【一矢報いたチームに称賛を送る】明治安田生命J2リーグ 第10節 FC町田ゼルビア×大分トリニータ|マッチレビュー

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【【一矢報いたチームに称賛を送る】明治安田生命J2リーグ 第10節 FC町田ゼルビア×大分トリニータ|マッチレビュー】

【これはnoteに投稿されたわさだトリサポさんによる記事です。】
みなさんご無沙汰しております。わさだトリサポです。本業の業務が非常に立て込んでいたため、3試合ぶりのnoteマッチレビューとなってしまいました。お休みを頂いていた間も大分トリニータは好調な戦いを続けており、また、それぞれの試合内容も非常に素晴らしかったため、noteマッチレビューを休載した事を後悔した程です。今節の町田戦は休載に入る前から重要な一戦になる事を予想していました。実際、この試合は「首位攻防戦」という位置づけで行われましたが、願わくば大分トリニータの勝利マッチレビューを書きたかったところです。しかしながら、そう上手くいかないのがサッカーであり、また、上手くいかなかったからといってすぐに下を向く必要がないのが長丁場のJ2リーグです。この試合についてもこれまで同様、試合結果だけに一喜一憂するのではなく、試合で起こったファクトに目を向けながらしっかりと分析していきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。

■相手の守備陣形が整う前に攻め切りたい町田

首位攻防戦の相手は大分とは何かと因縁があるFC町田ゼルビア。今シーズンのストーブリーグで主役だった町田は実際のリーグ戦でも上位をキープしています。恐らくシーズンが始まる前の順位予想では、メンバーが大幅に入れ替わった事や首脳陣が刷新された事などもあり、そこまで上位予想は多くなかったと記憶しています。ただ、蓋を開けてみればやる事が整理されたリアクションサッカーによって、選手の素材を生かしたサッカーが成立しています。

現代サッカーは守備の戦術も非常に進化してきており、大分トリニータのように守備の際に5バックに可変し、5レーン理論でいうハーフスペース、サイドレーン、センターレーンのすべてを埋める守り方はもはや一般的です。そのため、現代サッカーにおいてブロックを構えた相手を崩すのは至難の業です。特にJ2は個で得点を奪う力のある選手が少ないため、チームで狙いを合わせて戦う事がとても大切になります。

上述した背景を踏まえて、今の町田が選択しているのは「相手の陣形が整う前に攻め切る」という戦い方です。これは守備ブロックを敷いた相手を崩す事が難しいという事を認めたうえで、そうであれば相手がブロックを敷く前に攻め切るという狙いがあると思います。このあたりは今シーズンから監督を務めている黒田剛氏の勝負へのこだわりが色濃く出ている部分ではないでしょうか。実際、町田の戦い方は言い方を変えればリアクションサッカーという風にとらえられますし、また、あれだけの選手を獲得してまで目指すサッカーなのかといった批判もあるかもしれませんが、対戦相手からすると能力値の高い選手がシンプルなサッカーで力を発揮される方が意外と手を焼きます。

大分は連戦中もメンバーは固定。 【わさだトリサポ】

■大分を研究していた町田の守備

町田は大分のボールの動かし方や最近の試合内容をかなり分析していたのではないかと思います。また、町田が採用している4-4-2で大分のビルドアップを封じる最適解を導き出す事が出来ていたと同時に、それをピッチで体現出来る選手が居たという点がこれまでの対戦相手との違いです。町田の具体的な大分対策を見ていく前に、まずは基本の守備のやり方を確認しましょう。

町田の基本的な守り方 【わさだトリサポ】

上記の通り、町田はFWの2人と両SHの2人の計4人で大分CBからの中央へのパスコースを消そうとしてきます。また、その動きに追随するようにダブルボランチも押し上げる事で中盤のスペースを狭めます。大分の両WBに対しては、町田の両SBが早いタイミングでチェックに行くため、藤本や茂は敵陣ゴールに対して後ろ向きでパスを受ける場面が増えました。こうなると当然サイドからの前進は難しくなります。ちなみに、この守備のやり方は第6節で戦った大宮アルディージャも採用していた形になります。

