「スポーツが好き!」な子どもを一人でも多く! 出会いから17年、それぞれの今―

びわこ成蹊スポーツ大学
チーム・協会
 2003年に開学したびわこ成蹊スポーツ大学では、開学以降、子どもへの運動指導を積極的に行っている。2009年から「びわスポキッズプログラム」として延べ32,000人の子どもと触れ合ってきた。2022年度、キッズリーダーとして活動した大道聖奈さん(同大学4年次生)は、5歳の時にびわこ成蹊スポーツ大学の学生による「運動あそび」を体験していた。当時、大道さんと一緒に運動あそびを行ったのは、キッズリーダーとして活動していた同大学3期生の阪田隼也さんと樋口健策さん。阪田さんは、子どもの運動指導の専門家として起業し、滋賀県、京都府、大阪府を中心に運動あそびを展開している。樋口さんは、大学卒業後はスペインに渡りサッカーの通訳の仕事に就き、帰国後は、地元の京都市でサッカークラブチームを運営・指導している。お互いに大学卒業後も運動あそびやサッカーを通して子どもと触れ合っている。今回、大道さんと阪田さん、樋口さんの3人だけでなく、大道さんが通っていた幼稚園の当時の担任である大矢明さんの4名が15年ぶりに再会。4人に当時のことや、現在の取り組みなどを取材した。

左から阪田さん、大矢さん、大道さん、樋口さん 【びわこ成蹊スポーツ大学】

17年前の活動を振り返って―

 びわこ成蹊スポーツ大学では、2009年から運動あそびを通じて子どもたちにスポーツを好きになってもらうことを目的に「びわスポキッズプログラム」として事業化。開学間もなくから、滋賀県サッカー協会からサッカーの普及活動の一環として依頼されたことをきっかけに「運動あそび」は始まっていた。当時、サッカー部に所属していた阪田さんと樋口さんは、子どもたちの楽しむ姿を見るにつれ、その魅力に惹かれていった。この出会いが、2人の今の活動の原点となっている。
 阪田さんと樋口さんは口をそろえて「自分たちが本当に楽しかった」と笑顔を見せる。また、「子どもたちと一緒になって楽しむ姿を見せることで、子どもたちにも楽しいと思ってほしかった。子どもが楽しんでくれている姿が見たかった」と樋口さんは当時の考えを教えてくれた。2人が共通していた『楽しむ』という考え方は、大矢さんをはじめとする現場の先生にとって新しい考え方だった。大矢さんは「当時は、子どもたちができないことをできるようになるよう工夫して運動指導を行っていた。また、その考えが正しいと考えていた。そのような中、阪田さんと樋口さんが行う運動あそびを通じて、子どもたちが楽しみ、彼ら自身が楽しみ、次の指導をより良くしようと向上心を持つ姿を目の当たりにして、その考えが変わった」と学生だった2人から学んだと言う。また、前向きに取り組む2人の姿勢を見て、「何か学びを得る機会になってほしい」と現場の先生たちは彼らを受け入れるように変化した。運動あそびが終わる度に、振り返りを行い、全員で次に活かすようになり、お互いに刺激を受け合う関係を築き上げることができていった。「人と人との繋がり。受け入れてくれているからこそ、信頼することができた。今でもその関係が続いていることが嬉しい」と阪田さんは話す。17年がたった今、当時学生だった2人の考え方は、現在の活動でも変わらないポリシーとなっている。 

過去から現在、そしてこれからの目標-

当時5歳だった大道さんは「誰が来てくれたかはあまり覚えていない」と笑顔で話しながらも、「中学生の時に、幼稚園での運動遊びの経験を思い出して、将来は子どもの運動指導をすることが目標になった」と話す。子どもの頃の経験がきっかけとなり、びわこ成蹊スポーツ大学への入学につながった。入学後は、積極的に『びわスポキッズプログラム』に参加し、彼女もまた子どもが楽しみ、自分自身も楽しむ姿を体現していた。春を迎え、4月からは社会人となりスポーツ現場へ就職する。「すぐには、子どもを対象に運動指導はできないかもしれないが、必ず目標は達成したい」と力強く語ってくれた。
 阪田さんと樋口さん、大矢さんの3人に共通している考えは「運動あそびを通して、楽しかったという想いを抱かせること」。大矢さんは子どもたちと触れ合う中で、「できた」「できていない」を考えることはなくなった。今は、子どもたち一人ひとりのペースでチャレンジしている姿を見逃さないようにしている。この17年間で、「子どもたちが喜んでいるか」を第一に考えるように変わった。このきっかけは、阪田さんと樋口さんとの出会いがあったから。阪田さんは、「幼児体育業界を変えたい!」と広い視野で考えている。「もっと子どもたちが成長できる、楽しめる環境を作るためには、もっと現場の私たちが勉強しないといけない」と危機感を抱いている。
 「子どもの運動能力の低下」「スポーツ離れ」などは、社会が抱える課題である。ただ、大人の目線だけで捉えていてはいけない。子どもが楽しめる環境を作り、「運動が好き」「スポーツが好き」という感情を抱けるように大人がはたらきかけることが求められる。子どもたちに関わる大人が『子どもが主役』をポリシーにすれば、きっと運動が、スポーツが好きという子どもは増えるだろう。日本初のスポーツ大学であるびわこ成蹊スポーツ大学が目指す「新しいスポーツ文化を創造する」人材を体現する阪田さんや樋口さん。彼らのような卒業生の活躍が、大きな社会課題の解決に結びつく日が来るかもしれない。

15年前と現在の3名(左から樋口さん、大道さん、阪田さん) 【びわこ成蹊スポーツ大学】

多くの別れや新たな出会いのある春。
びわこ成蹊スポーツ大学では、今年も多くの卒業生を輩出し、新たにスポーツ学を学びたい意欲ある学生を受け入れる。彼ら4人のように17年を経ての再会もまた新たな出会いである。新しいスポーツの風を吹かせる人材にこれからも期待したい。
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著者プロフィール

2003年に開学した我が国初で唯一の「スポーツ」を大学名に冠したパイオニアが、その役割を全うすべく、「スポーツに本気の大学」を目指し「新たな日本のスポーツ文化を創造する大学」として進化します。スポーツを「する」「みる」「ささえる」ことを、あらゆる方向から捉え、スポーツで人生を豊かに。そんなワクワクするようなスポーツの未来を創造していきます。

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