【OAK】ホーガン・ハリスが今アツい!?

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【【OAK】ホーガン・ハリスが今アツい!?】

【これはnoteに投稿された運河さんによる記事です。】
 大量の先発候補をかき集めてほぼ全員がケガか大炎上という悲惨な結果を残している我らがオークランド・アスレチックス。試合をスムーズに進行させ、終わらせることのできるリリーフという時点でありがたかった時期もありました。

 そんなアスレチックスで、希望の光となりつつある選手がいます。彼の名はホーガン・ハリス (https://www.baseball-reference.com/players/h/harriho03.shtml)。昨シーズン序盤までは今年メジャーに昇格するなどとは想像されていなかった選手です。僕も彼のことを知ったのはAAAに昇格したのを聞いたときでした。

 さて、そんなハリスはどんな選手なのか。まずは軽く経歴を見てみましょう。

来歴

入団前

 ハリスは南部ルイジアナ州第3の都市であるラファイエット市で生まれました。母親はソフトボールでアメリカ代表のキャッチャーとしてプレイした経験があります。

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 ハリスは地元の聖トマス・モア・カトリック高校に進学。高校時代は野球でも好投しながらアメフトでもクオーターバックで活躍しました。2015年にはルイジアナ州内ではその年の最高の高卒投手プロスペクトとしてドラフト候補に名前を挙げられたものの、大学に進学する意思が固かったため指名されませんでした。

 高校を卒業後、ハリスは地元のルイジアナ大学ラファイエット校に進学します。このラファイエット校は公立大学で、元阪神のジーン・バッキーさんが通っていた大学でもあります。世界的に知られた大学ではありませんが、ルイジアナ州内では屈指の名門校です。ちなみに大学のスポーツチームの名前はRagin' Cajuns怒れるケイジャンたち)です。気になる人はケイジャンの歴史についても調べてみてくださいね。

 余談ですが、ここに登場するルイジアナ大学と、この夏のドラフトで全体1位候補と言われるディラン・クリューズポール・スキーンズが所属するルイジアナ州立大学は同じルイジアナ州内に位置する公立大学ではありますが違う学校です。紛らわしいですね。

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 入学後は一貫してイニング数と同じくらいの奪三振をマークする一方で四死球や被安打数は安定せず、故障も少なくないというよく見る投手でした。しかし、ドラフトイヤーに脇腹の故障から復帰後に速球の球速が最速98マイルまで上昇し、変化球も優秀だったことで2018年のドラフト3巡目全体85位でアスレチックスから指名されるに至りました。ラファイエット校の選手が5巡目までに指名されたのは21世紀に入ってから初めてのことだそうです。

入団後~21年

 ドラフトされた後は肘のケガでデビューが遅れ、ドラフトから約1年後の2019年6月に初のマイナーリーグでの登板を飾ります。しかしデビュー戦では球速低下が著しく、その後も成績はまずまずだったものの8月下旬を最後に登板はなく、20年にトミージョン手術を受け翌年もレギュラーシーズンは全休しました。

 21年シーズン終了後にアリゾナ秋季リーグ(日本のフェニックスリーグに類似)に派遣され、復帰登板を果たします。速球の球速は手術前より少し速いくらいまで戻っており、変化球も少しスピードが落ちているものの悪くないという状況の一方、制球を乱す場面も多くあり、四球率26%とあまり成績は振るいませんでした。

なんと左下の5つは全て右打者への投球 【運河】

22年~初登板

 22年は4月下旬にA+でシーズンデビューし、徐々にイニングを伸ばしながら、四死球の多さこそ気になるものの支配的な投球を披露し6月にはAAに昇格。A+の時と似たような成績で8月にはAAAに昇格しました。速球の最速は96マイルまで上昇するなど、確実にプレイヤーとしてステップアップしています。

 この頃から、カーブチェンジアップという変化の大きく見切られやすい球種構成を改善すべく、80マイル台中盤~後半スライダーを実戦で試投し始めました。登板ごとに球速や変化量、回転数がかなり変動しており、かなり試行錯誤している様子がうかがえます。その中でも、徐々にスライダーの球速は80マイル台後半に収束していきました。

