【局面が変わった瞬間の一本】J3リーグ 第1節 SC相模原×ガイナーレ鳥取|マッチレビュー

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【【局面が変わった瞬間の一本】J3リーグ 第1節 SC相模原×ガイナーレ鳥取|マッチレビュー】

【これはnoteに投稿されたinamoさんによる記事です。】
SC相模原を今季から率いるは戸田和幸監督。人気サッカー解説者であった戸田氏がプロカテゴリーの監督に。そんな戸田氏がどんなフットーボールを展開してくれるのかと、まだまだかとSC相模原の試合を待ち望んでいたサッカーファンは多かったはずだ。私もそんな一人だった。
https://youtu.be/3Bn0hTeRkkA
新加入選手が21名。そしてJリーグデビューとなる選手も多数。地域リーグから加入した選手も。平均年齢はJ3の中でも1,2位の若さ。それでもこのインタビューの中でも開幕戦から自分達が積み上げたものを見せつけたい!徐々にではなく、この開幕戦からフルスロットルで!という言葉が。

しかし、開幕戦のゲームの入りは相模原の選手からは画面越しから伝わるほど緊張感が漂り、プレーには硬さが目立った。それでもゲームが進むにつれてそんな硬さも和らぎ、チームの掲げるチームのスタイルを表現できるようになった。

そして忘れてはいけないのが、開幕戦アウェイの地に乗り込んだガイナーレ鳥取だ。どうしても注目が相模原に多く注がれてしまかもしれないが、ガイナーレ鳥取のフットボールもまた素晴らしかった。この開幕戦に限っては、ガイナーレ鳥取の方が私的には素晴らしかったのでは?と感じる内容だった。

両チームともにボールを大事にし、切り替えが早く、攻守両面の繋がりの切れ目が少ない完成度の高いフットボールを見せてくれた。

前置きがやや長くなってしまいましたが、それではこの試合を簡単に振り返っていきたいと思います!

▪️はまらない鳥取

ゲームの入り冒頭でも少し触れたが、相模原の選手からは緊張感が伝わりプレーにも影響。相模原はやや重心が後ろに重くなり、鳥取がボール保持を高めて攻め込む時間帯となった。

鳥取がボールを保持できた理由はそれだけではない。相模原のプレスを空転させるような立ち位置、連携、そして逃げ道を持ったビルドアップが1番の理由だった。

【inamo】

鳥取はボールを保持するとベースの4-4-2の配置を流動的に動かすことで相模原のプレスを空転させていった。非常に流動的かつ連動性の高い鳥取のポジショチェンジ。

そのキーマンとなったのが、CH普光院と左SB文だった。

▽左SB.文 仁柱(ムン・インジュ)

鳥取はビルドアップ局面になると右SB田中は高い位置に上がり、右SH東條はインサイドに入ったり流動性を持ったアクションを起こす。

そして反対の左サイドではまた違った流動性を見せる。

左SB文は相模原のファーストプレスの出方に合わせてその立ち位置を変える。

鳥取の2CBやGKにプレスが噛み合ってしまうなという状況になれば、下がってヘルプに回る。またDFラインのやや内側に入ることで、2CB +左SB文で3バックを形成してボールを動かした。

【inamo】

自陣でのビルドアップが終わると、左SB文はまた違ったタスクをこなしていった。

右SBの田中の高い位置へ上がるアクションを見てカウンターリスクを取るために最終ラインに留まることはもちろん、左サイドにボールが入る匂いが漂うと積極的に前線へ絡むアクションも見せる。

左の幅をとったり、インサイドに入ってボールを受けることも。

この時周りの連動性も抜群だった。左の高い位置へ左SB文が上がるとCH普光院が斜めに落ちてCBと前線のパスの繋ぎ役に。また左SH牛之濱は左SB文とポジションが被らないようにポジションをとる。

