ここまでの鹿島アントラーズ ~フロント編~
【ここまでの鹿島アントラーズ ~フロント編~】
ここまでの経緯
2015
リーグ5位、ナビスコ杯優勝、天皇杯3回戦敗退、ACLGL敗退
金崎夢生、ファン・ソッコ、鈴木優磨加入
本山雅志退団
今の鹿島の経緯を振り返るためには、まず8年前からスタートしたい。この年はセレーゾ3季目、積極起用した昌子源やカイオら若手の成長を軸に優勝を狙うシーズンだったが、ACLとの両立に苦しみ大きく出遅れ。2ndステージ3試合で1勝しかできなかったところで、16年ぶりのシーズン途中での監督交代を決断。後任には長らくコーチを務めた石井正忠が昇格したが、ここからチームはハイプレス&ショートカウンターを武器にV字回復。2ndステージ優勝からのリーグタイトル獲得はならなかったものの、ナビスコ杯優勝を成し遂げ3年ぶりのタイトル獲得となった。
鹿島が監督を代えるときには、「現有戦力では改善の兆しがない」「強化部と考え方にズレがある」「求心力が落ちている」の3つが全て当てはまるときに交代が実行されているが、この時もそうであったと思われる。いずれにせよ、チームはこの時石井さんに代えたことによって成功体験を得たことで、監督交代へのハードルが良くも悪くもグッと下がったように思える。石井さんも長らくコーチをしていたとはいえ、監督は初めて。それでもタイトルを獲得できたことに、チームは色んな意味で手ごたえを得たのだろう。
2016
リーグ優勝、ナビスコ杯GL敗退、天皇杯優勝、CWC準優勝
永木亮太、三竿健斗、鈴木優磨加入
カイオシーズン途中退団、柴崎岳、ファン・ソッコ退団
まず、一つ目のターニングポイントはここだったように思える。1stステージこそ昨季途中から継続してきたスタイルが機能して優勝にまでたどり着いたが、2ndステージはカイオが抜けたことや暑さ、疲労もあって急失速。撤退守備からのロングカウンターに移行せざるを得ず、明らかにチームとしては限界を迎えていた。
それでも、この年のレギュレーションが大きくチームに味方した。一発勝負方式のCSに向け、撤退守備ベースを徹底させるとそれが見事にハマった。覚醒した昌子を中心に守備が安定していたことや曽ヶ端、小笠原と経験豊富なベテランが健在だったことも大きく、怒涛の快進撃に繋げて2つのタイトルを獲得するに至った。
2017
監督:石井正忠→大岩剛
リーグ2位、ナビスコ杯ベスト8、天皇杯ベスト8、ACLベスト16
クォン・スンテ、レオ・シルバ、安部裕葵加入
昨季の優勝をベースに実力派助っ人を加え、さらなる戦力アップを実現して、連覇を目指したがケガ人が続出したこともあって、成績は上向かず。チームとしてもあまりスタイルの上積みがなく、ACLの敗退を理由にして石井監督は解任となった。
後任のコーチから昇格した大岩さんは三竿健斗を抜擢、2列目にレアンドロらを起用して中央突破を強化すると、チームはV字回復で首位を独走するまでに至った。だが、終盤戦になるにつれチームは徐々に運動量を落としていくと、ロングカウンター頼みになっていき、そこから急失速。王手が3節に渡ってかかっていたが、決めきれず最終節に逆転を許し、無冠に終わってしまい、川崎Fに初の栄冠を許してしまった。
2018
リーグ3位、ナビスコ杯ベスト4、天皇杯ベスト4、ACL優勝、CWC4位
内田篤人、安西幸輝、犬飼智也加入、セルジーニョ、チョン・スンヒョンシーズン途中加入
植田直通、金崎夢生シーズン途中退団、小笠原満男引退、昌子源、西大伍退団
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2019
リーグ3位、ナビスコ杯ベスト4、天皇杯準優勝、ACLベスト8
伊藤翔、ブエノ、白崎凌兵加入、上田綺世、小泉慶シーズン途中加入
鈴木優磨、安部裕葵、安西幸輝シーズン途中退団、セルジーニョ、チョン・スンヒョン、レアンドロ、中村充孝退団
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2020
リーグ5位、ナビスコ杯GL敗退、ACLPO敗退
