翔べ! チームマン・中田翔太の幕が開ける

チーム・協会

【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】

2022年4月17日、NTTリーグワン2022 第13節。クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、スピアーズ)のファン『オレンジアーミー』が待ち望んだ瞬間が訪れた。
中田翔太選手の公式戦デビューとなる交代が告げられたのだ。
入団当初からのファンも、新しいファンも、日々しのぎを削るチームメイトも、湧き上がる感情を抑えきれず、熱い思いを拍手に込める。

得点したわけでも、プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれたわけでもない。
けれども、入団4年目のファーストキャップ(※)が、この日の主役の一人となって仲間やファンの闘志に薪をくべることができたのは、中田選手がチームに貢献し続けてきたことを、誰もが知っているからだ。

中田選手にインタビューしたのは2022年8月30日。その日、ファンクラブ会員を招いて行われた公開練習の熱気を借りて、20の質問に答えてもらった。

(※ファーストキャップ:デビュー戦。ラグビーでは公式戦出場数のことをキャップと数える。)

【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】

僕らのフィットネスを高めるオレンジアーミー

1. フォワード(※)の合宿中は、どんな練習をしていたのですか?
僕たちバックス(※)は船橋に残って練習していました。体力づくりのために、ずっと走り込みなどをしていました。
ーーー公開練習はいかがでしたか?
ファンの方に見守られながらのフィットネス(※)は、選手みんな、より一層頑張れましたね。
みなさん、拍手をしてくださったりして、すごく応援されている気持ちになれました。

(※フォワード・バックス:対戦相手に向かって前方の8つのポジションをフォワード、後方の7つのポジションをバックスという。)
(※フィットネス:主に、持久力、柔軟性、スピード、筋力から構成され、強化することでプレーの質向上とケガの予防につながるとされる。ここではフィットネスを高めるためのトレーニング内容を指す。)

2. 最近のチームの雰囲気はいかがですか?
今季も変わらずに切磋琢磨しています。
良い雰囲気で練習できていますよ。

3. 入団時のスピアーズの印象は覚えていますか?
所属選手50人の中で試合出場できるのは23人なので、一人一人がライバルという、敵対心を燃やしたバチバチの雰囲気なのかなと入団前は思っていました。
入団して、練習前に行っているミニゲーム(※)でスピアーズの仲の良さを感じて、「本当に良いチームだな」と思い始めました。ミニゲームでは、僕は高橋拓朗さん(2022年引退)と同じ「TETSU」というチームです。
もちろん練習ではしっかりとやり合っていますが、オンとオフがしっかりしていて、抜くところは抜いて楽しみ、練習以外のときには本当に仲が良いところがスピアーズの一番の魅力です。

(※ミニゲーム:選手とスタッフをいくつかのグループに分けてシーズンを通して競い合う、様々なゲームのこと。)

4. 中田選手の在籍中にチームに変化はありましたか?
やってきていることは変わっていないと思います。
フラン(・ルディケ)監督の下でずっと同じことをやり続けてきて、その結果がどんどんと見えてきたのかなと思っています。

5. スピアーズに近畿大学出身選手も増えてきましたがいかがですか?
シンプルにうれしいですね。一個上の大熊(克哉)さんから始まって、僕と岩佐(賢人)が入って、紙森(陽太)も続いてきているので、どんどん、もっともっと、増えてほしいですね。

中田 翔太(なかた しょうた)/1996年5月20日生まれ(26歳)/大阪府出身/身長181cm体重88kg/大阪市立都島工業高校⇒近畿大学⇒クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(2019年入団)/ポジションはセンター、フルバック/愛称は「ショウ、ショウタ」 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】

かわいい「後輩」から頼れる「先輩」へ

6. 新人選手を迎えるときに意識していることはありますか?
どんどん声をかけたりチームの輪に呼んであげたりして、早くチームになじめるように配慮していますね。
拓朗さんや(岡田)一平さんにかわいがってもらったので、同じようなことを後輩にしてあげたいとは思っていますが、正直、できているかは分からないです(笑)。

