【物語りVol.39】 SH 杉山 優平「まだ自分が知らないことを教えてくれる、自分が成長できるのはここやなと」
【東芝ブレイブルーパス東京】
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【物語りVol.39】 SH 杉山 優平
<自分は何のためにラグビーをしているのだろう>
胸を張ってもいい経歴を作ってきた。
名門の大阪桐蔭高校でキャプテンを務め、高校日本代表に選ばれた。筑波大学でも1年生から9番を着けた。
それなのに、杉山は鬱々とした日々を過ごしていた。
「高校でキャプテンをやった時に全部自分で背負ってしまい、すごく苦しんだんですね。その影響でプレーも下手くそになっていた。キャプテンというものに、いいイメージを持てなかったんです」
試合に出ているのに、充実感を得られない。
高校で燃え尽きてしまったのか、とさえ思った。
筑波大学で最終学年を迎えると、杉山はまたしても主将に指名された。「大学では絶対にやらんと思っていた」が、同期の圧倒的な支持を受けて選出された。
高校時代の経験を糧に、副キャプテンらに権限を譲った。キャプテンとしてのタスクは「ここぞという場面で喝を入れるぐらい」にとどめた。
「4年生の1年間は、メチャメチャ楽しくかった。やり切った感じがありました。春の段階では早慶明にすっごいボコボコにされたんです。でも、そこから這い上がるというストーリーをみんなで作って、毎週、毎週、目標を作って。対抗戦では3年連続で5位でしたが、ひとつ順位をあげて4位になりました。大学選手権では、4年間で最高のベスト8までいきました」
最高の結果をつかむことはできなかったが、達成感に満たされた。おそらくそれは、チームメイトと心の深いところでつながることができ、勝利を目ざしたからなのだろう。
「自分のために頑張るのがアスリートやし、ラグビースキルが上がることが一番大事で、それを楽しいと感じられていれば伸びると思うんですけど、東芝ブレイブルーパス東京に入った1年目はそれがなくて。大学の時と同じ状況に陥ったと思ったんです」
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ラグビーのどんなところに惹かれたのだろう。
杉山は自問自答する。様々な感情が頭に浮かび、そのうちのひとつが徐々に像を成していった。
「ラグビーは15人でやるスポーツで、それぞれにポジションも役割も違って、自分ができないことをできる人がいて、そういう人を頼って、そういう人のために頑張る。誰かのために頑張るのが魅力で、自分はそこに惹かれたんやな、と気づいたんです。それが自分の大事にしていることなんだ、って」
1年目のシーズンを終えた杉山は、友人や知人、恩師らのもとへ足を運ぶ。たくさんの人たちの思いに触れた。
「みんな、応援しているよと言ってくれるんです。ラグビーを続けている大学の同期は少なくて、そのなかでリーグワンのチームでやっている自分の環境は、当たり前じゃないんだと気づくことができました。同期とお酒を飲むと、泣きながら頑張れって言ってくれるヤツもいるんです。そうやっていろんな人のあったかさを実感して、自分のためじゃなく自分を応援してくれる人のためなら頑張れる、と思ったんです」
自分のためではなく、人のために──それこそは、東芝ブレイブルーパス東京のカルチャーの核となるものだ。複数のチームから誘いを受けた杉山が、ブレイブルーパスを選んだ理由でもある。
「僕が大事にしているものが、ブレイブルーパスにはあるなと思ったんです。いい意味で学生ラグビーの延長線上みたいなところが、あるんじゃないかと。社会人になったら、プロになったら失ってしまうものが、ここには残っているというか、それが僕にとって一番ピンと来たもので。もう感覚的に一瞬で、まだ自分が知らないことを教えてくれる、自分が成長できるのはここやなと」
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「3シーズン目を迎えていますけど、なかなか試合に出ることができなくて、すごくくすぶっている部分はありますけど、今年からプロになりました。結果も出していないのですごく悩んだんですが、自分にプレッシャーをかけたかった。感覚的には社員選手とあまり変わっていなくて、とにかく自分自身にプレッシャーをかける、自分のケツを叩くために」
自分を応援してくれる人の支えをエネルギーにして、杉山はラグビーに打ち込む。応援してくれる人の中心に、愛する家族がいる。
「僕は4人兄弟で、ふたりの弟も東京の大学でラグビーをやって、四男はいま大学1年です。両親には経済的な負担を、ものすごくかけてきたと思うんです。そのなかで、いまの自分にできる親孝行は、ラグビーをしっかりと続けることじゃないかと。僕のラグビーを観るのが両親にとって楽しみのひとつになっているなら、自分のケツを叩いて頑張らなきゃいけないと思うんです」
2022年末から23年1月にかけて開催された大学選手権で、筑波大学がベスト4まで勝ち上がった。準々決勝で東海大学を破った。
「僕らが準々決勝で東海に負けた時の1年生が、いまの4年生なんです。僕らのストーリーが彼らに届いていたのかなと思って、めっちゃ感動しました。自分たちでストーリーを描いて、その方向へ持っていくのは大事だよな、と感じています」
東芝ブレイブルーパス東京で、杉山はどんなストーリーを描くのだろう。利他の心を持つ彼なら、澄み渡る空のような未来をチームにもたらせるはずだ。
(文中敬称略)
(ライター:戸塚啓)
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