【ラグビー/NTTリーグワン】「タキさんのために」。 その思いが呼び起こした強い意志<GR東葛 vs 東京SG>

NECグリーンロケッツ東葛 瀧澤選手 【©JRLO】

マッチエピソード&記者会見レポート
GR東葛 7-32 東京SG

3月26日、NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)は柏の葉公園総合競技場で東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)と対戦した。悪天候の中でGR東葛はトップ4相手に食らいついたが、最終的には天候にアジャストした戦い方を見せた東京SGの前に7対32と敗れる結果となった。

後半3分に瀧澤直が投入されると、スタンドからは大きな拍手が沸き起こった。この出場により、瀧澤はGR東葛での150キャップに到達したのである。

「瀧澤選手の150キャップということもあり、チーム全体がモチベーション高く、準備が良かった1週間だった」とロバート・テイラー ヘッドコーチが振り返ったように、長年に渡ってGR東葛を支え続けてきた男のメモリアルマッチを勝利で飾りたい。チームには並々ならぬ思いがあった。

仲間たちも、瀧澤への尊敬の意を示す。

「タキさん(瀧澤)はGR東葛の誇り。彼はチームのためにずっと頑張って引っ張っている」(レメキ ロマノ ラヴァ)

「ラグビーはコンタクトスポーツなので、大きなけがをせずに長年やっていくのが難しいのですが、14年間GR東葛のために戦ってきたことは素晴らしく、尊敬しかありません」(アッシュ・ディクソン)

そんな気持ちがプレーに表れたのだろう、この日のGR東葛の立ち上がりは素晴らしかった。キックオフ直後に5mラインまで東京SGを押し込むと、力強く中央を突破したクリスチャン・ラウイが先制トライを決めた。「タキさんのためにがんばろうという気持ちをプレーに出した」(クリスチャン・ラウイ)執念のトライだった。

前半は拮抗した試合展開となった。しかし、前半終了間際、GR東葛が一瞬のスキを突かれてトライを許すと、後半は天候やグラウンドコンディションを利用した東京SGの試合巧者ぶりが発揮され、徐々に点差を引き離されていく。最終スコアは7対32、GR東葛は4連敗を喫した。

「残り3試合、シーズンは続くので、一つひとつ何かを得て、やらなければいけない。今日得たものを失わないように、次にまた新しい何かを得られるように頑張っていきたいと思います」

試合後、150キャップを達成した瀧澤は感傷に浸ることなく、早くもこの先の戦いを見据えた。敗れたとはいえ、この試合のGR東葛はそれまでとは明らかに違っていた。「タキさんのために戦う」と全員が一丸となって臨み、80分間、各局面で激しい攻防を繰り広げた。

功労者のメモリアルマッチというシチュエーションが呼び起こした、GR東葛の選手たちの“戦う”という強い意志は、残りのシーズンに向けてポジティブな要素をもたらすに違いない。

(鈴木潤)

【🄫JRLO】

NECグリーンロケッツ東葛
ロバート・テイラー ヘッドコーチ

「まずは今日、来ていただいた両チームのサポーターの方々、ありがとうございます。そして、東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)は勝利おめでとうございます。あと、瀧澤直選手が今日で150キャップに到達しました。彼はNECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)を代表する選手で、チーム全体が今日は瀧澤選手のためにプレーしましたし、努力もしたし、その姿を誇りに思います。今日の戦い、今日の頑張りはこれからの試合に向けて生きてくる部分だと思います。東京SGとの試合で、フィフティー・フィフティーのこぼれ球に対して、GR東葛の選手は努力を見せてくれたと思います」

――今日は試合の入りがすごく良かったが、ここ数試合と違ったアプローチの仕方があったのでしょうか?
「39分までは拮抗した試合だったんですけど、今週に限っては瀧澤選手の150キャップということもあり、チーム全体がモチベーション高く、準備が良かった1週間でした。瀧澤選手に対してチーム全体がガッカリさせないようなプレーで臨もうという意気込みがあり、また天候も雨ということで、そのおかげで東京SGに対して拮抗した試合ができたと思います。ただ、個々のセットピースが強かったので、そこで東京SGに軍配が上がったと感じています」

NECグリーンロケッツ東葛
レメキ ロマノ ラヴァ キャプテン

「タキさん(瀧澤直)の150キャップ目の試合ということで勝利を収めたかった。ただ残念だけど、それができませんでした。みんなの努力とファイトはすごく良かった。キックバトルも勝てたと感じていたけど、セットピースのところにすごくプレッシャーが掛かって、そこからペナルティになって、イージーなトライを与えてしまった。それが残念ですけど、みんなのファイトはすごく良かった。それは誇りに思っています」

――レメキ選手から見て、瀧澤選手はチームでどのような存在でしょうか?

「タキさんはNECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)の誇りだと思っている。彼はチームのためにずっと頑張って引っ張っているし、150キャップ全部がGR東葛だけで記録したものなので本当にすごい。みんなが彼の存在をリスペクトしているし、GR東葛の役割で言えば、彼はロケットマン。みんな彼のような人間を目指したいと思っています」

【🄫JRLO】

東京サントリーサンゴリアス
田中澄憲監督
「本日は雨の中、ありがとうございました。先に瀧澤直選手、150キャップおめでとうございます。たぶん、NECグリーンロケッツ東葛さんも瀧澤選手の150キャップ目を勝利で飾りたいというモチベーションもあったのではないかと思います。キックオフしてすぐにフィジカリティーの強いラグビーで少し受けたんですけど、そこから落ち着いて立て直すことができて、ボールを動かすのが難しい状況の中、スマートに戦えた部分はすごくレベルが上がったのかなと思います。ここから負けられない試合が一戦一戦続きますので、ゲームの中で成長しながらやっていきたいと思います」

――前半のアーロン・クルーデン選手からキックでつながったトライの場面は雨の中でバックスのテクニックが光ったプレーでした。上から見ていて、どのように感じましたか?
「このゲームは、雨が降ることが前から分かっていて、キックをうまく使っていくことをこの1週間フォーカスしてやってきました。それをしっかり遂行できた。やはりボールを持ってアタックするチームですけど、こういうバリエーションもあることで選手も自信になると思います」

――「スマートに戦えた部分はレベルが上がった」とおっしゃいましたが、具体的にどの部分でしょうか?
「こういう天気でボールをダイナミックに動かすのは難しいと思うんです。自分たちがボールを持っていることで落ち着くチームですけど、ただ、割り切って手放して、割り切ってプレッシャーを掛けていくことでまた優位なボールが返ってくることをトレーニングではやっていましたけど、こうして試合で実感できたことはこの先に向けて良いことなので、そこですね」

――埼玉パナソニックワイルドナイツ戦のあとに、齋藤直人選手が「ボールを持ち続けることには限界があるから、どこかで手放す勇気が必要だ」とおっしゃっていたのですが、今日はそこを体現できたということですか?
「そうですね。今日はこういう天気なので、最初からそれがプランとしてあってできたと思うのですが、ボールを動かせる天気の中でそういう判断をしていくことが課題だと思います。今日みたいな天気で逆に割り切って蹴っていったことが出口としてどうなっていったかをしっかりレビューすれば、蹴ってもいいんだなと、思い切って蹴っていこうというプレーも選択できると思います」

東京サントリーサンゴリアス
堀越康介共同キャプテン
「今日のゲーム、雨ということでクロスゲームになることは想定していましたし、その中で我慢強く戦えたのはチームのプラスになったと思います。あと、フォワードパックもこの試合で成長した部分も見られました。引き続き、監督が言ったように負けられない試合が続くので、一日一日、成長して戦っていきたいと思います」

――この試合は全体をとおしてスクラムが良かったと思います。どういうところがうまくいったと感じていますか?
「試合前からスクラムが多くなることは予想していましたし、そこでプレッシャーを掛けられたことは、1週間非常に良い準備ができて、それを発揮できたのかなと思います。特にヒットの部分はこの試合でみんな自信をつかめたのかなと思いますし、ヒットのあとのフォワードパックの強さ、パワーの出し方は成長したと思います」

――前半のアーロン・クルーデン選手からのキックでつながったトライの場面を、グラウンドの中で見ていてどのように感じましたか?
「雨なので、効果的にキックをして、そこにしっかりプレッシャーを掛けていくところで、それがしっかりハマったと思います。頼もしかったというか、すごくきつい時間だったのでうれしかったです」
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著者プロフィール

ジャパンラグビー リーグワンは、「あなたの街から、世界最高をつくろう」をビジョンに掲げ、前身であるジャパンラグビー トップリーグを受け継ぐ形で、2022年1月に開幕した日本国内最高峰のラグビー大会です。ラグビーワールドカップ2023を控え、セカンドシーズンとなるリーグワン全23チームの熱戦をご期待ください。

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