春を待つ94期生〜桑山 紗月

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【<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>】

 コロナ禍の難しい調整を克服。2023年、プロ2年目のスタートを切る。21年11月、29.2倍という、狭き門を潜り抜けた94期生は逸材揃いーとの評判が高い。

 くわやま さつき=1998年1月20日、千葉県佐倉市出身

 アスリートを連想させる恵まれた体形。それでいて表情は、にこやかだ。親しみやすい。4回のプロテスト受験を経て、昨シーズン、待望のプロデビューを果たした。

 ステップ・アップ・ツアー第4戦の九州みらい建設グループレディース窓乃梅カップで、待望の初優勝を飾る。大会最終日の猛チャージは強烈なインパクトがあった。

 「最後の2ホールで連続バーディー。最終18番、3メートルのバーディーパットが決まった。下りのストレートラインです。練習を繰り返していたから、ドキドキせずにストロークができた」という。さらに、「どうしてかわからないけど、最終日はすごく調子が良かった。22年のベストラウンド、ベストスコアです」と振り返っている。

 それはそうかもしれない。前週、大分への遠征直前で新型コロナウイルス感染が判明。1週間のホテル療養を経ていただけに、決して満足いく状態ではなかった。ところが、悪いことの後には良いことがーの例え通り、慶事が訪れる。

 とはいえ、良いことばかりが続かないことも勝負の世界。優勝後、左手首を故障した。「かなり手首へ負担がかかっていたようです。痛みでクラブが握れない。トレーニングは続けたものの、3カ月ぐらいラウンドはもちろん、試合もお休みでした」と、ため息まじりに話す。

 ただし、ただ静養していただけではなかった。ケガをするには原因があるのは自然の摂理。「治療してくださった先生、整体師さんなどから、手首の構造、体のしくみを教えていただきました。また、個人でもさまざまな体のことについて、猛勉強。これは、いい機会ーととらえ、ケアの方法などを学んだことは一生の財産になります。プロは体が資本。もう大丈夫とオッケーが出て、練習を再開した時、痛くない体でプレーができる幸せをかみしめました」と続けている。

 ところが、十分に注意を払っているようでも、不慮の事故に見舞われることも…。昨年末、23年シーズンの出場権がかかる大一番、QTファイナルステージへ調子をあげていたが、会場までの移動中、こんなことがあった。

 「駅で左足首をねんざ。じん帯損傷のような感じになった。それでも、あきらめるわけにはいかない。テーピング、サポーターをして完走はしたものの、頑張ったねーの成績で終わった。あれだけ、つらいリハビリをこなしてきても、最後まで悔しいままです。私、年女だったのに…」と、苦笑しながらすこしだけ恨み節を漏らす。

今季、QTランキングは79位。22年の例で第1回リランキングまで最も順位が繰り下がったのはアース・モンダミンカップの64位だった。残念ながら、JLPGAツアー出場は難しい。もう一年、ステップでーと腹をくくった。

 「ステップ2勝以上をあげ、24年JLPGAツアー前半戦の出場権が得られる賞金ランキング2位以上を目標にします」といい、名前の由来にふれ、「月は暗いところを明るく照らす。母が、そんな人になってほしいという願いから、糸へんの紗を頭につけ、紗月になったそうです」。ちなみに、出身は千葉・佐倉市だ。「長嶋茂雄さんと同じ小学校を卒業しました。皆さん、佐倉といえば必ず長嶋さんと同じだ、とおっしゃいます」と説明する。長嶋さんを太陽と、たとえる人も多い。前向きな性格、笑顔は、郷土が与えてくれた宝物だろう。

 「中学までバレーボール部。ゴルフをはじめたのは高校入学からです。ヘタでした。高校3年でようやく全国大会へ出場がかなった程度。だから、他の選手と違い、キャリアが浅い。ゴルフ一筋ではなく、違うスポーツを経験したことを私、強みにします」。誰よりも、自身の可能性を信じている。

(青木 政司)

  【<Photo:Yoshimasa Nakano/Getty Images>】

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