレッGKコーチ)からよく言われるのは、『次の試合が自分にとって最後だと思いなさい』ということ。『ケガをしたり、病気になったりして、もうサッカーができなくなるかもしれない。だから、最後だと思って楽しみなさい』って。

 ジョアン自身もケガによって、志半ばで引退を余儀なくされているんですよね。この教えはGKチームだけでなく、フィールドの選手たちにも言えること。むしろ、負傷のことを考えれば、彼らのほうがその可能性がある。こうした考えを、チームとしてしっかり共有していきたいと思います」

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 ルヴァンカップ決勝翌日のトレーニングでは、やはりチームの雰囲気が暗かったという。とりわけ若い世代の選手たちは、チームを勝利に導けなかったことだけでなく、自身の力を発揮し切れなかったことに、責任を感じている様子だった。

「なかなか受け入れられない気持ちは、よく分かります。例えば、敦樹なんかはプロ入りしてからいい経験ばかりだったと思うんです。1年目から起用され、天皇杯で優勝して、ACLでも優勝して、日本代表にも選ばれるようになって。そういう意味ではプロになって初めての挫折というか、悔しい経験だったのかもしれない。

 でも、経験したくはないんですけど、この経験が絶対に生きてくる。将来、あの経験があったからこそ、このタイトルが獲れたという瞬間が来る。こういう経験は逆にチャンスだから、次へのモチベーションにしてほしいですね」

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 振り返れば、西川自身もそうだった。レッズに加入した翌年の2015シーズンはJ1リーグ1stステージで優勝し、天皇杯でも決勝へと勝ち進んだが、Jリーグチャンピオンシップでも元日の天皇杯決勝でもG大阪に敗れ、涙をのんだ。

「あのガンバ戦の悔しさは心に刻まれています。その悔しさがあったから翌年もステージ優勝ができたし、ルヴァンカップで優勝できた。だから、若い選手たちは今回の敗戦を今後の糧にしていってほしい」

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 ルヴァンカップ決勝翌日もGKチームはいつもどおり、大原サッカー場のピッチでトレーニングをしていた。

 前日に先発した選手たちは室内でリカバーのメニューをこなしており、ピッチでは途中出場に終わった選手、出場機会のなかった選手たちが懸命にトレーニングに励んでいた。

 その姿に、西川はあらためて現チームの底力を感じた。

「試合に出ていないメンバーがモチベーション高く、必死にアピールを続けている。これは決勝の翌日に限らないんですけど、その頑張りはすごいなって。僕自身、サブに回ったときはメンタルをコントロールするのが難しかったから、彼らの気持ちや頑張りがよく分かる。今、チームは負傷を抱えている選手が少なくないので、ここからの戦いに彼らの力が必要だし、その頑張りが報われてほしいと思います。

 それにジョアンが『フィールドプレーヤーはどんどん疲れが溜まって、苦しくなってくる時期だけど、GKはそうじゃないぞ』『むしろ1年間積み重ねてきて、一番いい状態になっているはずだ』って。だから、シーズン最後はGKの活躍でチームをいい方向に導いていきたいと思っています」

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 そう語る西川周作の顔には、いつも以上に充実した笑みが浮かんでいた。

 今シーズン、西川はここまで14試合を無失点で抑えている。浦和に加入した14シーズンに打ち立てた、自身最多のシーズン無失点は16試合。その記録を更新したとき、西川も、チームもまたひとつ、ステップアップできるはずだ。


(取材・文/飯尾篤史)
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著者プロフィール

1950年に中日本重工サッカー部として創部。1964年に三菱重工業サッカー部、1990年に三菱自動車工業サッカー部と名称を変え、1991年にJリーグ正会員に。浦和レッドダイヤモンズの名前で、1993年に開幕したJリーグに参戦した。チーム名はダイヤモンドが持つ最高の輝き、固い結束力をイメージし、クラブカラーのレッドと組み合わせたもの。2001年5月にホームタウンが「さいたま市」となったが、それまでの「浦和市」の名称をそのまま使用している。エンブレムには県花のサクラソウ、県サッカー発祥の象徴である鳳翔閣、菱形があしらわれている。

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