【北海道誕生20年】稲葉篤紀が振り返る5試合②

チーム・協会

「間違いなく、大きく取り上げてもらえる」2009年 3打席連続本塁打

笑顔で本塁生還する稲葉 【ⒸH.N.F.】

 主将としてスタートしたシーズンは、確かな手応えがあった。稲葉篤紀は、開幕前に行われたWBCメンバーに選出。通常のシーズンよりも早く状態を上げていたため「いい具合に疲れも取れて、スッと開幕に入ることができた」。その成果が表れたのが、4月8日の千葉ロッテマリーンズ戦(東京ドーム)だった。「最初で最後です」と笑う、3打席連続アーチを放った。ドライブがかったライナー系の打球に、逆方向。「東京ドームだから、というホームラン。札幌ドームなら入っていなかった」と振り返る。3本目は、ブライアン・シコースキーから。現在はファイターズの駐米スカウトを務めている。「向こうにとっては嫌な縁かもしれないけど、僕にとってはすごい覚えています」と印象的な1発になった。
 記憶に残っているのは、他にも理由がある。「間違いなく大きく取り上げてもらえると思ったら、金本さん(阪神)も一緒に3打席連続で本塁打を打っていた。ヤクルト時代にはサイクルヒットを打っているんですが、その日は同級生の村松(ダイエー)もサイクルヒットを達成していた。僕が何かやると、必ず誰かいるっていう(笑い)サイクルヒット、3打席連発もなかなかないのに…不思議ですよね」
 高い確率性で安打を重ねるのが、本来のスタイル。他の長距離砲に比べて、長打力は目立ってはいなかった。そんな稲葉の快挙にチームメートは沸き上がり、稲葉自身も「驚いていました」。慣れ親しんだ東京ドームも、アドバンテージだった。ヤクルト時代からプレーしてきたグラウンドは、打っても、守っても、ファンの声援を最大限に感じられた。「すごく好きな球場の1つです」と当時を懐かしんだ。

「初めてプレッシャーを感じた」2009年 涙のお立ち台

ヒーローインタビューで涙を浮かべる稲葉 【ⒸH.N.F.】

 見えない敵との戦いに、感情が爆発したこともあった。好調な滑り出しとなったシーズンの勢いそのままに、打率は3割台をキープ。一方で、得点圏打率の低さが際立っていた。「大事なところで全然打てない」。代名詞となった「稲葉ジャンプ」の大応援も、次第にプレッシャーに感じるようになった。
 「稲葉ジャンプも定着してきている時でした。打てないとき、ファンの方たちの落胆の仕方。『あ~あ』という声が耳に入るようになってきて。チャンスで打席に立つことに怖さを感じるようになりました。あの時が、初めてプレッシャーに感じたときだったと思います」
 5月3日の西武ライオンズ戦(札幌ドーム)。延長12回裏にサヨナラアーチを描き、お立ち台では感極まった。「苦しんでいた中、最後にあのホームランになって。お立ち台に立った時に、みんなが笑顔でいてくれていた。僕を応援してくれていたことが、すごくグッとくるものがありました」
 3割バッターの大号泣に、チームメートも困惑していたという。「3割打っているのに、なんで泣いているの?と」。コンスタントに安打を重ねた分だけ、チャンスで打てないシーンが大きく目立っていた。好調な成績とは裏腹に、見えない敵に押しつぶされそうになっていた。自身も含め、誰しもそんな思いを抱えながら戦っていることを実感。同カードは全て延長戦の末、試合時間は4時間を超えた。「やっと終わった、と。そういう意味での涙でもあったかな」と、冗談ぽく笑みを浮かべながら回顧した。(続く)

稲葉ジャンプに沸くスタンド 【ⒸH.N.F.】

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