【ラグビー/NTTリーグワン】まだ見ぬ頂点はもうすぐそこ。S東京ベイはその歴史と想いを背負い、最後の一段に足をかける<クボタスピアーズ船橋・東京ベイ>

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 立川選手 【©JRLO】

天理高校ラグビー部では全国高校大会ベスト8、天理大学時代は大学選手権準優勝。クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)を率いるキャプテン・立川理道は、実はまだ『頂点』からの景色を知らない。

「僕がS東京ベイに入団したとき、チームは(下部リーグの)トップイーストだったので、そこから頂点を目指せるかと言えば、まだ難しい状況にありました。でも、僕はこのチームで優勝するために、入団したと思っています」

チームとともに成長し、頂点を目指す。その原体験は大学時代にある。立川は2008年に天理大学に入学。同校ラグビー部は低迷期を脱し、徐々に強豪チームへの階段を昇り始めていた時期にあった。2010年には関西Aリーグを35年ぶりに制覇。立川がキャプテンに就任した2011年の大学ラストシーズンでは関西Aリーグ2連覇を達成。大学選手権では惜しくも大学日本一には届かなかったが1925年の創部以来、初めての決勝進出を果たした。

「僕が入る前年はまだ関西Aリーグで6位でした。大学4年間で関西Aリーグ優勝、そして全国大会出場という目標に向かって進むことができたのは、僕にとってはすごく大きな経験でした」

2012年、S東京ベイに入団。翌2013年、チームは3季ぶりにトップリーグに復帰した。2016年には現在のフラン・ルディケ ヘッドコーチ-立川理道キャプテンの体制がスタート。その成果はすぐには表れず、入替戦を経験するなどもがき苦しんだ時期もあった。『頂点』を現実的な目標として捉えられるようになったのは、2019年のトップリーグカップ戦。ここではプレーオフトーナメントに駒を進めた。

「この年にようやく、『プレーオフ』というものを経験できたんです。負ければ終わりの一発勝負のトーナメントを決勝まで戦えた。そこで初めて、『頂点』というものをリアルに感じられたというのはあると思います」

今季、S東京ベイでは選手一人ひとりにチームオリジナルの『ラグビーノート』が配られた。オレンジのハードカバーをめくると、巻頭カラーページには創部から2022年度までの全所属メンバーの名がシリアルナンバーとともに刻まれている。まさに、チームのヒストリーが込められた一冊。また、昨年2022年10月にはクボタの創業者である久保田権四郎翁の出生地、広島県尾道市因島をチームで訪問。S東京ベイのルーツに触れた。

「ノートもそうですが、どういった人たちがS東京ベイを作って、どんな歴史を歩んできたのか。日本人選手だけではなく、外国人選手たちにもそういったことを感じてもらうことができました」

優勝に王手をかけたのは、奇しくもそんなシーズンだった。創部以来、初のプレーオフトーナメント決勝進出。5月20日、S東京ベイはこれまでの歴史のすべてを背負い、決勝の舞台・国立競技場に向かう。

「近年、チームが力を付けてきて、『頂点』というものをリアルに考えられるようになり、それが手に届くところまできた。やはり、優勝したいという気持ちは強いです」

また、同期の井上大介が今季を最後に退団を発表。井上は、4歳でやまのべラグビー教室で出会って以来、約30年もの時間を共有してきた盟友。ともに現役選手として『優勝』の喜びを分かち合えるのも、これが最後のチャンスとなる。

「このタイミングで優勝を狙える機会を得られたことが、すごくうれしいです。最後、一緒に喜びたいと思います」

チームに関わったすべての人たちの想いとともに、いま、昇るべき階段の、最後の一段に足をかける。

(藤本かずまさ)
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著者プロフィール

ジャパンラグビー リーグワンは、「あなたの街から、世界最高をつくろう」をビジョンに掲げ、前身であるジャパンラグビー トップリーグを受け継ぐ形で、2022年1月に開幕した日本国内最高峰のラグビー大会です。ラグビーワールドカップ2023を控え、セカンドシーズンとなるリーグワン全23チームの熱戦をご期待ください。

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