ファン・アラーノ、エヴェラウド、和泉竜司、永戸勝也、広瀬陸斗、荒木遼太郎、松村優太加入
内田篤人シーズン途中引退、伊藤翔、山本脩斗退団
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2021
リーグ4位、ナビスコ杯ベスト8、天皇杯ベスト8
アルトゥール・カイキ、ディエゴ・ピトゥカ、早川友基、常本佳吾加入、安西幸輝シーズン途中加入
小泉慶、白崎凌兵シーズン途中退団、レオ・シルバ、永木亮太、永戸勝也、遠藤康、町田浩樹、犬飼智也退団
2022
リーグ4位、ナビスコ杯PO敗退、天皇杯ベスト4
樋口雄太、名古新太郎、仲間隼斗、鈴木優磨加入
ファン・アラーノ、上田綺世シーズン途中退団、三竿健斗、エヴェラウド、和泉竜司退団
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2023
昌子源、知念慶、藤井智也、佐野海舟、垣田裕暉、植田直通加入、須貝英大シーズン途中加入
常本佳吾シーズン途中退団
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戦力面について
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鹿島は元来高卒の選手を育てて主軸にして、足りない部分をピンポイントで補強していくやり方を採っていた。だが、海外移籍が増加すると育成が間に合わず、最近は補強の割合が大きくなっており、またそこに海外からの復帰組を主軸として戦力が構成されている状況だ。補強は元々の戦略もあるが、J1上位クラブの控えクラスかJ1中位~J2の主力クラスの選手がターゲットに置かれている。
今季の編成で優秀なのはセンターラインが強いことだろう。センターバックに植田直通、ボランチにディエゴ・ピトゥカ、前線に鈴木優磨とリーグトップクラスの選手が軸としていることで、大崩れしなくなっている。特に守備面では植田の存在が大きく、彼の対人や空中戦の強さは失点の減少にかなり貢献している。
一方で攻撃面では鈴木以外の得点源もしくは突破口を見つけられていない。13ゴールの鈴木に次いで奪っているのは知念慶の5ゴールであり、この数字はいささか寂しいものがある。もっとも、チーム内でJ1でかつて2桁ゴールを記録した経験があるのが鈴木以外におらず、このあたりは殻を破っている選手がいないということにもなる。突破口となれる存在として期待がかかった藤井智也、松村優太、荒木遼太郎も満足したプレータイムを得られず、数字も残せていない。このあたりはまだまだ上積みの余地があるはずだ。
スタイルについて
理由としては、これまでの監督人事に一貫性が見られないことだ。ザーゴ、相馬直樹、レネ・ヴァイラー、岩政大樹、ここ3年で監督になった人間に対するオーダーは全て違うものだし、やっていることも結構違っている。これだと、やっている監督の好きなようにやらせて、ダメになりそうだったら切る。そして、また一からやり直す。この進歩がないループにハマっているように思えてしまうのだ。(だからこそ、岩政さんがどんなサッカーでも必要なボール保持の根幹に手を付けてくれたのは、地味にいい仕事だと思う)
戦力の入れ替わりが激しい昨今ではある程度スタイルの確立が不可欠、ということが大岩体制までで得た気づきだったはずだ。だが、鹿島はその気づきを現状あまり実にできていない。スタイルを決めて確立していくでもなく、スタイルがないならないなりの戦い方を模索していくでもない中途半端な状態が続いてしまっている。その間に他のチームは待っていてはくれないのに。ここに明確な答えをクラブとして出さないと、よっぽど強力なスカッドを手にするか、超名将レベルの監督が来ない限り(岩政さんがそうなる可能性もあるけど)、迷走は続きかねない。
岩政監督へのオーダーについて
