【インタビュー】『サッカー経験ががなくてもサッカーの面白さを味わうことができる』〜ゼロファジ(前編)〜

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【【インタビュー】『サッカー経験ががなくてもサッカーの面白さを味わうことができる』〜ゼロファジ(前編)〜】

【これはnoteに投稿された難波拓未|大学生サッカーライターさんによる記事です。】
■ゼロファジ
2011年3月にブログ『0からはじめるファジアーノ』を開設。以後、ファジアーノ岡山のサポーターとしてサッカーについて発信している。取り上げる内容は、分かりやすいサッカーの見方、クラブの経営方針の解説、サポーターが疑問に思う事象など多岐にわたる。現在はnoteやTwitterを中心に情報発信を行う他、2023年1月にポッドキャスト『ファジサポ談話室』をスタート。日本初のサッカー観戦術を教える講座の製作に尽力中。
■各SNS
・Twitter(https://twitter.com/ZeroFagi?s=20&t=bCzhmNbW7uT0k0jzGY9a0g)
・note(https://note.com/zerofagi/)
・YouTube(https://www.youtube.com/@0zerofagi12/featured)
・ポッドキャスト(https://open.spotify.com/show/7DQizhGYK5OnBTn2xEet1C?si=f07574d6cdbc4cf6&nd=1)

学生時代に楽しんだ昼休みサッカー

 サッカーを見始めたのはドーハの悲劇でしたね。だから、30年前になるのかな。ちょうどJリーグが始まる時期で、最初は横浜マリノスを応援していました。理由は身の周りに巨人(読売ジャイアンツ)を嫌っている人が多くて、当時の(読売)ヴェルディがめちゃくちゃ強かったから、ヴェルディキラーだったマリノスを応援しようと(笑)。今は今治のオーナーをやられている岡田武史さんが監督だったときまでマリノスを見ていたから、2003年くらいまでかな。マリノスを応援していると言っても広島まで行ってサンフレッチェ広島との試合を見に行くような度胸はなくて、専らテレビで見るだけでしたね。スクールとか部活とか、サッカーをちゃんと習ったことはなかったけれど、サッカー自体はけっこう子どものときから好きでした。

今でも忘れられないのが、中学・高校時代に混ぜてもらってた昼休みのサッカーなんです。通っていた学校が進学校だったのでスポーツはたいして強くないのに、当時のサッカー部がすごく強かった。2回戦であの作陽と対戦して前半を1-0でリードしちゃうくらい。でも、結局は1-2で負けちゃうんですけど(笑)。作陽がどこまで本気だったか分からないけど、当時の作陽と当たる1回戦2回戦の学校なんかは0-5でチンチンにやられることが普通だったんだけど、母校のサッカー部はかなり戦える人たちが集まっていたみたいで。

そんなサッカー部の中心選手が同級生にいて、その彼を中心に何人かで昼休みに先輩たちと学校のグラウンドで遊びのサッカーをやっていたんです。そこには当然サッカー部がたくさん集まってくるんですけど、自分みたいなサッカー経験0の素人も入れてもらえた。それがたまらなく楽しかったんですよ。

もちろんプレーはぜんぜん付いていけませんでした。まわりは経験者ばっかりか、運動神経のいい精鋭ぞろいだったので。だけど、素人の自分がパスを1本通せたり、たまたますごい先輩を止めちゃったときはすごく褒めてくれた。「サッカーやるのってめちゃくちゃ楽しいな!」って思う経験が中学3年生から高校2年生くらいまでかなぁ。毎日のようにあったんです。

 2011年3月からブログを書き始めてから嬉しいことに「プレーしている人みたいな言い方をしますよね」って褒めてもらうことがあるんですよ。もちろんしっかりとしたプレー経験はないんだけど、学生時代に昼休みで先輩や仲間たちと草サッカーをほぼ毎日やっていた経験が、モノを書くときに生きているってことだと思います。ボールを止める、蹴るってことがどれだけ難しいか。素人が普通にやると、パスが短くなったり長くなったりしますよね。「走っている人の足下にパシッと合わせることがすごく難しいことなんだ」っていうことがわかるんですよ、体感として。だから、書ける。実際にやったことがあるから。

サッカーって体力的にしんどいスポーツなんだろうなってことは経験者じゃなくてもなんとなく想像できる。でも、実際どれくらいきついのかっていうのは分からない。90分試合をフルコートでやる経験がないですからね。でも、昼休みの時間に自分も走り回ってみて、あれだけキツイことを涼しい顔してやってる人たちを見てるから、「あ、彼らのスタミナは尋常じゃないな」ってのはわかる。そういうふうに実際に中に入ってサッカーをやった経験が、サッカー観戦にめちゃくちゃ役に立つんですよね。ピッチに立つと「こんなふうに見えるんじゃないかな」とか。背後から来るスルーパスを受けるときに「どの辺に回り込んで、どの角度で足を出してボールを止めようか?」とか。観客としてサッカーを見ているときに、イメージしやすい部分が間違いなくある。「楽しかったな」って、今でもあのときのことを思い出しますね。ほんとに、「観るのもやるのも楽しい」って心から思っていましたから。今でも貴重な財産だと思っています。

