【女子ラグビー】日体大、セブンズで大学連覇

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日体大、やっとナンバーワン! 炎天下、自信と信頼の大学連覇

 ◆胴上げの古賀監督「うれしかった」

 アツい、アツい、アツい大学日本一である。女子7人制ラグビーの大学交流大会「Women’s College Sevens 2023」が23日開かれ、日体大が決勝で東京山九フェニックスを19-12で破り、2連覇を果たした。暑さにめげず、全員で明るく元気でひたむきなラグビーで頂点に立った。
 日中の最高気温は34度。猛烈な暑さの埼玉県熊谷市の立正大グラウンド。周りの木々のセミしぐれの大合唱の中、日体大の古賀千尋監督が5度、宙に舞う。
 「(胴上げは)こわかったけど、うれしかった」と古賀監督は言い、笑顔でこう続けた。
 「やっとでナンバーワンになれました。太陽生命で自分たちはやれるという自信は持っていましたけれど、ただ優勝には至らなかったので…。それを手にできてよかったんじゃないかなと思います」
 そうなのだ。社会人クラブを含めて戦う国内最高峰の「太陽生命ウィメンズシリーズ」(全4戦)で、日体大は準優勝、準優勝、準優勝、3位の総合2位と大健闘した。でも、優勝には一度も届かなかった。

 ◆涙の新野主将「一番いい形で終われたのでよかった」

 古賀監督の視線の先には、グラウンドで選手たちが記念撮影に興じていた。試合を陰でサポートしてくれた部員たちも一緒になって歓喜の輪をつくる。不思議な一体感、笑顔がはじける。
 いつもの決めポーズ。みんな笑って人差し指を立てる。ハイ、声を合わせて。
 「ユニコーンズ、ナンバーワンッ!」
 もう疲労困憊。からだを張った新野由里菜主将はふらふらだった。7人制ラグビーシーズンを締めくくる大会。「最後」と漏らすと、目から涙があふれ出した。涙声でつづける。
 「全員で頑張ってとれた優勝だと思います。うれしいです。本当に自分たちが学生のナンバーワンであることを見せることができました。一番いい形で(セブンズシーズンを)終われたのでよかったと思います」
 その涙のワケは? ホッとしたの?と聞けば、新野主将は泣きながらうなずいた。

 ◆相次ぐ逆転勝利で決勝戦へ
 
 太陽生命シリーズで結果を残しながらも、日体大の布陣は盤石ではなかった。日本代表の松田凛日、堤ほの花、高橋夏未ら10人が合宿や遠征などで抜けていた。海外から帰国したばかりで時差ボケの残る向來桜子、大内田夏月、畑田桜子を今大会に起用せざるを得なかった。
 23日の決勝トーナメント。初戦の準々決勝の流経大「RKUグレース」戦も、続く準決勝の日経大戦も相手チームに先制された。いずれも前半は7-12で折り返した。でも、日体大は慌てない。焦らない。ここに、チームの自信と成長の跡がみえる。
 そういえば、準決勝のハーフタイム。円陣で、負けじ魂の固まりの向來が叫んだ。
 「太陽生命2位なんて関係ないよ!」
 向來は、チームの奮起を促したのだった。試合後、その言葉の真意を聞けば、向來はこう、説明してくれた。「太陽生命で総合2位になったからって、どこにでも簡単に勝てるわけじゃないよって言いたかったんです。まだ1位にはなったことないんだから、必死になってやらないと、試合には勝てないよって」と。
 日体大は結局、後半、猛反撃し、RKUグレースに19-12で、日経大には28-12で逆転勝ちした。いずれも、後半は無失点、日体大ならではの集中力と「堅守」が光った。これは厳しい練習のたまものだろう。

 ◆酷暑の決勝戦。チーム一丸の粘り勝ち。

 決勝のフェニックス戦は、最も陽射しが厳しい午後2時過ぎにキックオフだった。大内田は体調不良で欠場した。でも、チーム一丸。
 前半の中盤。攻められての自陣から、黒色ヘッドキャップの新野主将がスペースを突き、一気に70メートルほど走り切った。先制トライ。その1分後、中盤で向來が暴れてビッグゲインし、つないで、樋口真央が中央に飛び込んだ。
 後半、相手に2トライを許すも、中盤、相手がこぼした低いボールを高橋沙羅が瞬時に拾ってゲインし、回して、新野のトライにつなげた。19-12で競り勝った。苦しんで、苦しんでの、粘り勝ちだった。

 ◆効果発揮した熱中症対策

 1日の試合数が多い7人制ラグビーの大会はタイムマネジメントが大切な要因となる。加えて、炎天下の大会ゆえ、選手のコンディショニングと暑熱環境における熱中症対策もポイントだろう。
 古賀監督に聞けば、日体大は大学のスポーツ推進の中核を担う『アスレチックデパートメント』の『日体大アスリートサポートシステム(NASS)』の支援を受け、水分、塩分などの補給で対策を練っていた。また、よく見れば、試合中、じょうろに氷水を入れて、ひんぱんに選手の手のひらや両手、両足などを冷やしていた。
 古賀監督が説明する。
 「深部体温をあげないためです。手の平には毛細血管があるので、そこを冷やすと意外と体温が早く下がるのです」
 古賀監督もトレーナーも選手のコンディション維持には最大限の気を配る。試合が終われば、体温を下げるため、テント下やクーラーが効いたロッカー室への移動を急がせた。
 いわば、そういった暑さ対策もあっての、総合力の優勝だったわけである。

 ◆たくましい成長「次は15人制で」
 
 チームの成長でいえば、15人制ラグビーの練習から継続してきたコリジョン(接点・衝突)強化が実ったようだ。コンタクトエリアでは、ボールキャリアに両サイドが走り込む。ブレイクダウンの改善が、日体大の走ってつなぐ『ランニングラグビー』にリズムをつけた。
 もちろん、ベースは個々のタックル、チームのディフェンス網の向上があればこそ。「勝因をひと言で?」と聞けば、古賀監督はしばし、考え込んだ。
 「堅守速攻…と言いたいけれど、速攻があまりなかったので、堅守の勝利ですか」
 ひと呼吸おいて、こう続けた。言葉に充実感がにじむ。
 「この優勝で弾みをつけて、15人制(シーズン)に向かいたい」
 まだ成長過程。つくづく学生スポーツとは人間である。見ているこちらの胸もつい熱くなる。われわれは、新芽のごとき、若者たちのたくましい成長を見ているのである。(松瀬学)

「やっとでナンバーワン!」と声を合わせる日体大の選手たち=23日・立正大G 【撮影:善場教喜】

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著者プロフィール

本学は、「體育富強之基」を建学の精神とし、創設以来、一貫して、スポーツを通じ、心身の健康”を育み、あわせて世界レベルの優秀な競技者・指導 者の育成を追求し続けてきたことに鑑み、「真に豊かで持続可能な社会 の実現には、心身ともに健康で、体育スポーツの普及・発展を積極的に推進する人材の育 成が不可欠である。」と解釈し、科学的研究に裏付けされた競技力の向上を図りつつ、スポ ーツを文化として幅広く捉え、体育・スポーツを総合的・学際的に探究する大学を目指し、 各学部、各研究科がそれぞれ目的を掲げ、教育研究を行なっている。

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