7月29日(土)東大阪市花園ラグビー場にて「リポビタンDチャレンジカップパシフィックネーションズシリーズ」第2戦トンガ代表戦が行われた。日本代表はセットプレーから流れるような連携でトライを決めるなど、これまでの2試合では見られなかったシーンも。終盤には追いかけるトンガ代表にインターセプトから一気に自陣に迫られる場面もあったが、必死のディフェンスで凌ぎ、21−16で勝ち切った。ワールドカップイヤーという特別な年の、初勝利。FB山中 亮平やPR具 智元が「素直に嬉しいです」と声を弾ませた一方、ALL BLACKS XV（オールブラックスフィフティーン）第2戦から3試合連続で先発を任されたSO李 承信は3本のキックを外し、「こんな苦しい試合にしてしまって、責任を感じています」と悔しそうにつぶやいた。（取材日:2023年7月２９日）

　21,138人が詰めかけた満員の東大阪市花園ラグビー場。会場には、コベルコ神戸スティーラーズの選手の姿も。試合は李のキックオフで開始された。しかし、キックは10mラインに届かず、トンガ代表ボールのセンタースクラムに。序盤は強力FWを誇るトンガ代表に攻め込まれるも、強化してきたダブルタックルで前進を止める。
18分、日本代表はトンガ陣10mライン付近中央でペナルティを獲得すると、ショットを選択する。これまでの2試合で11本のキックを決め、成功率は100パーセント。李の右足に期待が高まる。しかし、キックはわずかに外れ失敗。
「前日練習からキックのところがうまくいってなくて、それを当日までに修正することができませんでした」
試合後、そう話していた李。
PGで先制とはならなかったが、その直後、WTBセミシ・マシレワ（花園L）が敵陣深くへと蹴り込んだキックを、李が猛スピードでチェイスすると、相手がたまらずミスを犯す。日本代表は22mライン付近のスクラムからサインプレーでボールをつなぎ、WTBジョネ・ナイカブラ（BL東京）が左隅にトライ。難しい角度のコンバージョンキックは失敗に終わるも、日本代表は先制。23分、トンガ代表がトライを返し、同点になるも、PG１本とトライで10−３とし前半を折り返した。
後半は日本代表が立て続けに反則を犯し、トンガ代表にPGで得点を刻まれ、10−9と1点差に迫られる。そして7分、李はピッチを後にする。
「自分のパフォーマンスが良くなかったので交代することになりました…」
その後、投入されたリザーブの選手が流れを変え、日本代表は攻撃をテンポアップすると、13分、トンガ陣22mライン付近ラインアウトからトライをマーク。27分には李と交代したSO松田 力也（埼玉WK）がPGを決め、21−16とする。後半38分、インターセプトからピンチを招くも、途中出場の松島幸太朗（東京SG）がタックルで前進を止め、21−16で日本代表が勝利した。
試合後の囲み取材で李は、
「キックという自分の役割のところで、足を引っ張ってしまって…。みんながハードワークしてくれたお陰で勝つことができてよかったです」と述べた。
キックに関しては、その重要性を理解しているからこそ、人一倍練習を積んできた。
そして、結果も残してきた。
しかし、この日は4本中１本しか決めることができず、
「緊張やプレッシャーを感じたからではありません。足の運び方や重心の置き方など、試合中に修正していかないといけなかったのですが、それができなくて。キックできっちりスコアできていたら、こんな苦しい展開になっていなかったと思います。本当に責任を感じています」と俯く。
もちろん、いいところもあった。相手のミスを誘うキックチェイスに、ALL BLACKS XV戦から修正し改善したというタックルでも相手をしっかり止めることができた。だが、皆が作ってくれたスコアするチャンスをいかすことができなかったことを悔やみ、接戦になってしまったのは「自分の責任です」と繰り返した。
昨年夏に代表入りして以来、課題を見つけては克服してきた。
8月15日のW杯メンバー発表まで、国内テストマッチは残り1試合となった。
「今日の勝利はジャパンにとって大きいです。これからさらにジャパンのスタンダードを上げていきたいですし、個人として、まずはキックを修正しないといけません。チームを勝利へ導く10番になっていきます！」
そう決意を新たにした李。
下を向いている暇はない。
この経験を必ずや自らの進化につなげる。

取材・文／山本 暁子（チームライター）

「リポビタンDチャレンジカップ2023　パシフィックネーションズシリーズ」※キャップ対象試合
●8月5日(土)19時15分
日本代表vsフィジー代表（東京・秩父宮ラグビー場）

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