鹿島アントラーズの2023シーズン始動にあたって

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チーム・協会

【鹿島アントラーズの2023シーズン始動にあたって】

【これはnoteに投稿されたタケゴラさんによる記事です。】

これ以上ない陣容

 オフシーズンの補強動向を見て、思ったことである。昨季もタイトルを逃し、4年連続の無冠に終わったチームは積極補強に動いた。昨季懸案されていたセンターバックにはかつて一時代を築いた昌子源と植田直通の2人が帰還。三竿健斗が抜けたボランチには町田から若い佐野海舟を加え、さらにサイドアタッカーにスピードスターの藤井智也、前線には実力者の知念慶が加入。垣田裕暉や染野唯月といった武者修行に出ていた面々も帰ってきたことで、チームの選手層は一気に厚みを増した。

 34人という人数やFW6人という大所帯ぶりは、通常で考えると明らかに多すぎる人数である。どんなに人数が増えても試合に出られるのは11人+αだし、紅白戦をやった時にも余りの人数が多くなってしまう。マネジメントの部分での不安は残るが、どうやらこの状況は岩政大樹監督の中でも想定内だった模様。多くの人数に新たなスタイルを感じ、吸収してもらうことで、より多くの選手の戦術理解度を高めようとする狙いがあるのかもしれない。少なくとも、何も考えずにそうしたわけではなさそうだ。

 これで逆に懸念なのは、陣容が整いすぎている分、言い訳ができなくなったことだ。陣容としては、今季タイトルを狙えそうなレベルには十分に達している。左サイドバックのバックアップだったり、強力なセンターFWだったりと言えばキリがないが、今の状態で陣容が足りないを言い訳にするには流石に無理がある状況だ。フロントとしては、今年何としてでもタイトル奪冠を目指す、という強い意志を感じるオフであったが、言い換えれば現場にとっては大きなプレッシャーにもなる動向である。

続く「新しい鹿島を作る」

 とはいえ、チーム状況としてはそこまで順風満帆なわけではない。岩政監督就任以降、特に昨季終盤は「新しい鹿島を作る」という題目の下で、新たなゲームモデルの構築に取り組んできた。以前よりも立ち位置を重視して、ボールをポゼッションしながら、サイドを流動的かつ再現性ある形で崩して、ペナルティエリアに侵入していく。この新たなスタイルを構築してベースアップさせていこうという姿勢を、昨季終盤の鹿島は見せ続けてきた。

 だが、スタイルの完成度はまだまだだし、何よりピッチでの結果に現れていないのが昨季だった。昨季はタイトルを逃しただけでなく、リーグ後半戦はわずかに3勝、岩政監督になってからは2勝に留まっており、4位という成績は圧倒的に前半戦の貯金がモノを言った形になる。昨季後半だけで言えば、鹿島は上位を争うどころか、中位や下位を彷徨い続けるチームであったのだ。

 スタイルの構築やベースアップという面は、今季の鹿島が引き続き取り組んでいくことになるだろうし、岩政監督もそれが完成に持っていけるようにやっていくシーズンだということを話している。だが、その中で具体的な結果についてはあまり触れていない。もちろん、タイトルを目指せるようなチームにしていくということは触れているが、それが今季の話なのか来季以降にも持ち越されていくのか、ということについては具体化されていないのだ。もしかしたら、岩政監督の中では今季もスタイル構築の種まきの期間になってしまうことを許容しているのかもしれない。そう考えて、あえて目標を具体化してないのかな、と予想できるわけである。

目標の乖離をどう埋めるか

 そうなると、オフの補強動向と現場での目標設定には乖離が生じてきてしまう。優勝してほしいがために積極補強に動いたけど、現場としては今季優勝できないことも許容している、この矛盾をどう解決していくかというのが今季のテーマになりそうだと思うのである。

 もちろん、新たなスタイル構築のために、今オフの補強が必要だったという側面はあるだろうし、その部分は大きい。だが、センターバックに昌子と植田を揃えて、昨季初めてフルシーズンを主力として戦った関川郁万をその競争に放り込むというのは、明らかに結果を求めてやるチームのそれである。これでスタイル構築のためだけに今季を使ってもいい、とはフロントは考えないであろう。

 個人的には、改めて今季の鹿島が目標設定を何として戦うのか、そこをハッキリする必要があると思っている。タイトルを目指すということを目標にするのは、もちろん構わない。だが、現実的にどこまでの結果をノルマとしていくのか、何ができていればスタイルは構築できたと言えるのか、このあたりを細かく設定できていないと、上手くいけばいいが、そうでなかった場合に間違いなく軋轢が生まれてきてしまう。それを避けるためにも、是非チームとして今季はこれをやらなければいけないし、これを目指していくんだ、ということをメッセージとして打ち出してほしいな、と思うわけである。

 「新しい鹿島を作る」と打ち出して、本格的に始まる初めてのシーズンだ。ここがある種の転換点になりそうなシーズンでもある。鹿島というチームがどういう歩みを見せ、そこにどう自己評価をしていくのか。注目していきたい。
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