早大スケート部フィギュア 西山が逆転のFSで全日本出場を決める!それぞれが課題や収穫を得た大会に

チーム・協会

【早稲田スポーツ新聞会】

東日本選手権大会 11月5日 ALSOKぐんまアイスアリーナ
【早稲田スポーツ新聞会】記事 佐伯栞、吉本朱里 写真 吉本朱里

 大会2日目、ショートプログラム(SP)の翌日に行われた男女フリースケーティング(FS)。12月に行われる全日本選手権の最終選考会ということもあり、特別な緊張感が前橋のリンクを包んだ。女子FSではSP2位の川畑和愛(社3=沖縄・N)が総合8位となり、惜しくも全日本選手権の出場権を逃した。男子FSでは西山真瑚(人通3=東京・目黒日大)が迫真の演技でSP10位から総合4位と順位を大きく上げ、見事全日本選手権への切符を手にした。

★川畑は悔しい演技…馬場、木南も課題を明確に(女子FS)

 5日に行われた女子FS。着物を連想させるような和の衣装に身を包んで登場した木南沙良(人通2=東京・日大一)はコーチと言葉を交わした後、ポジションについた。披露するプログラムは『SAYURI』。重低音の弦楽器の音楽にのせてしなやかに滑り出した。冒頭の3回転トーループ+2回転トーループのコンビネーションジャンプを流れるようにきれいに着氷。続く3回転フリップは回転不足で着氷し、ダウングレードの判定に。3回転トーループでも転倒してしまうミスが出るが、その後の2回転アクセルは確実に着氷する。腕を大きく使って和の世界観を表現し、上品で伸びのあるスケーティングも見せる。変調した演技後半、リズムに乗って、ジャンプを次々と決めていく。1つ転倒があったものの、後半にかけて力強さを増す滑りを見せた。FSの得点は73・13 点。総合得点は114・12点で18位となった。「今年取り組んできたことが東日本の舞台でどのように評価されるのか知るために、今できる100%の演技を目標に」と、強い気持ちで今大会の演技に臨んだ木南。完璧な演技とはならなかったが、「スピンのレベルの取りこぼしなどの課題も明確になった」と語ったように、充実した大会となったはずだ。今後、さらに完成度の高い演技に期待したい。

FSで演技をする木南 【早稲田スポーツ新聞会】

 SP18位の馬場はるあ(社3=東京・駒場学園)は第3グループに登場。赤と黒の力強さを感じる衣装を身にまとった馬場はコーチの言葉に頷き、緊張した面持ちでポジションについた。プログラムは『Never Go Back / My Immortal』。重厚な音楽にのせて体を大きく使い、会場を曲の世界観に引き込んでいく。冒頭の2回転ルッツを着氷し、続く3回転サルコウも流れるように着氷した。順調にジャンプを決めていく馬場だったが、続く3回転トーループで着氷に乱れがあり、後半の3回転サルコウでは転倒してしまう。中盤以降ミスが見られたが、曲の盛り上がりとともににキレのあるステップを刻み、力強さや気持ちが伝わる演技を披露した。また、最後の3連続のコンビネーションはきれいに着氷。SPでミスがあったスピンではレベル4を獲得した。ジャンプに乱れはあったが、スピードを保った演技を見せた馬場のFSの得点は81・53点。SPとの合計で126・64点となった。あまり調子が良くなかったという6分間練習を引きずらずに演技をできたという手応えを感じながらも、「後半で集中力が途切れてしまった」と課題も見つけた。今後のさらなる成長に繋がる大会となったはずだ。

FSで演技をする馬場 【早稲田スポーツ新聞会】

 前日のSPで2位と好発進していた川畑。しかし、FSには不安を感じていたという。調子が芳しくなかった中、臨んだ演技だった。ゆっくりと時間をかけてスタートポジションにつき、穏やかな笑顔で『ヴァイオリン協奏曲』の演技をスタートさせた。勢いよく助走に入り、最初に挑んだのは3回転ルッツ。SPでは決めていたジャンプだが、転倒してしまう。そこから続く2本の3回転ジャンプでも転倒。苦しいスタートとなった。しかし、美しいスパイラルから跳んだ2回転フリップは着氷。そこからは調子を戻し、2回転アクセルからのコンビネーションジャンプや2回転アクセルなどを降りた。東京選手権や東日本学生選手権の演技ではミスが出ていた後半のジャンプをまとめると、川畑の魅力が詰まったステップを披露。終始柔らかな表情で、伸びやかなスケートと可動域の広い上半身の動きでヴァイオリンの音色を表現した。最後のスピンを回り切り、ポーズを決めると、浮かない表情を浮かべた川畑。ジャンプのミスが響き得点を伸ばせず、最終順位は8位。上位7人が進出する全日本選手権の出場権にあと一歩手が届かない結果となった。今大会について、「全日本選手権に出場できず悔しい気持ちを感じるのと同時に、調子が良くない中でも緊張から逃げずプログラムを滑り切ったことに成果も感じている」と振り返った。ジャンプの調子が戻らず、苦しい演技が続いている中でも、大会ごとに成果を感じながら前を向き、自身のスケートと向き合っている。演技後に川畑の笑顔が見られる日は、そう遠くはないはずだ。

