【記録と数字で楽しむ第107回日本選手権】女子1500m:田中希実が4連覇なら歴代2位
【アフロスポーツ】
各種目の「2023年日本一」を決める試合であるとともに、8月にハンガリー・ブダペストで行われる「ブダペスト2023世界選手権」、7月のタイ・バンコクでの「アジア選手権」、9月末からの中国・杭州での「アジア競技大会」の日本代表選手選考競技会でもある。また、「U20日本選手権」も同じ4日間で開催される。
本来であれば全種目についてふれたいところだが、時間的な制約のため10種目をピックアップしての紹介になったことをご容赦いただきたい。また、エントリー締め切りは5月15日であるが、この原稿はそれ以前の10日までに執筆したため、記事中に名前の挙がった選手が最終的にエントリーしていないケースがあるかもしれないことをお断りしておく。
過去に紹介したことがあるデータや文章もかなり含まれるが、可能な限り最新のものに更新した。
スタンドでの現地観戦やテレビ観戦の「お供」にして頂ければ幸いである。
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【女子1500m】
・決勝/6月2日(金)
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田中希実が4連覇なら歴代2位
田中希実の日本選手権入賞歴は、下記の通り。
【JAAF】
特に21・22年は、4日間で800m・1500m・5000mにチャレンジするという超ハードスケジュールの中、すべて表彰台に登る快挙を成し遂げている。
1500mの他に今回も800m・5000mの3種目にチャレンジする方向でエントリーしてくる可能性が高いだろう。
2023年に田中が出場したレースは以下の通りだ(5月5日現在)。
【JAAF】
23年も国内での1500m初戦となった4月8日の金栗記念で後藤に2秒13差で敗れて4分20秒11を要した。田中が4分20秒を切れなかったのは、20年10月の日本選手権の予選レースを除けば、19年4月14日の同じ金栗記念での4分22秒25(2着)以来4年ぶりのことだった。
上述の通り、22年10月、23年4月と後藤に土をつけられはしたが、その他のレースでは後藤を含めて日本人には危なげなく勝っている。3分59秒台を準決勝と決勝で連発して入賞を果たした21年の東京五輪の時ほどの勢いがないのは確かだが、田中の「V4」の可能性は極めて高そうだ。
【アフロスポーツ】
この期間内での5月5日現在の田中のベストは、4月23日の兵庫リレーでの4分09秒79でまだまだその差は6秒以上もある。日本人選手のみが相手の国内レースでそれを狙おうとすれば、最初から飛び出して独走で最後まで持ちこたえなければならないのでさすがに厳しそうだ。タイムを狙うのは、海外でのレースとなろう。とはいえ、4分03秒50を田中が上回ったのは、東京五輪の予選(4.02.33)、準決勝(3.59.19)、決勝(3.59.95)の3回。自己4番目は五輪直前の7月のディスタンスチャレンジでの4分04秒08。22年のベスト4分05秒30は自己6番目のタイム。いずれにしても、4分03秒50は非常にレベルが高いことは確かである。
1国3名以内でカウントした5月2日現在の「WAランキング」で、前回優勝のワイルドカード1名と標準突破済みの17名を含め田中のポイントでの順位は22位。それ続き24位に後藤、31位に道下美槻(立大4年)、日本人4番目ではあるが34位相当に樫原沙紀(筑波大4年)の名前がある。1500mのターゲットナンバー(出場人数枠)は「56名」なので、「十分に圏内」と思われるかもしれない。が、23年のシーズンが本格化してくる5・6・7月には世界の各地で多くの選手が標準記録をクリアしたり、ランキングのポイントを一気に上げてくる。現段階で有効期間内に標準記録を突破しているのは17名だが、7月末までには1国3名以内の条件でも30名前後が突破してくる可能性もありそうだ。
「4分03秒50」をクリアできなかった選手は、有効期間内での上位5大会平均ポイントによる「WAランキング」での出場権獲得を目指す。そのポイントを少しでも上げるために、日本選手権では0秒01でも速く走って記録ポイントを1点でも多く稼ぎ、1つでもいい順位でフィニッシュして順位ポイントの「1位100点」「2位80点」「3位70点」「4位60点」「5位55点」「6位50点」「7位45点」「8位40点」を少しでも多く加算したいところだ。
4分10秒前後での記録ポイントで「10点」の差は1秒1~2程度。順位ポイントは、1位と2位で20点差、以下も1つ順位が下がるごとに4位までは10点ずつ少なくなる。ひとつの順位の違いによるポイント差はかなり大きい。日本選手権ではより高い順位ポイントを稼いでおきたいところだ。
なお、21年東京五輪、22年オレゴン世界選手権では「45名」だったターゲットナンバーが「56名」に増えたことは、「WAランキング」で出場権を狙う選手にとっては朗報だ。是非ともこれを生かして、日本人選手には「3人フルエントリー」を実現してもらいたい。
21年東京五輪、22年オレゴン世界選手権で、田中とともに代表となった卜部蘭(積水化学)は、22年11月頃からの座骨結節部の故障が長引いて出遅れている。2月11日のアジア室内で4位(4.21.54)となったが、アウトドアシーズンは、まだ1度もレースに出ていない。そのため、世界選手権出場の条件となる「WAランキング」の集計に必要な「22年7月31日以降の5大会平均」に満たない3大会の記録しか残っておらず、名前が消えてしまっている。よって、7月30日までに最低でも2大会に出場して、5大会平均の条件をクリアする必要がある。
・世界陸連HPのデータによる。
・400m・800mは、田中が先頭だったタイマーのタイム。
・カッコ付き数字は、各地点の通過順位。
<日本記録(3.59.19)の時の100m毎>
(東京五輪・準決勝1組/13人出場)
・田中希実
【JAAF】
(東京五輪・決勝/13人出場)
・田中希実
【JAAF】
決勝は、ほぼイーブンペースの展開でラストが準決勝ほどスピードアップしなかった。
【JAAF】
・記録は、5月5日判明分。
・記事中の「WAランキング」は5月2日時点のもの(毎週火曜日に発表されるので、できる限り最新のものを盛り込みたいところだが、原稿の締め切りの都合で5月2日時点のものとした)。
・記事は、5月5日時点での情報による。上述の通り、エントリー締め切り5月15日以前に書いた原稿のため、記事に登場する選手が最終的にエントリーしていないケースがあるかもしれない。また、競技の実施日は確定しているが具体的なタイムテーブルとエントリーリストは5月19日に公表される予定である。
・現役選手については敬称略をご容赦いただきたい。
なお、日本選手権の期間中、ここで取り上げることができなかった種目以外の情報(データ)も日本陸連のSNSで「記録や数字に関する情報」として、その都度発信する予定なので、どうぞご覧くださいませ。
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野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)
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