大分は大宮戦でも同じシチュエーションでビルドアップに苦労した経験がありますが、その後対戦した磐田やいわきとの試合でビルドアップのバリエーションを増やしています。具体的には、大宮戦では2シャドーがボールを受けに下がってくる位置が相手ボランチに捕まりやすい位置だったところを、その後の試合では左右のCBの隣(ペレイラやデルランの横くらい)で受けるように立ち位置を微調整しました。この微調整により、大分の野村や中川が前にプレスに出た相手SHの背中かつ相手のボランチが出ていくのが難しい位置でボールを受けられるようになっていました。

しかしながらこの試合、町田はさらに一枚上手でした。

どこまでも付いてくる町田のボランチ。それに加えて、SHの選手に2度追いされ挟み込まれる。 【わさだトリサポ】

例えば上の図のように、シャドーの野村がデルランと藤本のリンクマンになるために下がってボールを受けに来る場面。通常であれば、フリーでボールを受けられる可能性が高い状況ですが、町田のダブルボランチの一角がそこまでついてきていました(その際、もう片方のボランチはポジションを中央に移す)。また、一度大分のCBにプレスにいったはずのSHの選手が、そのまま2度追いで野村までプレスバックする事で、野村が自由にプレー出来る時間とスペースがなかなか出来ませんでした。

こうなると野村以外の選手が近くにサポートに行かざるを得なくなり、攻撃の枚数も徐々に削られていきました。大分はこの状況でもボールを前に送ろうと試みていましたが、前線には伊佐しか残っていない事も多く、セカンドボールの回収も後手に回りました。

■町田の対策を上回るには(考察)

正直町田のダブルボランチの守備範囲の広さと強度はJ2屈指といえるでしょう。次節以降、他のチームがこの試合の町田を真似しようとしたところで、町田の高江・稲葉と同じような動きを再現するのは非常に難しいと感じました。ただ、今後も対戦相手の大分対策が進んでくる事や将来的なJ1での戦いを見据えると乗り越えていかなければならない壁でもあるかと思います。

この試合のように、低い位置に下りた野村や中川を捕まえにくるような相手に対しては、それによってどこのスペースが空いてくるのかをチームで共有するべきかもしれません。また、フォーメーションはあくまで初期配置であるため、時には自分のポジションとは違うスペースに入っていかなければ相手にも読まれやすくなってしまいます。

個人的には町田のボランチを1枚つり出せた状況なのであれば、当然相手の中央は手薄になります。そのスペースにワイドの藤本や茂が入っていくことで、中央で数的優位が作れるのではないかと考えます。ただ、ワンタッチパスやミドルレンジのパスを用いてそこまで通せるかは選手個々のスキルにもよりますし、相手とのやり合いの部分でもあるため簡単ではないですが…。

時にはフォーメーションを崩して攻める事も必要。 【わさだトリサポ】

■一矢報いたチームに称賛を送る

前半時点で0-3と大差をつけられてしまった大分はシステム変更により流れを変えました。これまで説明してきた通り、大分のストロングであるシャドーの選手を徹底的に監視されていたため、システム変更を行うことで、自然と野村がフリーな状況になれるような仕掛けを施しました。

ビルドアップでは中盤が弓場アンカーの逆三角形を形成。配置を変えた事で野村はそこまで動かずともフリーになれる。 【わさだトリサポ】

実際、終盤に大分が一点を返した場面はシステム変更がばっちりハマった素晴らしい攻撃だったと思います。また、ゴールを奪った宇津元は逆サイドのSBの位置からゴール前まで長い距離を走ってきており、町田の守備も完全に枚数が足りていませんでした。なにより、ハーフタイムの修正から生まれた再現性の高い攻撃やただでは終わらない大分の選手のメンタリティーの部分が表現出来ていたことについては称賛に値すると感じました。

野村がこの位置でボールを受けられたのは大分の狙い通り‼ 【わさだトリサポ】

■編集後記

久しぶりのnoteマッチレビューでは悔しい結果となってしまった「首位攻防戦」をお送りしました。みなさんいかがだったでしょうか?
今節の町田戦を終えて、今シーズンの大分トリニータ第1章が幕を閉じたような気がしています。第2章以降は大分対策を進めてくる相手チームを倒していくために、チームがどのように変化してくかが見どころになって来るかと思います(むしろ変化していかなければならない)。
それでも、今のチームの一体感があればおそらく乗り越えられるはずですし、私も大分トリニータの変化をしっかりお伝え出来ればと思います!

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見出し画像:perroperro-pero.
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