【inamo】

左サイドの左SH牛之濱、CH普光院、左SB文のトライアングルがスムーズかつバランスを崩さない旋回が可能となり、相模原はプレスがはまらない状況に。

鳥取は流動的にボールを動かせるような状況になった。

▽ビルドアップの逃げ道

そして鳥取がまた相模原にとって憎かったのは、ビルドアップの逃げ道がしっかり準備されていたことだ。

後方からビルドアップを試みるチームに対して当然相手は前からプレスに出て、敵陣で時間とスペースを奪うアクションを見せることもあるだろう。そして自陣からのショートパスにこだわりすぎて、相手の前プレに食われてショートカウンターからのピンチ!となることも後方からビルドアップを試みるチームにはあるあるの話だ。

しかし、そういったことも想定したビルドアップの逃げ道が鳥取には用意されていた。その逃げ道が前線FW大久保へのロングボールだった。

相模原が前からプレスに来たな!と思えば先ほども触れたが左SB文のヘルプに加えて、前線FW大久保への長いボールでの前身も見せた鳥取。

【inamo】

FW大久保は非常にフィジカルの強い選手。身長がすごく大きい訳ではないが、強い体を活かして長いボールをキープ。彼のポストワークで2列目の選手を前向きに。またファールをもらって陣地を回復することも。彼の献身的なプレーがさらに相模原を困らせていった。

そこへ蹴り込まれるロングボールも精度が高ったのも忘れず伝えておきたい(両チームのGKのビルドアップ能力も非常に高った)。

▽レジスタCH普光院

サイドの選手同様に2トップの選手も非常に流動的にポジションを変えていくのも特徴的だった。FW大久保とコンビを組んだ重松は中盤に落ちてボールをピックアップ。

2点目となるミドルシュートも突き刺し、個人の力も持った前線の選手も多かった印象に鳥取。

そんな中でもボールを持った局面で際立っていたのがこの選手。

CH普光院は非常にボール扱いの上手い選手。彼がフリーで前向きな状態になると、鳥取の攻撃スイッチは一気に入る。長短正確なキック。何度も彼から決定的なキラーパスが相模原を刺していった。

また懐深いボールキープも特徴的。後方から苦しいボールを受け取ってもそう簡単にはボールを奪われない。ボールを奪った後ではしっかりボール保持局面に移行するパス、キープで地味だが聞いている渋いプレーも随所に見られた。

そんなボールを奪った後のワンプレー。局面が変わった瞬間の一本がこの試合の結果に大きく左右していった。

▪️局面を変える一本

相模原の戸田監督の試合後のコメントの中にも局面が切り替わった瞬間の一本というワードが書かれていました。
https://www.scsagamihara.com/news/post/20230304001
鳥取が奪った前半の2ゴールは、相模原が局面を変える一本を出せなかった。鳥取の局面を変えさせなかったトランジションプレスが発揮されたことで生まれたゴールだった。
https://twitter.com/gainareofficial/status/1631939957291122688

鳥取の先制ゴールはFK。素晴らしキックがゴールに吸い込まれた。そしてこのFKを獲得するまでの流れに注目したいと思う。

鳥取が左サイドから相模原の陣内へ攻め込む。これを相模原がボールを奪うが鳥取がすぐさま奪還。再びボール持った鳥取だがまたもや相模原がボールを奪い返す。こんな攻防が瞬間的に2.3度発生。

そして相模原が鳥取の1度目のトランジションプレスを掻い潜りカウンター局面に移行出来そうとなった時に、2度目の鳥取のトランジションプレスが襲い掛かった。

鳥取のトランジションプレスの波が相模原に局面を変えさせなかった。

そしてその勢いそのままに中央から攻め込み、ゴール前でファールをゲット。そのFKをCH普光院が突き刺し先制となった。

そして鳥取の2点目もトランジションプレスが起点となった。

右サイドのスローイン。相模原のDFに跳ね返されてセカンドボールも拾われるが、そこからトランジションプレスの発動。そして混戦でこぼれ球を拾った重松がミドルシュートを突き刺し2点目が生まれた。
https://twitter.com/gainareofficial/status/1631940420539129858

