早大野球部 春季早慶戦直前特集『慎始敬終』 小宮山悟監督

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【早稲田スポーツ新聞会】

【早稲田スポーツ新聞会】取材・編集 田中駿祐、写真 湊紗希

明大に優勝を譲り、悲願達成とはならなかった早大。そんな今季について小宮山悟監督(平2教卒=千葉・芝浦工大柏)に収穫や課題について伺った。

「層の厚さが徐々にいいかたちになりつつある」

マウンドに行き投手に声を掛けた小宮山監督 【早稲田スポーツ新聞会】

――今季の収穫は

 急遽サードで起用した小澤(小澤周平、スポ2=群馬・高崎健康福祉大高崎)が、ある程度計算が立つ選手になったということと、キャプテンの森田(森田朝陽、社4=群馬・高岡商)の体調不良で穴が開いた、1番、センターのポジションに尾瀬(尾瀬雄大、スポ2=東京・帝京)を使って、おつりが来るくらいの活躍をしてくれているので、そういった点で言うと、層の厚さが徐々にいいかたちになりつつあるのかな、という気はします。ただ、他の大学、法政、明治に比べるとまだまだ選手層は薄いので、もう少し鍛えないといけないと思っています。

――他に三塁を守っていた選手がいた中で、小澤選手を起用した経緯は

 まず予定していた生沼(生沼弥真人、教4=東京・早実)がキャンプ前に脇腹の肉離れで離脱しました。順調に回復をして、浦添キャンプには間に合いましたが、やっぱりまだ怖さがあって、思い切ったプレーができないと。そんな中、去年の秋の早慶戦の活躍があったので、梅村(梅村大和、教3=東京・早実)を代役として起用していたところ、オープン戦の最後の最後でつまらないミスを繰り返しました。本来であれば島川(島川叶夢、スポ4=熊本・済々黌)がいるので島川を使ってもいいのですが、島川はどうしても代打の切り札として取っておきたかった。そこでセカンドを守っている小澤を急きょオープン戦の最後2試合守らせて、チームにフィットしたので、「思い切って開幕から行こう」ということで、小澤を起用した、ということです。

――今季見つかった課題は何ですか

 課題でいうと全て足りない部分なので全部。ただ、強いて挙げると、やっぱり打線が「ここ」というところで力のあるボールには対応できていなかった。法政、明治の投手陣を打ち崩さないことには勝てませんので、そこがやっぱり課題なのかなと。あとはピッチャーが無駄に点を取られすぎています。そこの部分は法政、明治の投手陣に比べると、やっぱり力が劣るので、その劣る中ででも勝たなければいけませんから。勝てるような投球をしっかりと身に付けてもらいたい。夏に徹底的に鍛えたいと思います。

――続いて細かいカードごとに伺います。まず、大勝した序盤の2カードについてはいかがですか

 勝ってはいますが、そこまでの大勝ではないですよね。力の差で言うと、そこまでの力の差は多分なかったので。ただ「隙を見せるな」ということでは、しっかりとした野球ができたので、及第点を上げたいなと思っています。

――続く法大戦では、4回戦までもつれた末、敗れてしまいました。法大戦についてはいかがですか

 これは、3戦目、12回0-0の試合、これを取らなければいけなかったと考えています。点が取れそうな雰囲気もありましたし、次戦以降のことを考えながらの起用になってしまったので。本当だったら勝負をかけて、代打を使って、というところでもあったんですが、引き分けた場合の4戦目のことも考えないといけないので、采配を振るにあたって躊躇(ちゅうちょ)したので、そこが選手に伝染しちゃったのかなと。そこは反省していますね。あと、4回戦に関しては、勝っている試合で、最後に齋藤正貴(商4=千葉・佐倉)が逆転ツーランを打たれましたが、その前の8回の裏に点が取れなかった、ホームでアウトになった、あのワンプレーと、9回の表の余計な1点。ユエン(賢、国教4=カナダ・セントジョセフ)が、急きょ田和(田和廉、教2=東京・早実)が故障で出ていった後、暴投でセカンドに進めて、タイムリーを打たれて、4点目を取られた、っていうこの1点の攻防。3点目が取れなかった早稲田と、4点目をやすやすと手に入れた法政。ここが強いチームと弱いチームの差なんだろうと思っています。

――最後の明大戦では、具体的にどういった部分に差を感じましたか

 もちろん、ディフェンス、投手力もそうですし、打力もそうですし。われわれが勝っているところは何一つなかった、そういうことです。

――今季からは六大学で応援席が復活しましたが、応援についてはいかがですか

 われわれはもちろん学生の時も応援席があって、(応援を)経験していますが、今は初めてなので、応援部の方も戸惑いがあったと思います。そういう点で言うと、「ようやく昔のリーグ戦が戻ってきた」ということで、みんなが喜んでいますが、まだまだ実際のリーグ戦の感じではないと思うので。来年、再来年につながるように、応援席と野球部が一生懸命やって、勝って喜びを分かち合えるような、そんな雰囲気の中での試合を数多くやりたいと思っています。

――続いて、投手陣についてうかがいます。まず、エースの加藤孝太郎選手(人4=茨城・下妻一)は、明大戦こそ打たれてしまったものの、それまでの試合の多くで、この試合を作っていたと思います。加藤選手についてはいかがですか

