【ラグビー】復活めざす日体大、悔しい敗戦にも光明

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復活めざす日体大ラグビー、悔しい敗戦にも光明

 悔しくて、悔しくて。関東大学対抗戦グループでAリーグ(1部)復帰をめざすBリーグ(2部)の名門・日体大が、Aリーグの青学大に1PG差で敗れた。試合後の円陣が解けると、ひたむきに走りタックルにいったナンバー8、伊藤拓哉主将は空を見上げ、大声を発した。
 「ウォー!」。悔恨と怒り、充足感が入り混じっていたのだろう。Bリーグに転落しても、鍛え、信じ、挑みかかる気概があるなら、格上のチームにも対抗できる。それが人と人との全人格の優劣を競うラグビーなのだった。

 ◆明暗分けたPKからの攻め

 28日の関東大学春季交流試合。晴れ間がひろがる横浜・日体大健志台キャンパスのラグビー場。スタンドには両校のOBほか、日体大の保護者たちの姿があった。沖縄や熊本から駆け付けた母親も。ほのぼのとした学生ラグビーならではの光景だった。
 強風が吹き荒れる。タッチフラッグはちぎれそうなほどばたばたはためき、グラウンド周りの木々の枝葉もゆさゆさ揺れた。19-22。日体大は互角以上に試合を進めながらも、同点のラスト3分、風上の青学大にPGを蹴り込まれた。日体大関係者からは嘆息がもれた。
 その5分前。日体大は勝ち越しのチャンスを迎えた。敵陣22メートルライン付近の真ん中でPKを得た。相手にシンビン(10分間の一時的退場)が出されたこともあるだろう、数的優位に立った日体大はPGを狙わず、タッチキックからトライを取りにいった。
 そのラインアウトをクリーンキャッチできず、勝機は遠のいた。スポーツに「たら・れば」は禁句ながら…。やはりスコアを考えながらのタイムマネジメントは大事だろう。伊藤主将は「勝ち切れなかったところは課題だと思います」と漏らした。
 「(教訓は)ゲームの進め方ですね。相手の方がゲームの流れを読んで試合をやっていたと思います。キックだったり、すぐに攻めていったり、そのあたりのメリハリをつけて、1点にこだわってやっていきたい」

 ◆ディフェンスに焦点「ターンオーバー9回」

 秋廣秀一監督、伊藤主将ほか、新体制となった日体大は今季、『Battle』をスローガンに掲げ、日々鍛錬してきた。この日の試合の焦点は、「ディフェンス」だった。とくにブレイクダウン。そこに集中する。バトルする。ゲインラインの前で相手を押し戻す場面が何度もあった。
 秋廣監督によれば、ターンオーバー(攻守交代)を「11回」やろうと目標にしていた。結果、9回のターンオーバーがあった。厳しいタックルと激しい集散、レッグドライブ。昨季の不振の理由だったディフェンスは改善されつつある。
 秋廣監督の言葉に充実感がこもる。
 「勝ち負けはともかく、今日のテーマはある程度、達成できました」
 ひと呼吸おいて、こう続ける。
 「勝つため、ゲームの流れをどうつかむか。次の大東大に向けて、しっかりやっていきたい」
 確かに両チームともメンバーが大幅に違う昨季とは単純比較できない。でも、昨年11月の公式戦は、日体大は12-52で青学大に大敗していた。トライ数が2本対8本。この日のトライ数はともに3本だった。
 3本とも、FWで奪った。1本はラックサイドの連続攻撃から、2本はいずれもラインアウトからのドライビングモールを押し込んだものだった。FWの結束、そして意地だった。SH小林峻也副将も効果的なキックを駆使し、周りの選手をうまく動かした。

 ◆課題はゲームの運び方

 スクラムをみると、間合いやヒットスピードでは日体大優位だった。だが、組み込んだあとの後ろ5人の圧しの持続という点では青学大に分があった。ゴール前チャンスのマイボールスクラムでフッキングのタイミングが合わず、相手ボールとなったのは痛かった。
 ラインアウトではロックの岸佑融やフランカー長船鉄心がナイスキャッチを見せていたが、全体として安定性には欠けていた。前半、ラインアウトのドライビングモールをインゴールまで持ち込んだが、パイルアップでボールを押さえることはできなかった。網野正大FWコーチは「風上の前半、やはり取るべきところではどんどん取っていかないといけません」と悔やんだ。
 バックスとしては、一番の課題はゲームの運び方だろう。オフロードパスをつないでいくのか、ラックを形成してオフサイドラインをつくって、攻めにリズムをつくるのか。ハンドリングミスは練習でスキルを磨いていくしかあるまい。湯浅直孝バックスコーチは「この2カ月で随分、よくなってきています」と手ごたえはつかんでいる。
 これで日体大は春季交流戦で通算1勝3敗となった。でも、チームの成長の跡はみてとれる。チームのターゲットが今季1年での『一部復帰』である。伊藤主将は言った。
 「こつこつ、毎日、一生懸命やるしかありません」
 そう、ひたむきに努力していかないと最後は勝てない。加えて、部員たちの思いをどう、結集していくのか。意思統一だろう。

◆子を思う親の愛情も後押し

 夕方、横浜・青葉台駅そばのレストランで日体大ラグビー部員の保護者たちの会合があった。伊藤主将の母や、岸選手の父など、ざっと40名が集まった。新型コロナ感染対策に細心の注意を払いながら。最後は、みんなで声を合わせた。
 「がんばれ、ニッタイ!」
 「上がるぞ、一部!」
 「エイ、エイ、オー!」
 これも学生スポーツならではの光景か。子を思う親たちの愛情がまた、日体大ラグビー部の背を押していく。(松瀬学)

日体大FWがラインアウトからのドライビングモールでトライ 【28日・日体大健志台ラグビー場=撮影:岸 健司】

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著者プロフィール

本学は、「體育富強之基」を建学の精神とし、創設以来、一貫して、スポーツを通じ、心身の健康”を育み、あわせて世界レベルの優秀な競技者・指導 者の育成を追求し続けてきたことに鑑み、「真に豊かで持続可能な社会 の実現には、心身ともに健康で、体育スポーツの普及・発展を積極的に推進する人材の育 成が不可欠である。」と解釈し、科学的研究に裏付けされた競技力の向上を図りつつ、スポ ーツを文化として幅広く捉え、体育・スポーツを総合的・学際的に探究する大学を目指し、 各学部、各研究科がそれぞれ目的を掲げ、教育研究を行なっている。

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