長いリハビリで手にしたタフな精神と感謝をプレーに 村松智子選手(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)

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2021年9月、日本初の女子プロサッカーリーグとして『WEリーグ』が開幕。
本企画『WE INTERVIEW』では、Yogibo WEリーグで活躍する選手1名にスポットを当て、キャリアを振り返りながらその人柄にも触れていきます。

長いリハビリで手にしたタフな精神と感謝をプレーに

コーナーキックをピンポイントヘッドでゴールネットに突き刺すーー一時期からは想像できないほどのプレーを魅せているのが村松智子だ。現在27歳の彼女は20代の大半をリハビリに費やしてきた。どこまでパフォーマンスを向上させられるか、試合の中で一つ一つ確認する作業が続き、ようやく自分のプレーを取り戻した。今シーズンはその腕にキャプテンマークを巻く。苦しい時期を越えたからこそ見えること、それが彼女の強さに繋がっていた。

ーーすっかりセンターバックのイメージが定着していますが、他のポジションの経験はありますか?
メニーナに入った頃はフォワードやサイドハーフでプレーをしていました。徐々に後ろに下がってきて、中学3年生の時にセンターバックに落ち着きました。当時の監督に「対人、結構強いじゃん」と言われてそれが嬉しくて、そこから守備に対しての意識が変わり、得点するよりも守備の方がかっこいいと思うようになりました。

ーー成長していく中で濃厚だったなと感じる時期はありますか?
個人的にここ1、2年は充実した時間を過ごしています。今思うと、メニーナからベレーザに上がった最初の年は未熟過ぎました。でも監督が辛抱強く試合で使ってくれていたんです。イワシさん(岩清水梓選手)にも怒られたり教えてもらったりしながら、なんとかこなす感じでした。当時はベレーザからたくさんの選手がINAC神戸レオネッサに移籍をした頃で、INACとの一戦は注目されていると感じました。その重要な試合の開始早々にミスをしてシュートを打たれてしまって・・・。ポストに助けられましたが、もう「ヤバいヤバい!!」とパニックでした。その時、伊藤香菜子さんが何も言わずにハグをしてくれて。それでようやく落ち着いて「自分のプレーをしなきゃ」と切り替えることができました。

ーー黙ってハグ、なかなかできないですよね。
今の私には同じような時にその行動を起こせる自信はないです(苦笑)

ーー村松選手は20代の大半をリハビリに費やしてきました。その期間をどうやって乗り切ったのでしょうか?
何回も心が折れて、サッカーを辞めようと思いました。復帰後はケガをする前と同じようなプレーはできないという話も聞いて、それも不安要素の一つだったんですけど、周りの人が自分で思う以上に「絶対に復帰できる」と言ってくれて。これで私が諦めたら違うよな、と奮い立たせてくれました。あとは、入院先の病院で整形外科以外の病気の人たちと同部屋になった経験が大きかったです。ガンで死と向き合っている人が、「村松さんがサッカーをプレーしている姿を見ると生きる活力になる」と言ってくれた時、サッカーができるだけで、もっと言えば生きているだけで十分じゃないかと感じました。

ーーその考えに行き着けたら無敵な気がします。
でも、リハビリは自分と向き合い続けなければならないので、そう思っていても難しかったです。リハビリと同じ時期にチームは何連覇もしていて、戻る場所はもうないんじゃないかという気持ちと、逆にこれだけ調子の良いチームに私も戻ってプレーしたいという気持ちが半々で、常にどっちに転んでもおかしくない中でのリハビリでした。

ーーそんな時期を経て、今シーズンはキャプテンを務めます。
年齢を考えたら、キャプテンじゃなくてもそういう役割はしないといけないとずっと感じていました。キャラ的に「ついてこい!」というタイプじゃなくて、おちゃらけていることが今まで多かったので、逆にそれを活かして若い世代とコミュニケーションを取っていきたいです。昨年までキャプテンをしていた(清水)梨紗も年下ですけど、言うことは言う姿勢を尊敬していたので、厳しく要求し合うこともしっかりやっていきたいです。

ーーではここでみなさんにしている質問を。こんなWEリーグにしていきたい!という村松ビジョンを教えてください。
WEリーグの研修ではよく「女性」がテーマになるんですけど、そこにこだわらず自由に意見を言い合える環境が大事だと思います。心の壁をなくすと言うか・・・。ピッチ上では特に上下関係は必要ないですし。
あと、最近はどうしたら“推してもらえるか”を考えます。私は劇団四季が好きで、気分転換によくミュージカルを観に行くんです。最近は「ノートルダムの鐘」を観たのですが、すごく考えさせられて、終始鳥肌が立っていました。あの舞台は役者の皆さんがすごく努力をして築いたもの、それに感動するわけじゃないですか。私たちもサッカーで、同じように人を魅了できないかなと考えています。

ーー同じような感動をベレーザの試合を見て感じてもらえると良いですね。
まさにそれですよね。ここまでの私たちの境遇とかをもっと発信して、共感してもらえるようにしていきたいです。例えば私だったらケガ。前十字靭帯を3回切っている人は結構いると思うんですよね。

ーー・・・そんなにいないと思いますが(苦笑)。前十字靭帯のケガを抱えている選手は多いですよね。
誰か一人くらいには共感してほしいんですけど(笑)。膝シートという企画ができないかなと考えています。膝のケガをしたことがある人、それで悩んでいる人、今リハビリをしている人・・・、まずはオンラインでみんなで膝トークをする。そして「そこを乗り越えて私は試合ができています」ということを見せるために、ベレーザの試合のシートを用意します。同じケガをした人の言葉はすごく大きくて、私も阪口夢穂さんをはじめ、膝の先輩たち(笑)にいろんな言葉をかけてもらいました。実際に経験をしているから説得力もあるし、本当に救われたんです。その過程を多くの人に共感してもらって、応援してもらうことに繋げていけたらと思います。

ーー今シーズンはどんなプレーを見せてもらえるのでしょうか?
熱いプレー!当たり前ですけど、最後の最後で身体を張る。五分五分のボールをこちらのボールにできるか、チームでできていない時に自分のプレーで示すことができるか。今年は特に熱いチームを作りたいです。
個人的には、2シーズン連続でセットプレーからゴールを奪えたことは自信になっています。試合の流れの中でなかなか得点できない時間は必ずあるので、そういう時にチームを助けられる得点を決めたいと思います!

(インタビュー・構成=早草紀子)

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【プロフィール】
村松智子(むらまつ ともこ)
1994年10月23日生まれ、東京都出身
DF、背番号3
中町FC → バディFC → 日テレ・メニーナ → 日テレ・東京ヴェルディベレーザ

※この記事は、WEリーグ公式Webサイト『WE LEAGUE.jp』にて2022年9月22日に掲載した内容を転載しています。
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著者プロフィール

2021年9月に開幕した日本初の女子プロサッカーリーグです。WEリーグは「Women Empowerment League」の略称で、この名称には日本に“女子プロサッカー選手”という職業が確立され、リーグを核に関わるわたしたちみんな(WE)が主人公として活躍する社会を目指す、という思いが込められています。現在12クラブが所属。ホーム&アウェイ方式による総当たりのリーグ戦「2024-25 SOMPO WEリーグ」(2024年9月14日~2025年5月17日)とリーグカップ戦「2024-25 WEリーグ クラシエカップ」(2024年8月31日~12月29日)を開催しています。

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