FSで演技をする川畑 【早稲田スポーツ新聞会】

★西山が逆転で全日本への切符を掴む!廣田も演技後には笑顔(男子FS)

 5日夜に行われた男子FS。廣田聖幸(スポ2=千葉・東邦大東邦)が今シーズン最後の『ロケットマン』の演技に臨んだ。「体も良く動いていて、ジャンプも普段の練習では考えられないほど調子が良くて自信を持って跳ぶことができた」と語った通り、冒頭の3回転フリップを着氷すると、その後もジャンプを次々と決めていく。ゆったりとした洋楽に合わせ、ニースライドやウォーレンといった技も披露した。曲調の変わり目で勢いよく跳んだ3回転トーループも着氷すると、プログラムが楽しげな雰囲気に変わる。リズムに乗り、丁寧に刻んだステップではSPから引き続きレベル3を獲得。疲れが出る演技後半に跳んだ3本の連続ジャンプは、わずかに着氷が乱れるもしっかりと回り切り、まとまった演技を見せた。演技直後には頷きながら笑顔を見せた廣田のFSの得点は85・45点。キスアンドクライでは「もうちょっと」と言葉にした。ジャンプがなかなかはまらず、悔しい結果となる大会が続いていたシーズンだったが、「ベストの演技をしたい」と語っていたシーズン最後の大一番で満足のいく演技を披露し、自身が目標とする点数まであと少しという結果を出した。来シーズン以降のさらなる飛躍に繋がる大会となったはずだ。

FSで演技をする廣田 【早稲田スポーツ新聞会】

 シングルスケーターとして最初で最後の全日本選手権への出場を目標として掲げていた中、前日のSPで10位と大きく出遅れてしまった西山。全日本選手権への切符を掴むことができるのは、シニア男子のカテゴリーにエントリーした20人中たったの4人。厳しい状況の中、演技をすることとなった。6分間練習では、何度も自身を落ち着かせるような仕草を見せていた。迎えた決戦のFS。第3グループ1番滑走で、『New World Symphony / Anthem』の演技が始まった。穏やかな表情で滑り始めると、プログラムの流れを作る冒頭の2回転アクセルをきれいに着氷。続く3回転フリップ、3回転ループと、SPで回転が抜けてしまったジャンプをゆったりとしたピアノの音色に合わせて決めていく。後半の3回転ループでは手をついてしまったが、3回転サルコウからのシークエンスジャンプも含め、得点が1.1倍となる大事な場面で全てのジャンプを着氷した。プログラムのクライマックスでは、ボーカルに乗せて細やかなステップと伸びやかな滑りを見せ、力強く最後のポーズを取った。SPとはうってかわって、大きな過失なくプログラムを滑り切った西山。演技直後に見せた感極まったような表情からは、想像を絶する緊張感とプレッシャーの中の演技であったことが感じられた。逆境と戦い、強さを見せた西山の得点は127・63点。FS1位で総合順位を4位まで上げ、見事全日本選手権への出場権を獲得した。全日本選手権は12月に、有観客で開催される。氷上で圧倒的な存在感を放ち、観ている人を魅了する西山のスケートがたくさんの観客の前で披露されることとなる。

FSで演技をする西山 【早稲田スポーツ新聞会】

 東日本選手権に向け、プログラムを磨き上げてきた早大フィギュア部門の選手たち。笑顔で大会を終えた選手も、悔しさを滲ませた選手も、この舞台で得た経験を次に繋げていくだろう。

結果

▽女子

川畑和愛
 
SP 2位 55・03点
FS 10位 84・76点
総合 8位 139・79点



馬場はるあ
 
SP 11位 45・11点
FS 12位 81・53点
総合 11位 126・64点



木南沙良
 
SP 19位 40・99点
FS 17位 73・13点
総合 18位 114・12点


▽男子

西山真瑚
 
SP 10位 49・49点
FS 1位 127・63点
総合 4位 177・12点



廣田聖幸
 
SP 14位 42・34点
FS 16位 85・45点
総合 15位 127・79点

コメント

▽女子

川畑和愛(社3=沖縄・N)
――SP後、どのようなお気持ちでFSの演技に臨まれましたか
 SPでは自分ができることをできて安心した気持ちでした。FSは普段の練習から完成度が低かったので滑る前から不安がありました。前半のジャンプは崩れてしまいましたが後半はまとめることができたと思っています。
――今大会全体を振り返って、今のお気持ちをお聞かせください
 全日本選手権に出場できず悔しい気持ちを感じるのと同時に、調子が良くない中でも緊張から逃げずプログラムを滑り切ったことに成果も感じていて、はっきりとした言葉にするのは正直難しいです。とりあえずは、SPとFSを無事滑り終えることができてホッとしています。