鳥取の前半奪った2点目の起点はどちらも早いトランジションプレスだった。これは今期の鳥取の目指しているストロングポイントのようでもあり、それがピッチで存分に表現された形となった。

相模原は一度は自分達のボールになった局面で、再びボールを奪われた失点となってしまった。

一度ボールに触れているからこそ尚更悔しいはずであり、局面の切り替え方。クリアという要素はつくづくサッカーの結果に直結するもんだなと痛感させられたシーンでもあった。
https://note.com/fbase/n/n0f777bac4716?magazine_key=m52e909ca6ef8
そしてそういった局面を変えられる一本が入ると、こういったゴールを奪える力のある相模原。
https://twitter.com/sc_sagamihara/status/1631982089926242305
https://note.com/fbase/n/n878cecfde464?magazine_key=m52e909ca6ef8

▪️相模原.構造のズレを生かした前進

前半2点のリードを許した相模原は同点に追い付くべく、よりゴールへ直結するプレーを増やしていった。

前半鳥取に押し込まれて、最終ラインが5バックになるシーンも多く後ろに重心がかかってしまった相模原。より前から出るぞと意気込みが後半からは見られ始めた。

トップの松澤がやや中盤に下がって、2シャドーの佐相と藤沼が前に押し出されて鳥取の2CBへ圧力をかけにいった。中盤の選手もそれに続いて前半よりも前への矢印を出して鳥取の保持へアクションを示していった。

相模原はボールを保持局面になると最終ラインを3バックに。その前にCH2枚を配置し、前線に5枚の選手が並ぶような陣形となった。これに対して鳥取はボール非保持局面になると、4-4-2のミドルブロックを形成。

【inamo】

鳥取の2トップに対して相模原の3バックなのでプレスが噛み合わないので、右CB加藤と左CB山下には時間とスペースが与えられやすい構造に。そこをしっかり把握していた2人(山下、加藤)が「運ぶドリブル」でチームの前進の起点となった。
https://note.com/fbase/n/n11da521cb703?magazine_key=m52e909ca6ef8
フリーとなった2選手に対して鳥取の中盤が釣り出てくると中盤に縦パスを通してレイオフやフリックでプレスを掻い潜るシーンも。

そして相模原の1点目はそんな左CB山下が起点に生まれた。
https://twitter.com/sc_sagamihara/status/1631978516123389954
https://note.com/fbase/n/n5c1f448a3f33?magazine_key=m52e909ca6ef8

▪️おわり

試合は劇的な締めくくりとなった。後半2点を追いついた相模原。しかし後半ロスタイムに鳥取が値千金のゴールで再びリードを奪い、アウェイの地から勝点3を持ち帰った。

後半2点を追いついた戸田監督の修正、それを実行した選手たちは素晴らしかったですね。後半右サイドの構造を変えたのも面白かったですね。トゥヘルチェルシーがよくやっていたWBとIHのポジションチェンジ。

よりゴールへ直結するアクションでチームの活気を取り戻した相模原。それが2点に結びついたのは間違いないはずだ。後半投入された左利きのデューク・カルロスも強烈でした。しかし攻撃が単調になり、鳥取にボールを簡単に受け渡してしまったことも確か。

前半のゲーム運び。そして2点を追いつかれてからの鳥取は非常に強かで、試合巧者っぷりを発揮。

最後まで簡単にボールを捨てことはせずに、じっくり相手を観察し、それが実ったような決勝ゴールだったように感じます。
https://twitter.com/gainareofficial/status/1631940926720581632

SC相模原もガイナーレ鳥取も素晴らしいチームでした!また一つ、二つ注目しなければいけないチームが増えました。J3も面白いですね!それではまた!
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