どんな時もサッカーが好きだ!という気持ちをプレーに込める 市瀬菜々(マイナビ仙台レディース)

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2021年9月、日本初の女子プロサッカーリーグとして『WEリーグ』が開幕。
本企画『WE INTERVIEW』では、Yogibo WEリーグで活躍する選手1名にスポットを当て、キャリアを振り返りながらその人柄にも触れていきます。

どんな時もサッカーが好きだ!という気持ちをプレーに込める

際立つ高さを誇る訳ではなく、他者を置き去りにする俊足の持ち主でもない。それでも市瀬菜々は“強さ”を発揮することが出来る。それは自らのプレーを分析し、研究することに楽しさを見出したからこそ磨かれた予測力の賜物だ。マイナビ仙台レディースの中枢を担う立場になった彼女が取り組む新たな挑戦も実に彼女らしいものだった。

ーー市瀬選手はサッカーを始めてからずっと守備のポジションでプレーしているのでしょうか?
初めはボランチとしてプレーしていたのですが、守備のポジションでプレーするようになったのは小学校高学年の頃にコーチから「いろいろな景色を見ろ」と言われ、センターバックに代えてみたら案外上手くいったのがきっかけです。中学生の頃は男子チームでセンターバック、女子チームではボランチとしてプレーしていました。

ーー男子との体格差が出てくる中学生の頃に、センターバックとして対峙することで難しいと感じる部分はあったのでは?
それはありましたね。小学生の頃はスピードで負けていませんでしたが、中学2年生の後半くらいから周りの男子の背が急に伸び始めて、スピードも一段階上がりました。比べられることが嫌で悔しかったので、負けたくない精神で手当たり次第がむしゃらに取り組んでいました。

ーーこれまでで最も有効に感じたトレーニングはありますか?
高校生の頃から世代別の日本代表に選ばれるようになり、映像で学ぶことが増えました。試合の振り返りでも一秒一秒映像を止めて、「今のプレーはもう一歩右だったらボールを奪えていた」など場面ごとに考えられるようになり面白く感じました。

さらに2019年のワールドカップの少し前に、なでしこジャパンの活動でゴールキーパーの山さん(山下杏也加・INAC神戸レオネッサ)とビルドアップ理論について話す機会があり、自分の中にあるサッカー観というか、世界が一気に変わりました(笑)。それまではパスやトラップといった技術を磨いてきたのですが、予測したポジション取りが面白く感じるようになりました。

ーー市瀬選手が考えるセンターバックの醍醐味とは?
センターバックは身体を張るので、強さが求められるポジションだと思います。でも私のように背が低くて足が遅くても、ポジショニングで頭を使ってカバーできるところが醍醐味です。

ーー市瀬選手のターニングポイントはいつでしょうか?
初めはただサッカーが好きでプレーしていたのですが、高校生の頃に「なでしこジャパンに入る」という目標を立てました。小さな頃に口だけで言うものとは違い、現実的に視野に入ってきた感覚がありました。その理由として、FIFA U-20女子ワールドカップでの経験が大きいと思います。U-17では優勝できたのですが、U-20はフランスに負けて3位という結果でした。本当に敵わない実力差だと感じました。勝てそうな試合だったとも思えないくらいの完敗だったので、上に行ったらもっとすごいんだろうなと思ったことを覚えています。

それまでは自分のプレーの良さについて考えたことがありませんでしたが、サッカーに対して真剣に向き合ったことでヘディングの強さが自分の強みだと気づきました。

ーーその後目標を達成し、なでしこジャパンとして世界と戦うことになりました。
対戦してみて、スピードとフィジカルが世代別の代表とは全くの別物でした。でも私は日本の組織力で上回ることが出来ると思っています。今は世界で活躍する日本の選手が増えてきて、“なでしこジャパン”の組織力に強さや上手さ、速さが総合的に加わっていると思います。

ーーWEリーグは2年目のシーズン。チームやご自身の成長をどんなところに感じますか?
アマチュアからプロに変わってサッカーに関わる時間が増えたことで、一人一人に責任感が生まれました。それが良い方向に働けばチームも良くなると思います。

ーーマイナビ仙台レディースは国際色が豊かなチームです。
様々な発見があります。センターバックのポンピルン・ピラワン(タイ)選手は身体が本当に強くて、目に見える強さはチームを勢いづけるために大事です。スラジャナ・ブラトヴィッチ(モンテネグロ)選手もそうですが、いろいろなものを背負ってWEリーグに来ているじゃないですか。日本という異国の地に来るチャレンジャーとしての熱量を感じます。

ーー市瀬選手が個人的に気になるチームメイトはいますか?
みんな個性的ですが、最近はマホ・・・名字なんだっけ(笑)?あ、廣澤真穂選手がいじられキャラで、すごく良いオーラを持っています。私もいじられる側なのですが、その私ですらマホのことをいじっています。彼女の返しが面白いです。

ーーオフは何をして過ごしていますか?
犬を飼い始めたので、一緒に過ごすことが多いです。ミニチュアダックスフンドで、もうすぐ2歳です。めっちゃ可愛くて癒しです!少し前まではシェアハウスに住んでいて犬を飼うことが出来なかったので、引っ越しのタイミングで家をペット可のところに決めて、いつでも迎えることが出来るようにしていました。サッカーに集中できなくなるかなと悩んでもいたのですが、出会ってしまいました(笑)。チームメイトにも犬を飼っている選手がいるので、ペット談義をしたり、お互いに預け合ったりしています。

ーーさて、ここでみなさんにお伺いしている質問です。どんなWEリーグにしていきたいか、ビジョンを教えてください。
観客と選手の一体感があるリーグを思い描いています。いろいろな人に来てもらって、その人にとって頑張るパワーの源になりたいです。そのためにまずは、好きなサッカーが出来ている喜びをプレーに込めようと思っています。サッカーが大好きだという気持ちを伝えることが、会場の一体感に繋がると思います。

ーー試合ではどんなプレーを見せたいですか?
守備を一生懸命にプレーすることはもちろんですが、相手のパスをインターセプトで奪った後、そのままドリブルで攻撃に上がって行ったら、何か起こるなと思ってワクワクしてもらいたいです。

あとは新しい「強さ」が欲しくて、センターバックの「強さ」と言えばヘディングかなと思い練習しています。ボールを跳ね返すのか、後ろに反らすのか、キープするのか。ヘディングを自由自在に使い分けできるようにしたいです。小さな選手がボールを跳ね返すと会場が沸くじゃないですか。そういうプレーをお見せしたいと思っています!

(インタビュー・構成=早草紀子)

【©WE LEAGUE】

【プロフィール】
市瀬菜々(いちせ なな)
1997年8月4日生まれ、徳島県出身
DF、背番号3
川内南サッカー少年団 → 鳴門ポラリスレディースフットボールクラブ → 常盤木学園高校 → マイナビベガルタ仙台レディース / マイナビ仙台レディース

※この記事は、WEリーグ公式Webサイト『WE LEAGUE.jp』にて2023年4月13日に掲載した内容を転載しています。
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著者プロフィール

2021年9月に開幕した日本初の女子プロサッカーリーグです。WEリーグは「Women Empowerment League」の略称で、この名称には日本に“女子プロサッカー選手”という職業が確立され、リーグを核に関わるわたしたちみんな(WE)が主人公として活躍する社会を目指す、という思いが込められています。現在12クラブが所属し、ホーム&アウェイ方式による総当たりのリーグ戦「2023-24 WEリーグ」を秋春制で開催します。

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