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そもそも、岩政監督は指導者の経験が浅い。アマチュアでは経験しているものの、監督としては大学でわずか1年のみで実績を出す前に辞めて、鹿島に来ているし、そこからさらに半年で監督にまでなっている。経験を満足に積めているとは言えない状況だ。
その状況でいくら目指す部分の方向性が近いとはいえ、結果も出しながら新たなスタイルを築き上げていくのは、難易度としては高いし失敗する可能性は十分に予期できてしまうものだった。しかも、岩政さんはその下地作りから自らがやらなくてはいけない。時間かかりそう、失敗しそうというフラグは正直立っていた。
しかし、クラブとしてそのフラグを避けるための努力は十分とは言い難い。長期的な視野で結果を求めるでもなく、今季の開幕前から「タイトル奪回」を唯一無二の目標に掲げていて早急に結果を出すことを求めていたし、補強こそして大所帯にはなっていたものの、他の追随を許さないような選手層だったわけでもない。事実、今季の助っ人陣でまともに稼働したと言えるのはディエゴ・ピトゥカだけ。個で圧倒的な違いを見せられる存在はあまりにも少なかった。
監督をサポートするようなコーチ・スタッフの新規招聘もなかった。ただ、求めているような経験豊富なコーチを呼ぶということは、その彼の忠誠心に懸ける部分があり、もし上手くいかなければ謀反を起こして、そのコーチが監督に昇格した方が手っ取り早く問題を解決できる可能性があるし、そう動かれる可能性もある。そう考えれば、人はかなり選ばなければならない難しいチョイスを迫られるし、他のサポートスタッフを招聘するにしても選手補強と比べてどれほどの即効性のある効果があるのか不透明、という部分が二の足を踏んだところはあるかもしれない。
こうしたことを踏まえれば、現状の状態はある種必然と言えるかもしれない。むしろ、岩政さん個人だけを見れば着実に成長しているし、初めてにしては決して悪くはないここまでになっている。だが、鹿島というクラブにとっては目標からは完成度も結果も物足りないものになってしまっている。生まれるべくして生まれたギャップがなぜ当然のように起こってしまったのか、そこについては突き詰めて考える必要がある。
まとめ
鹿島にとっては、今が今後も今までと同じ立ち位置でいられるかどうかの瀬戸際に立っていると言えるだろう。今は、資金力でそこまで大きな差をつけられていないが、もし今後もタイトル獲得競争の中で勝ち抜けないようだと、元々の地域規模からして資金力で他クラブと明確な差が生まれてしまうことは予想できる。そうなれば、プレミアリーグの優勝争いが毎年BIG6を中心に行われているように、持てる者と持たざる者には必然的に大きな違いができてしまう。ミラクルレスターのような奇跡を狙いにいく立場にしかなれなくなってしまうかもしれないのだ。
だからこそ、鹿島は今勝たなければならないのである。ここ数年勝てていないツケも溜まってしまっているし、それを払うのにも現状ひいひい言っているような状況だが、それでも盤面をひっくり返して勝ちにもっていかなくては、先の未来さえ見えなくなってしまう。勝つことが最大のファンサービスだった鹿島で、勝つことを失ってしまうのはクラブの根幹さえ揺るがしかねない状態に陥りかねないのだ。
個人的に、ここ数年の低迷は今に始まった話ではないため、FDの吉岡さんだけの責任ではないと思っている。吉岡さんが責任者になる前からタイトルを獲れない時期は始まっていたし、吉岡さんは唐突に外部からやってきたわけではない。鹿島のクラブ内で10年にも渡る英才教育を受け、満を持して今の立場にいるわけである。それで上手くいってないということは、吉岡さんを育てた鹿島の強化部の組織そのものに問題があるからこそ、今の現象が起こってしまっていると言える。
もう小手先の策でなんとかなる状態ではなくなってきたし、妥協の結果の選択でどうにかなるわけでもなくなってきた。さらに、これ以上の躓きは今後致命傷になりかねない。クラブとして、残されたチャンスの時間と機会はそう多くはない。
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