<コマツオープン2023・最終ラウンド> 還暦・久保勝美が逆転でシニアツアー2勝目を飾る

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コマツオープン2023 最終ラウンド


 小松カントリークラブ(6,958ヤード/パー72)で行われた「コマツオープン2023」の最終ラウンド。風が最大5メートル吹き、刻々と風向きも難しくなる中で、2位から出た久保勝美(60)が4つスコアを伸ばして3打差を逆転し、コマツオープンで優勝を飾った。久保は2015年金秀シニア以来の、シニア2勝目を挙げた。首位5打差5位でスタートした宮本勝昌(51)が67、飯島宏明(52)が66をマークし猛チャージしたが、久保に1打及ばず2位に終わった。前年覇者の深堀圭一郎(54)は9位に終わった。




 室田淳(68)が68ストローク、高橋勝成(73)が71ストロークで回り、髙橋は第2ラウンドに続き本大会2度目のエージシュートを達成した。

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 最終ラウンドは、トップから7打差までの選手に一打のせめぎあいが続いた。



13アンダー首位スタートの崎山武志が、前半スコアを伸ばせずにパーで足踏みが続いている一方、宮本勝昌が5打差を追って前半で4つバーディーをとり1打差に迫ってきた。久保勝美は3打差を追って前半で2つ伸ばして、久保は宮本と並んで、首位の崎山に1打差2位に追っていた。

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 最終組が後半名物ホールの13番に入る頃、首位の崎山が変わらずパー行進を続けている間に、リーダーズボードの上位が入れ替わる。飯島宏明がバーディーを量産し始め、スタート時7打あった崎山との差を、一気に2打差まで詰め寄ってきた。さらに3アンダー31位の柳沢伸祐が7つのバーディー奪取し猛チャージ。柳沢が10アンダーまで伸ばし上位争いに加わった。



 注目の最終組は、梶川武志、I・J・ジャンがスコアを伸ばせず優勝争いからは後退。最終1組前の宮本勝昌だけが、後半14番までに2つのバーディーで確実にスコアを伸ばし、この時点で14アンダー逆転首位に立った。この14番ホールで、首位を守っていた崎山に悲劇が起こる。ティーショットをOBに入れると、打ち直したセカンドショットもOBへ。崎山はなんと7オン2パット、このホールだけで4オーバーにしてしまい首位陥落へ。同組の久保は13番のティーショットをOBにしてダブルボギーだったこともあり、14番は安全にバーディーを獲りにいくと、15番ではグリーン手前から30ヤードのパッティングが入ってくれた。本人も驚く連続バーディーでダブルボギーが帳消しになり、13アンダーで宮本と首位に並んだ。

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優勝争いのドラマはまだ続く。宮本が15、16番と連続ボギーを叩くが、17番パー4ではガードバンカーからチップインで取り返し13アンダーに。久保は16、17番とパーで我慢を続け、18番パー5に勝負を持ち込むことにした。


 18番宮本のティーショットはフェアウェイを捉えられずにラフへ。つま先上がりのライで5番ウッドを選んだが右にプッシュしてもらい左のラフ。3オン2パットでパーセーブ。13アンダーで後続の最終組を待った。


 

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18番久保のセカンドはグリーン手前40ヤードの距離に。58度のウェッジから52度に持ち替え、足を使ってアプローチ。ピン1.5メートルに着けたウィニングパットを残すのみになった。「キャディさんとカップ右縁と読んで、なんだかジャストタッチというか、なんか二度打ちみたいになっちゃってね。久々の優勝パットにしびれました」。本人もびっくり、まさかの逆転優勝。グリーン脇には、シニアツアーの仲間がペットボトルを片手に笑顔で待ち構えていた。

 そして久保は笑いあり涙ありのウォーターシャワーを味わった。「優勝って本当にいいものです。これは先輩たちが築いてくれた大事なツアーなんだって改めて感じました」。先輩、後輩と良きライバルである大勢の仲間から祝福されて、両手を上げて喜びを爆発させたのだった。

