【北海道誕生20年】稲葉篤紀が振り返る5試合②
「間違いなく、大きく取り上げてもらえる」2009年 3打席連続本塁打
笑顔で本塁生還する稲葉 【ⒸH.N.F.】
記憶に残っているのは、他にも理由がある。「間違いなく大きく取り上げてもらえると思ったら、金本さん(阪神)も一緒に3打席連続で本塁打を打っていた。ヤクルト時代にはサイクルヒットを打っているんですが、その日は同級生の村松(ダイエー)もサイクルヒットを達成していた。僕が何かやると、必ず誰かいるっていう(笑い)サイクルヒット、3打席連発もなかなかないのに…不思議ですよね」
高い確率性で安打を重ねるのが、本来のスタイル。他の長距離砲に比べて、長打力は目立ってはいなかった。そんな稲葉の快挙にチームメートは沸き上がり、稲葉自身も「驚いていました」。慣れ親しんだ東京ドームも、アドバンテージだった。ヤクルト時代からプレーしてきたグラウンドは、打っても、守っても、ファンの声援を最大限に感じられた。「すごく好きな球場の1つです」と当時を懐かしんだ。
「初めてプレッシャーを感じた」2009年 涙のお立ち台
ヒーローインタビューで涙を浮かべる稲葉 【ⒸH.N.F.】
「稲葉ジャンプも定着してきている時でした。打てないとき、ファンの方たちの落胆の仕方。『あ~あ』という声が耳に入るようになってきて。チャンスで打席に立つことに怖さを感じるようになりました。あの時が、初めてプレッシャーに感じたときだったと思います」
5月3日の西武ライオンズ戦(札幌ドーム)。延長12回裏にサヨナラアーチを描き、お立ち台では感極まった。「苦しんでいた中、最後にあのホームランになって。お立ち台に立った時に、みんなが笑顔でいてくれていた。僕を応援してくれていたことが、すごくグッとくるものがありました」
3割バッターの大号泣に、チームメートも困惑していたという。「3割打っているのに、なんで泣いているの?と」。コンスタントに安打を重ねた分だけ、チャンスで打てないシーンが大きく目立っていた。好調な成績とは裏腹に、見えない敵に押しつぶされそうになっていた。自身も含め、誰しもそんな思いを抱えながら戦っていることを実感。同カードは全て延長戦の末、試合時間は4時間を超えた。「やっと終わった、と。そういう意味での涙でもあったかな」と、冗談ぽく笑みを浮かべながら回顧した。(続く)
稲葉ジャンプに沸くスタンド 【ⒸH.N.F.】
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