解説者の言っていることが知りたい

 サッカーの中継を見ていると「もっと分かりたい!」って思うんですよね。分からないことが多いから。まず、解説者の言っていることがよく分からなくて。今は何について説明してくれているのか?まずそこからもう分からない。だから分かるものだけを覚えていって、自分の中に蓄積していくという作業を主にマリノスとか、代表戦の中継を見るときにやっていました。ドーハの悲劇からずっと代表ファンでもあったので、フル代表だけじゃなくて各年代の試合を中継があれば手あたり次第に見ていました。試合を見る回数を重ねていくと、未経験者でも成長するもので、解説者の言っていることが経験則的に分かるようになっていくんですよね。それも楽しかったな。

 そうこうしていると、学生時代に草サッカーで得た体験をベースに「サッカーってこういうものだ!」っていう断片的な知識がどんどん自分の頭の中に蓄積していっていました。ファジアーノ岡山に出会う前は、経験則的に「こういう流れになると良くない」みたいなことを理屈では説明できないけれど肌感覚では分かるくらいの観戦レベルでしたね。

体感することは大切だけど・・・

 やっぱり実際にやるっていうことはサッカーを楽しむうえで超大事だと思います。いろんな人にサッカーをやってもらいたい。自分ももっとやっておけばよかったなと思います(笑)。だけど、大人になってくると11対11のサッカーはなかなかできないでしょう?仕事とかで時間もないし、そもそも人数を集めることも難しいから。だから、なんかイベントとかでもいいからアトラクション的にパスやトラップの難しさを体感できたら良いなって思うんですよね。

実際にボールを蹴ったり、止めたりすれば、見ている選手がどれだけ難しいことをやっているか分かる。それに、うまい選手っていうのも、どれくらいうまいのか。レベルとか段階的な部分も分かりやすくなるはず。解像度の差っていうのかな。もっとクリアに見れるし、競技者の立場や視点に近づくことも可能になってくると思います。

サッカー経験がなくても、サッカーの面白さを味わうことはできます。サッカー経験がある人だけがサッカーを語れるというわけじゃなくて、こつこつ知識と経験を積み上げれば、ガチでプレーしてきて観察力も持っている人と普通にサッカーの話をできるんですよね。ちゃんと話になるんですよ。もちろん彼らはプレーした経験が豊富だから、すごくリスペクトをしているんだけど、頭の中で同じ絵を描きながらしゃべれる。それがめちゃくちゃ楽しくて。一種の快楽と言っても過言じゃないですね。これもサッカーの醍醐味の1つだと思うんですけど、なかなか知られていないとも思います。

30代とか40代とかの人たちって、今からサッカーをプレーすることはすごく難しいはず。だから、プレー経験を得にくいと思います。でも、観戦していく中で知識や経験を蓄積して整理していけば、今のシーンについて「ああいうプレーだった」「こういうプレーだった」っていう議論をすることは十分できる。そういう遊び方をする人を少しでも増やしたいって思っています。 

ゲームとしてサッカーを観る楽しさ

 プレー経験がないと分からないディティールの部分は間違いなくあります。それは諦めちゃっていますね。例えば、60分くらいに足がしんどくなって走れなくなる感覚は絶対に分からない。だって、走ったことがないから。どうきついのか、どうポジションに戻れないのか。どこに負荷が掛かって踏ん張れなくなるのか。そういうものは分からない。

だから、そういった部分は「おそらくこうなんだろうな」って感じに留めて、基本的には自分で学んだことを重点的に見ています。かみ合わせとかで、どういう現象が起こっているのかとかを考える。俯瞰でゲームとしてサッカーを観る感じです。独学で分かるようになった部分をとことん突き詰めていく。そうすることで、サッカーは確実に楽しくなるし、もっと臨場感をもって観ることができるんです。サッカーって本当に奥深くて楽しいですよ。

今、自分はサッカー観戦術を伝える講座を作っています。自分のようにサッカーをやった経験がなくても、より臨場感があって没入して試合を見れるようにしようっていうコンセプトを基に考えています。

「サッカーってつまらない」とよく言われるじゃないですか?けっこう根強い声としては「シュート待ちになっちゃって、ゴール前のシーンしか面白くない」って指摘があったり。なぜ、そういうことが起こってしまうのか?考えて考えまくった結果、その理屈が分かっちゃったんです。どういう仕組みでみんなが退屈な時間を過ごさなきゃいけなくなるのか。どういう心理になっているのかってことが分かった。だから、その仕組みを説明して、その逆をやればいいって感じで講座を進めていこうと思っています。これはけっこうおもしろいんじゃないかな。誰も言っていないと思うし、説得力には自信があります(笑)。

さっきも言いましたけど、サッカー経験がなくてもサッカーはもっと楽しく見られます。サッカーをもっと知りたい!と思っても挫折しちゃう人が多いのは、疑問を持ったときに答えられる人がいないからでしょう?そもそもちゃんと教わってもいないし。だから、挫折するのも無理のない話なんですよ。自分も「もう無理」って折れそうになりましたけど、そのハードルを越えた経験を持つことができました。なので、そのやり方を伝えたい。そういう見方を楽しむファジアーノ岡山のサポーターを一人でも多く増やしたい。そして、ファジアーノ岡山を日本で1番サッカーを楽しんでいるサポーターがいるクラブにしたい。その目標のために、これからも講座の製作を頑張っていきます!

〈続〉
後編は現在の発信や活動についてお聞きしました。
2月12日19時にアップ予定です。お楽しみに。
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著者プロフィール

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