早大競走部【第1回】花田勝彦駅伝監督 箱根事前特集『RE:』

チーム・協会

【早稲田スポーツ新聞会】

【早稲田スポーツ新聞会】取材・編集 及川知世

 優勝を目標にしながらまさかのシード落ちに終わった前回の東京箱根間往復大学駅伝(箱根)。チームの再建を図る今年、早大は新駅伝監督を迎え、革新の時を迎えた。エンジの輝きを取り戻すことができるかーー。再起を目指し新春決戦に挑む思いに迫る。

 東京箱根間往復大学駅伝(箱根)直前特集初回は、6月に就任した花田勝彦駅伝監督(平6人卒=滋賀・彦根東)。就任後初の箱根を前にし、思うこととは。また、現在のチームの状況は。話を伺った。

※この取材は12月11日に行われたものです。

全日本以降について

――箱根予選会の後の話からお聞きしていきます。まず全日本大学駅伝対校選手権(全日本)について、夏に伺った際には、「前半は上位争いをして、確実にシード権を取る」というのが目標だとおっしゃっていました。その目標は達成したかたちになるのではないかと思うのですが、改めて全日本を振り返るといかがですか

 ある程度、想定内の結果で帰ってこられたと思っています。駒沢大が非常に強く、一時は2位までは上がれましたが…やはりトップに立ちたいという気持ちがありましたので、そこが悔しかったです。また、5区、6区で少し誤算があり、それがなければ目標の総合3位以内に届いたかなとも思います。良かった面もありましたが、課題も残った大会でした。

――5区・小指卓也選手(スポ4=福島・学法石川)、6区・菖蒲敦司選手(スポ3=山口・西京)は練習が積めておらず、不安もあった中での起用だったとお聞きしました。改めて、その2区間の選手起用の理由をお聞かせください

 彼ら2人は経験も実力もあり、箱根を見据えた上ではどこかで試しておきたかったので、状態的には良くなかったのですが送り出しました。結果としてはあまり良くなかったですが、それを受けて箱根に向けて課題がたくさん見つかりました。特に菖蒲はそれ以降、苦手としていた(長い)距離もしっかり踏んで、今順調に走れてきていますので、良い経験になったと思います。

――全日本は就任以後初の駅伝でしたが、その結果を受け、箱根の目標は修正しましたか

 当初はシード権獲得となる総合7位以内を目標としていましたが、ある程度練習したことが試合で出せるようになってきたので、現時点では総合5位以内という目標を掲げています。

――上尾ハーフマラソンで、全日本の出走メンバー外の選手が好走したことについてはどう感じていらっしゃいますか

 夏場に一番走り込みのできていた伊福(陽太、政経2=京都・洛南)が非常に良いかたちで走れ、ケガでやや出遅れていた辻(文哉、政経3=東京・早実)もリクエスト通りの走りができたので、チームの層を厚くするという意味で良かったと思います。また、それに続く宮岡(凜太、商1=神奈川・鎌倉学園)、須山(向陽、スポ1=鹿児島城西)などの下級生も非常に良いかたちで走れましたので、チームとして箱根に向けて一つ良かった点かなと思っています。

――上尾ハーフマラソン後に伊福選手にお話を伺った際、全日本の頃は駅伝メンバーとは別で、一人で走るような練習を行なっていたとおっしゃっていました。それはハーフマラソンや、単独走になるようなレースを見据えてのことなのでしょうか

 集団で走るのは人に引っ張ってもらえるので楽なのですが、やはり一人で走るのは力を使いますし、実力の付く練習です。なので、伊福には予選会の後から3週間くらい1人でやらせていて、今までは誰かに引っ張ってもらうことで走れていたのが、自分の実力でこなせるようになりました。彼はこれまで、練習が積めていてもそれがなかなか結果につながらないところがありましたが、そういった練習を積むことによって自信がついてきて一気に開花したのかなと思います。

――先ほど上尾ハーフで宮岡選手、須山選手も良いかたちで走れたというお話がありました。それが16人のエントリーに影響したのでしょうか

 2人に関しては、夏までは練習が積めていなかったので、夏時点ではメンバー入りは厳しいと思っていましたが、結果を出すべきところでしっかり走りました。また、2人ともポテンシャルの高い選手なので、それを受けてエントリーに入れたかたちです。

――箱根予選会に出走した安田博登選手(スポ4=千葉・市船橋)、上尾ハーフで好走した栁本匡哉選手(スポ3=愛知・豊川)がメンバーから外れ、前述の1年生がメンバー入りした理由をお聞かせいただけますか

 安田は予選会後にコロナウイルスへの感染があり、栁本も故障があったので、エントリーの時点で比較した時に、勢いのある1年生をメンバーに入れたかたちです。

――上尾ハーフと、11月13日の日本体育大学長距離競技会がメンバー選考になったかたちですか

 選考の一つにはなりましたが、今年のチームのテーマ「1=1、練習=試合」というところで、練習を継続できた選手の中で、練習でも試合でもある程度きっちり走れる選手を選びました。