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 久保は2015年金秀シニアで優勝して以来、2勝目のチャンスは数えきれないほどあったが2位に終わっている。「ずるずるとこのまま賞金ランキングシード圏内狙いで行くのかなとか、ずっと考えていました。一年ごとに若手がシニア入りするし、飛距離やパッティングの精度は落ちるし。60歳は必死ですよ。一年でも長く試合出たいから、一円でも稼いでランキングに上乗せしたいってね。だから今回最終ラウンドではベスト10以内狙いだったから、まさか優勝だなんて。優勝にはもう縁がないって思ってました」と、本音ものぞく。

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 本人曰く「アプローチに難があるんですよ。花道のフェアウェイは苦手なので、18番もセミラフからのアプローチだったから良かった」と明かした。苦手なアプローチの回数を少なくしたいので「安全運転のゴルフ」、それは「ティーショットをフェアウェイに置くこと。セカンドはグリーンのセンター狙い」というマネジメントに徹していたのだ。

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 さらに、一年前にコマツオープンで気づかされた「ラインが読めていないパッティング」に対しては、時間をかけて乱視の矯正を始め、ボールにしっかりラインを描き、グリーン上では必ずピンを中心に一周することにした。それがこの一年で、しかもきっかけとなったコマツオープンで成果が現れた。「パターはよく練習していたからね。プレー後はパッティングの練習しかしないですし、気分転換にありえないラインとかを想定してよく遊んでパターになじむようにしていましたから。それがキーポイントで作戦でもありました」。久保がこつこつと続けていたパッティングの練習は、「安全運転のゴルフ」とうまくリンクして、良い流れを生むことに成功したようだ。

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 今年の5月には60歳以上のプロゴルファーで競う「関東プロゴルフグランドシニア選手権大会」に出場し久保は9アンダー、ノーボギープレーで嬉しい優勝を飾っている。「僕が目指すのはノーボギープレー。今日は6バーディー・1ダブルボギーだから、ある意味ノーボギーなんだけどね(笑)」と自分にゆるい合格点を上げたようだ。「関東グランドでは崎山と一緒に回って、僕が勝ったからね。崎山は今回こそってリベンジに燃えていたんだと思うけど、僕が勝ちました。同じだけ年を重ねているだけに、崎山とか、清水、秋葉、田村っていう仲間の頑張りも刺激なんですよ。いつまでも仲間と競い合いたい」。60歳のプロ仲間が、久保の優勝を目の当たりにして、自分のことのように喜び、こっそりと嬉し涙を流していた。

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 小松カントリークラブは、久保が所属する埼玉の高根カントリー俱楽部の丘陵コースに似ていることも、相性の良いコースの理由。「高根も小松も大好きなコース。高根では22歳からお世話になってからもう40年近くが経ちました。60歳を迎え定年のタイミングでもあるのですが、まだコースで雇用していただいてありがたいです。高根の会員皆様の応援が、励みになりました」と久保は所属するコースとの縁にも深く感謝する。


 「コマツオープンに初出場した2014年に、優勝副賞のコマツ建機の写真を撮って、所属コースに送ったんですよ。それ以来『獲ってきてね』と言われてて。今年はコースに大きなお土産が出来ました」。60歳という節目に、久保はこれでひとつ高根カントリー俱楽部に恩が返せるのかもしれない。今年も白熱した小松の夏が無事に幕を閉じた。


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PGAはゴルフの正しい普及と発展を願い、誰にでも愛される「国民のスポーツ」「生涯スポーツ」となるため、日本ゴルフ界のリーダーとして活動しています。PGAの使命は、トーナメントプレーヤーの育成、ゴルフ大会の開催・運営に加え、ゴルフの正しい普及と発展を具現化するために、ティーチングプロ資格を付与したゴルフ指導者を育成しています。さらにPGAでは幅広い分野で積極的な取り組みを行い、地域に密着した社会貢献活動、ジュニアゴルファーの育成など多方面にわたる取り組みを日々歩み続けています。

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