 「エース」と呼ばれるピッチャー、大黒柱は4回戦にもつれ込んで、ヘロヘロの状態で休みなしで投げに行っても、あんなにめった打ちを食らってはいけないんです。なので、今の早稲田の投手陣の中で一番秀でている投手ですが、「本当のエース」というふうに呼ぶには、まだか細いです。もっともっと、柱にならないといけないので。ましてや、彼は「プロに行きたい」って口にしましたので。プロに行きたいのであれば、それなりのピッチャーにならないといけないと思っています。

――2回戦では多くの試合で、先発が短いイニングを投げることが多くありました

 そういう起用法しか勝つ可能性がないからです。投手力が弱いから。

――守備について、早大はここまでのリーグで、唯一エラーがゼロですが、そちらについてはいかがですか

 記録上はエラーがゼロにはなっていますが、目に見えないミスが多発しています。もうちょっと改善の余地があるだろうと思っています。

――続いて打線についてうかがいます。ここまで上位打線を打っている尾瀬選手、中村将希選手(教4=佐賀・鳥栖)、熊田任洋選手(スポ4=愛知・東邦)の3人での得点が多いと思います。上位打線についてはいかがですか

 打てるであろう選手だから、そこに起用しているので、特別な驚きはありません。ただ、代役の尾瀬が最初のゲームから本当に活躍してくれたので、おかげで開幕2カード、連続で勝ち点を取れたと思っています。

――8番を打っている山縣秀選手(商3=東京・早実)も、上位につなぐ役割として、素晴らしい活躍をしていると思います。山縣選手についてはいかがですか

 守りが飛び抜けてうまいので、守備で使っている選手で、バットでそこまで貢献しなくても構わないつもりで試合に出しているので、あそこまで打ってくれるとうれしい誤算というか。何かコツをつかんでくれると、秋以降もしっかりとしたバッティングができるのかな、とちょっと期待を持つようになりました。

――ホームランが多く出ています

 金森さん(金森栄治助監督、昭54教卒=大阪・PL学園)が来て、バッティングのアプローチで言うと、「追い込まれるまでは、とにかく自分のスイングをしっかりしろ」「打てる球をとにかく好球必打で」。それを唱えてやっています。結果として、ボールを遠くへ飛ばす力のある選手がいるということを証明できたので、夏場にもっともっと鍛えて、秋以降、さらに。「打棒早稲田」の復活ののろしを上げられるように、しっかりと練習したいと思います。

――やはり、金森助監督の効果はかなりあるのでしょうか

 極論から言うと、金森さんが来たからどうこうでは困るので。彼らが、金森さんの言っていることをきちんと消化して、形として、ゲームの中で実践することができているかどうかでいうと、まだまだだと思います。本当に金森さんの言っていることを理解して体現できるのであれば、もうちょっと法政戦、明治戦で打てているはず。それが思うようになっていないということは、まだまだ消化しきれていないという証拠なので。これから夏場、「ここ」っていうところで打てなかったという悔しさがあるんだったら、改善の余地あり、ですから、さらに良くなるように練習したいと思います。

整列に並ぶ小宮山監督 【早稲田スポーツ新聞会】

――続いて早慶戦についてうかがいます。まず、ここまでの慶大の印象についてはいかがですか

 選手が相当入れ替わっている状況だったので、かなりもたもたするんだろうな、というふうに見立てていました。序盤は思うようにならなかったですが、中盤以降はしっかりとした野球ができるようになってきているので、「さすがだな」というふうに思って見ています。

――攻撃面では、カギとなる先発の外丸東眞選手(2年)の攻略について、いかがですか

 ある程度試合を投げてくれているので、リーグ戦でのデータが蓄積されていますから、それを分析して、選手へのフィードバックも終わっています。それを踏まえた上で、どう点を取るか、ということを考えながら、戦略を練っています。

――早慶戦に向けて、現在のチームの雰囲気はいかがですか

 (リーグ戦の)優勝がもう明治に決まって、優勝の懸からない試合になってしまったので、多少力が抜けた感じは否めません。練習の中でも「とにかく慶応に勝つんだ」と口に出してやっていますが、どこかでやっぱり、優勝を逃した悔しさみたいなのも含めて、「あの時、ああすればよかった」「こうすればよかった」みたいな後悔の思いをもって、グラウンドで練習しているようなところがあります。もう(早慶戦は)今週末にありますので、今日から新たな気持ちで練習が始まりましたが、明日、明後日でその辺をきちんと修正して、「打倒慶応」でチームが一つになるように持っていきたいと思います。

――最後に早慶戦に向けた意気込みをお願いします

 いつの時代も「慶応にだけは負けるな」、そういうことなので、早稲田として、とにかく最大のライバルである慶応義塾に力いっぱいぶつかって、期待をしてくれている、応援してくださっているファンの方々。早慶両校の関係者の皆さんに「さすが、早慶戦だ」と言ってもらえるような、そういう試合をしたいと思っています。

――ありがとうございました!

【早稲田スポーツ新聞会】

◆小宮山悟(こみやま・さとる)

1965(昭40)年9月15日生まれ。千葉・芝浦工大柏高出身。1990(平2)年学教育学部卒業。早大野球部第20代監督。
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著者プロフィール

「エンジの誇りよ、加速しろ。」 1897年の「早稲田大学体育部」発足から2022年で125年。スポーツを好み、運動を奨励した創設者・大隈重信が唱えた「人生125歳説」にちなみ、早稲田大学は次の125年を「早稲田スポーツ新世紀」として位置づけ、BEYOND125プロジェクトをスタートさせました。 ステークホルダーの喜び(バリュー)を最大化するため、学内外の一体感を醸成し、「早稲田スポーツ」の基盤を強化して、大学スポーツの新たなモデルを作っていきます。

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