箱根に向けて

公開取材で意気込みを述べる花田駅伝監督 【早稲田スポーツ新聞会】

――続いて現在のチームの状況をお聞きします。12月11日現在のチームの状況を教えてください

 チームとしては非常に状態が上がってきていて、8割くらいまで仕上がってきています。箱根に向けての練習を11月下旬から始めて、現在は高いレベルに達している選手とまだそこに届いていない選手の2つに分けています。高い方に5、6人くらい入ってきており、目標に向かっては順調にきていると思います。

――このあとはさらに良い方向に向かっていきそうな感じでしょうか

 そうですね。現在、10区間中の5、6区間はめどが立ってきたところなので、あとの区間に自信を持って送り出せる選手が揃ってきたら、目標として掲げている往路3位以内も期待できると思います。もちろん優勝候補である駒沢大、青学大も強いので、相手の走り次第というところもありますが、ここからの3週間でチームとして目指しているものがそろって、チームの理想としている走りができれば面白い戦いになるかなと思っています。

――箱根に向けてのこの時期の調整の方法や練習は、昨年までと大きく変えたのでしょうか

 昨年は集中期間ということで一定期間かなりハードな練習をしていて、そこで故障者も出たと聞きました。今年は、全日本が終わってから少しリラックスしてケアをする期間を設けて、そこから徐々に練習のレベルを上げていっているというかたちです。

――チームの雰囲気や士気はどう感じていらっしゃいますか

 4年生の井川(龍人、スポ4=熊本・九州学院)や鈴木(創士駅伝主将、スポ4=静岡・浜松日体)は春先からずっとチームを引っ張ってきて、全日本の後に少し疲労感がありました。そういう時に下級生たちが頑張ってくれて、12月に入ってからは、鈴木や井川が自分たちもまた頑張るという雰囲気になってきました。なので、エースやキャプテンがチームを引っ張ることで下級生も勢いづいてくる、という相乗効果がうまく出てきているかなと感じます。やってやるぞ、という雰囲気になってきています。

――今現在、特に調子の良い選手や期待している選手はいらっしゃいますか

 今練習で順調にきているのは全日本で好走したメンバーです。3年生だと佐藤(航希、スポ3=宮崎日大)、2年生だと石塚(陽士、教2=東京・早実)、伊藤大志(スポ2=長野・佐久長聖)、1年生は山口(智規、スポ1=福島・学法石川)、間瀬田(純平、スポ1=佐賀・鳥栖工)、この5人は非常に順調に来ています。全日本は出ていないですが、過去に箱根の下りの経験がある北村(光、スポ3=群馬・樹徳)も順調です。井川や鈴木も調子を戻してきています。言い始めたらキリがないですが、他のメンバーも含めて順調に上がってきているかなと思います。

――先ほどチームの雰囲気は下級生が上げている、というお話がありましたが、全日本を走った下級生4人が中心でしょうか

 そうですね。今言った1、2年生の4人というのはチームの核になりつつあるので、そういった部分でチームとしての雰囲気も良くなっているかなと思います。

――今後、箱根までに必要になってくることや、今後の課題を教えてください

 ポイント練習は残り数えるほどしかないので、まずそれをきっちりこなすというところです。あとは、またコロナウイルスが流行ってきていますので、感染症対策をするということや、チームとして調子がいい時こそ少しの油断がケガにつながることもあるので、そのあたりの最後の詰めをしっかりやれればと思っています。

――就任以後初の箱根となりますが、監督としての意気込みをお願いします

 ようやく私自身もチームの1ピースとして一つになれてきたので、選手たちと一緒に箱根駅伝で力を出したいなと思っています。また、本当に早稲田の応援は多く、たくさんの方が復活を期待しています。やはり早稲田となると優勝などの高いレベルの期待がかけられますが、まずは今年に関してはそこにつながる第一歩となるような結果が残せればいいかなと思います。

――ありがとうございました!


◆花田勝彦(はなだ・かつひこ)

1971(昭46)年6月12日生まれ。滋賀・彦根東出身。平6人間科学部卒。1994年日本選手権5000メートル優勝。アトランタ、シドニー五輪日本代表。2004〜2016年上武大学駅伝部監督、2016〜2022年GMOインターネットグループ・アスリーツ監督。2022年〜早稲田大学競走部駅伝監督。
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著者プロフィール

「エンジの誇りよ、加速しろ。」 1897年の「早稲田大学体育部」発足から2022年で125年。スポーツを好み、運動を奨励した創設者・大隈重信が唱えた「人生125歳説」にちなみ、早稲田大学は次の125年を「早稲田スポーツ新世紀」として位置づけ、BEYOND125プロジェクトをスタートさせました。 ステークホルダーの喜び(バリュー)を最大化するため、学内外の一体感を醸成し、「早稲田スポーツ」の基盤を強化して、大学スポーツの新たなモデルを作っていきます。

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