馬場はるあ(社3=東京・駒場学園)
――SP後、どのようなお気持ちでFSの演技に臨まれましたか
 今自分が出来ることをしっかり決めること、ショートの反省点を改善した演技、そして次につながる演技を目指しました。
――FSの演技を振り返っていかがですか
 6分間練習があまり良くなくどうなるかと思いましたが、本番では集中して6分間を引きずらず出来たと思います。後半が集中力が途切れてしまったと思うのでそこを課題として改善していきたいです。

木南沙良(人通2=東京・日大一)
――シニアに上がって初めての東日本選手権でした。今大会の目標を教えてください
 今年取り組んできた事が、東日本の舞台でどのように評価されるのか知るために、今できる100%の演技を目標に練習をしてきました。また、来年を見据えて課題の発見という目的もありました。
――今大会の演技を振り返っていかがですか
 SPとFSで計2本3回転トーループを決められたことは良かったです。スピンのレベルの取りこぼしなどの課題も明確になりました。

▽男子

西山真瑚(人通3=東京・目黒日大)
※Zoom囲み取材より抜粋
――終わってみて、感想はいかがですか
 今日は一日中、昨日の悪い演技のイメージが残っていたので、それを新しく良い演技をする自分を想像することで、嫌な記憶と戦って過ごしていたのですが、その良いイメージに近い演技を今回披露できたので、すごく嬉しいですし、安心しています。
――一晩どのように過ごされていましたか
 SPが終わってから色んな人から励ましのメッセージをもらっていたので、その言葉一つ一つを噛み締めて、信じて、良いイメージの時の演技を思い描いたり、実際の映像を見たりして、過ごしていました。
――昨日のジャンプがはまらなかったのは、怪我が原因なのか、メンタル的なものなのでしょうか
 実は、左のもも裏を肉離れしているのですが、練習は良い準備ができていて、良いジャンプを何本も飛べていたので、本番できなかったのは自分の気持ちがプレッシャーに負けていたのかなと思っています。
――肉離れに対してどういう処置をして臨まれましたか
 マッサージなどで回復できるものではなかったので、とにかくテーピング、痛み止めを飲んで練習をしてきました。
――今回のプログラムをシングル最後のプログラムとして選んだ時に込めた想いは
 実はこのプログラムを選んだ時はラストにしようと思っていませんでした。SPは2年前に作っていて、FSも昨年作っているので、シングルをやめるつもりで選んだ曲ではないです。ただその時にはもう自分のシングル人生は短いと思っていたので、やりたい気持ちを込めて滑れるプログラムにしたいなと思って選びました。
――全日本の切符が手に入るか入らないかを待っている今の心境はいかがですか(インタビュー後、全日本選手権出場が決定)
 自分がしてしまったミスは取り戻せないのですが、今日は自分ができる最大の演技に近い演技ができたと思うので、もうあとは祈って待つしかないと思っています。
――アイスダンサーとしてのプライドをシングルで見せたいと言っていたが、今日の演技はそういう想いは見せられましたか
 アイスダンサーの評価としてはあまり良い評価ができないと思います。今日はジャンプにすごく意識を向けていたので、自分が得意な表現やステップが少し疎かになってしまったと思っているので、アイスダンサー西山真瑚としてはあんまり評価できるものではないと思います。ただ、悔しいところからここまで挽回できたことに関してはスケーターの西山真瑚を評価したいなと思います。

廣田聖幸(スポ2=千葉・東邦大東邦)
――SP後、どのようなお気持ちでFSに臨まれましたか
 東京夏季大会から苦しい、悔しい演技が続いていて、東日本選手権が今シーズン最後の試合となるので、悔いのないように楽しく滑ろうと思いました!
――FSの演技直後には笑顔も見られました。演技を振り返っていかがですか
 前橋に来てから体も良く動いていて、ジャンプも普段の練習では考えられないほど調子が良くて自信を持って跳ぶことができました!また前日のSPでステップシークエンスのレベルを初めて3を取ることができて、FSでもステップに関しては練習してきたものを出し切ろうと自信を持って滑れました!SPとFSで減点でありながらもステップのレベルをどちらも3を取ることができたことがとても嬉しかったです!結果的には大きな過失なくできたことがとても大きな自信になりました!東京夏季大会のどん底のFSの演技から自己ベストまで自分を上げることができて、今シーズン最後の演技を悔いなく満足のいく出来で終われることができました!
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著者プロフィール

「エンジの誇りよ、加速しろ。」 1897年の「早稲田大学体育部」発足から2022年で125年。スポーツを好み、運動を奨励した創設者・大隈重信が唱えた「人生125歳説」にちなみ、早稲田大学は次の125年を「早稲田スポーツ新世紀」として位置づけ、BEYOND125プロジェクトをスタートさせました。 ステークホルダーの喜び(バリュー)を最大化するため、学内外の一体感を醸成し、「早稲田スポーツ」の基盤を強化して、大学スポーツの新たなモデルを作っていきます。

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