 防御率こそ6点台でしたが、確実に成長の跡を見せオフにはルールファイブドラフトでの指名からプロテクトするためメジャーの40人枠に入りました。スプリングトレーニングでは結果を残せずマイナーでシーズン開幕を迎えたものの、中継ぎ陣の崩壊で4月14日に昇格。しかしその日の試合で3点ビハインドの5回に登板すると、アウトを1つ取った後に驚愕の5者連続四死球走者一掃のツーベースで、0.1回を投げて自責点6という衝撃のデビューとなってしまいました。日本でもマスコミが取り上げたことで話題になっていたようですね。

再昇格後の投球内容

 ハリスが再びメジャーに昇格したのは5月27日のこと。開幕投手だったカイル・マラー (https://www.baseball-reference.com/players/m/mulleky01.shtml)との入れ替えでローテーションに入ることになりました。
 その後は、それまではガラガラだったオークランド・コロシアムに30000人を超えるとも言われる(注:公式発表では27759人でしたが、詰めかけた客のあまりの多さに球場側が途中で数えるのを諦めたという情報がありこのような書き方をしています。)人々が詰めかけ、移転に対し抗議し球団売却を求めて声を上げたリバース・ボイコットでも普段浴びることの少ない大歓声を力に変えて7回1失点の好投を見せ勝ち投手になるなど快進撃を見せました。

 では、何がハリスの好投の要因となったのでしょうか。

 再昇格後の左右別投球割合と変化量を以下に示しておきます。

【運河】

 速球は90マイル台前半から中盤で回転効率の高いシュートライズ系の力強いボール。手のひらで転がしてスピンを掛ける、いわゆるターンオーバー系のリリースから投じる80マイルほどで横変化の大きいチェンジアップ70マイル台中盤から後半のやや遅めのカーブは以前から使っていた球種です。

 注目すべきはカッター。先述のスライダーが行き着いた先がこの球であろうと思われます。現状ではカッターそれ自身の成績はあまり良くないですが、フォーシームと決め球であるカーブ中間の球として、またフォーシームとの差で打たせる球種として有効なのではないでしょうか。

 以下の図は打球速度打球角度を球種ごとに描画したものです。この図からわかる通り、カッターでゴロを打たせることにはある程度成功しているようです。

初学者だった2年前に書いたコードの再利用なので、気が向いたら改良しておきます。 【運河】

 空振りを量産できる決め球こそないものの、打たせて取る投球積極的にゾーンを攻める姿勢でハリスは再昇格後の5登板28イニングを消化。防御率2.57四球率3%と安定した投球を見せ、先発陣の中心として活躍しました。以下の図からも積極的にストライクゾーンで勝負できていることが伺えます。

【運河】

 一方で心配事もあります。まず、最近の2登板で少し四死球を出すシーンが目立っているように、あまり長くスーパーモデルの体脂肪率のような四球率を維持することはできないだろうということです。始めのほうで述べた通り、元々ハリスは制球のいい投手ではありません。制球を乱し、そこから崩れるという展開の試合が多くなるとしんどいですね。

 もう一つ、四球率の話と関連して、疲労による球速低下も懸念材料です。6月29日の登板では、昇格直後は93マイル後半だったフォーシームの平均球速が92マイルを割り、チェンジアップも平均80マイルに届かなくなりました。球種やその使い方のバリエーションが多くないハリスにとっては球威の低下は死活問題です。オールスターブレイクなどで休養して、また昇格直後のような輝かしい投球を披露してほしいものですね。

おわりに

 最近少し調子を落とし気味のハリスですが、それでも一昨年からはおおよそ想像できない大活躍です。今後も継続的に成功を収めてほしいというのはもちろん、今回の活躍で自身のポテンシャルは十分証明できたと思いますので、自信を持ってより高いレベルの投球を目指して頑張ってくれたらいいなと思います。また、ほかのケガに苦しんでいる選手がハリスに続けとばかりにブレークしてメジャーの舞台に登場するのも楽しみです。

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