「真逆だから、補い合える」夏冬パラ出場夫婦のリアル対談
【photo by X-1】
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西田 杏(にしだ・あん)|水泳
水泳(50mバタフライ)で東京2020パラリンピックに出場。パリパラリンピック出場を競技生活の集大成と位置づけ、練習に励んでいる。趣味は漫画を読むこと。遠征の必需品はイカとナッツ。
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森 宏明(もり・ひろあき)|クロスカントリースキー
元野球少年。クロスカントリースキーで北京2022パラリンピックに出場。新聞社の事業部でバリバリ働きながら、2026年のミラノ・コルティナダンペッツォ大会を目指す。両足義足で陸上競技にも挑戦。
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森 宏明(以下、ヒロ):出会いはJPC(日本パラリンピック委員会)の新人を対象とするアスリート研修会でした。
西田 杏(以下、アン):私は高校生のときから海外のレースに出場しているので、新人?という感じだけど、20代前半だったということで研修の対象になって。(隣の森選手を指さしながら)こっちは本物の新人(笑)
ヒロ:アイスブレイクで話したときから面白い子だなという印象でした。自分のプロフィールにひとつだけ嘘を混ぜて紹介し、ウソを見極めるというお題だったのですが……彼女、18歳って言っていました(笑)
アン:でも、話しているうちに、同い年だと知ってめちゃくちゃ嬉しくて。つい「同い年!」って言っちゃったんです。
ヒロ:嘘をつかなきゃいけないのに、自分で白状しちゃうところがなんというか自分の中でツボでした。
アン:よく周りからは5歳くらい下に見られます。大人っぽくなりたいです(笑)
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アン:実は、めちゃくちゃ真面目な人だから、私には合わないかなって思っていたこともありました。初見がスーツ姿っていうのもあったのかもしれませんが(笑)
ヒロ:確かに……性格とか真逆なんですよ。
アン:気が合わないわけじゃないけど、「逆だな」っていうのはあります。
ヒロ:例えば、僕、すぐに迷子になるんです(笑)
アン:そう、地図も読めないの(笑)
ヒロ:僕はスマホの地図を読むのもひと苦労で、どうにかこうにか目的地にたどり着くという感じなのに、アンちゃんは頭に地図が入っているみたい。
アン:以前、山梨に旅行に行ったことがあるんですが、私が運転を担当したので、「地図係はよろしく」っていうことになったんだけど、もう途中から「いいや」ってなりました(笑)
ヒロ:結局僕は「飲み物係」になりました。
アン:なにそれ。
ヒロ:あと「BGM係」ね。
アン:なんというか、私の方がざっくりしていてO型っぽいかも……ヒロくんのほうがA型というかんじで気が利く(笑)
ヒロ:いやいや、そんなことないよ!
アン:彼は女子力が高くて、出かけるときに洋服の裾や襟を整えてくれます。おまけに、虫が嫌いで……よく怖がっています。
ヒロ:あ、それ取材で言っちゃうの? 虫は本当に苦手なんですよ。
「相手の尊敬するところは、他人に対して優しいところです」。レースで優勝した際の景品も次世代の若手に譲ってしまうそうです 【photo by X-1】
ヒロ:僕は整頓したいので、アンちゃんが合宿で家にいないときがチャンス!とばかりにびしっと片づけます。
アン:遠征から帰ると、スーツケースの中のものを全部バーンと出さないと気が済まなくて。で、出しっぱなしなんです。
ヒロ:「そろそろ片づけを……」と言ってみるんですが、結局僕が片づけます。
アン:水泳の練習で夕ご飯作り終わる時間には、もう“HP0”(体力ゼロ) なんで……!
ヒロ:僕たちは、お互いに足りない部分を補い合っているというか。それでバランスが取れているのかもしれません。
合宿や遠征も多く、自宅で一緒に過ごす時間は多くありません。そんなふたりが大切にしているのは食事の時間です。
ヒロ:ふたりが合うなって思うのは、食生活ですね。
アン:どっちもお肉が苦手で野菜が好きだよね。
ヒロ:トレーニングや仕事で本当にお互いの時間が合わないんです。一緒にゆっくりする時間がない分、一緒にご飯を食べる時間を大切にしています。
アン:朝ごはんは、時間を合わせてくれています。
「僕の実家の卵焼きも砂糖が入っていました」(森選手)「ひとり分よりふたり分の方が、料理もやる気が出ます」(西田選手) 【photo by X-1】
アン:そう。出汁のほかに、お砂糖と醤油も入れます。母から教わったのですが、めっちゃキレイに巻けます!
ヒロ:アンちゃんはお義母さんとすごく仲いいんですよ。
アン:料理のレシピを知りたいときは、ネットで検索するより、母に電話します。それで、うまくできたら写真を撮って母に送るんです。
自転車が好きなのは数少ない(?)共通点。一日オフの日は、電動アシスト付きスポーツバイクで都内を走ります 【photo by X-1】
ヒロ:あるとき、僕がスキーのことで弱音を吐いたことがあるんですが、「え? なに? それでパラリンピックを目指すの?」みたいにボロクソに言われて……。それ以降、あまり話さないようにしています(苦笑)
アン:競技のことだけはちょっとダメだね。私はただやっているだけの人が嫌いなんです。明確な目標がないと応援できない。
ヒロ:おっしゃる通りです。
アン:競技のことになると、私も熱くなっちゃうから、あまり競技の話はしないようにしようねって話しています。
ヒロ:彼女は本当に芯が強くて。なにがあっても競技中心のスケジュールを崩さず、決めたことを延々とやるんです。
アン:そりゃそうでしょう。パラ界では私の方が先輩です(笑)
ヒロ:それでも、北京パラリンピックのときは「楽しんでね」という感じで送り出してもらいました。パリは……ぜひ現地へ! アンちゃんの勇姿を観に行けたらいいですね。
最近、のどかな田舎で暮らすのもいいなって思います。一軒家のマイホームに憧れますね」(西田選手) 【photo by X-1】
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※本記事はパラサポWEBに2023年2月に掲載されたものです。
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