7. チームでのご自身の役割に変化は感じていますか?
もう4年目になるので、新人のときのように上の人を見てついていくだけではだめ。
自分が引っ張っていけるような気持ちで練習にも取り組んでいきたいです。

8. 中田選手はチームの中でどんなキャラクターに見えていると思いますか?
僕はスピアーズの中でキャンプ好きと知られていて、誘ってもらったり誘ったりしますね。山崎(洋之)や白井竜馬さん(2022年引退)、他にもキャンプ好きな選手がいるので、この夏も一度行ってリラックスできました。
オフシーズンには拓朗さんに誘われてサーフィンにも行きました。久々に拓朗さんにも会えて、すごく楽しかったです。

9. 遠方のオレンジアーミーにオススメしたいおすすめのお出かけスポットは?
幕張は海沿いにあるカフェが本当にオシャレです。
様々なジャンルの大きいお店が揃っているので、時間があると寄りますね。
個人的にはキャンプグッズを買えるアウトドア用品専門店によく行きます。

同期の存在は大きな励み。左から、中田 選手、永富 晨太郎 選手、古賀 駿汰 選手。 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】

仲間に支えられて迎えた、忘れられない日

10. ファーストキャップの試合はいかがでしたか?
いや〜これは本当に忘れられなくて・・・。
試合に出ると決まったのは、その週の前半の朝6時半。
チームから試合メンバーに選ばれたと連絡が来て、目覚めた瞬間にそれを見て、飛び起きて、本当にうれしくて、そこで気合いもすぐに入って、いざ試合に出るときに、チームの声援やファンの方の応援がめちゃくちゃ聞こえて、それが本当にうれしくて、応援されていることを本当に実感できた日で・・・。
本当に忘れられない一日になりました。

11. メンバー入りが決まってからのチームメイトの反応はいかがでしたか?
チーム内のメンバー発表で名前を呼ばれたときに「頑張れ」という声をいただきました。その週はメンバー外のみんなが「何かやりたいことがあったら練習後でも付き合うから」と言ってくれたりして。メンバー入りが決まった当初はすごく緊張していたのですが、そういう言葉をいただくうちにワクワクでいっぱいになっていきました。
ーーーファンの反応はどのように受け止めていましたか?
SNSの反応が今までとは全然違っていて、応援されていることをより実感しましたね。

12. 交替を告げられたときの心境は?
後半40〜50分あたりから他の選手がどんどん呼ばれ始めたので、スタンドのフラン監督の方を見上げて「まだかな、なんで早く出してくれへんのやろ」とずっとソワソワしていました。
60分あたりにようやく声をかけてもらえて、「早く試合に出たい」というソワソワ感とワクワク感の気持ちのまま、グラウンドへダッシュで入れましたね。

13. ファーストコンタクトはいかがでしたか?
僕のファーストコンタクトはペナルティー(※)だったんですけれど(笑)。
気持ちがちょっと入り過ぎて倒れ込みになっちゃって、そこでハッとして落ち着いた感はありますね。
深呼吸して上がり過ぎていた気持ちを整えて、次のプレーに集中しました。
点を取り合い、ボールもよく動くハードな試合を自分自身楽しめたんじゃないかな。

(※ペナルティー:味方選手をフォローした際にボールより相手側に倒れ込む反則と判定された。)

14. 試合に出場できた要因をどのように捉えていますか?
メンバー外のときにも、いつでも試合に出られるように準備をしてきました。その準備がメンバー選出につながったと思います。

15. 昨季のパフォーマンスに点数をつけるとしたら?
80点くらいですね。
残りの20点には、僕としてはまだまだ、もっと試合に出たい、という気持ちを込めました。
試合に出るために、もっともっとチャレンジできる部分はあると思います。
自分の良いプレーを伸ばして今季につなげたいという面で80点です。

2022年4月17日 第13節 NECグリーンロケッツ東葛戦。後半15分にメンバー交代を告げられると、チームメイトやオレンジアーミーの拍手を浴びながら勢いよくピッチへ飛び出した。 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(ラグビー)】

左足のキックで勝利への弧を描く

16. 指導者に言われて一番刺さった言葉は?
「自分らしくプレーしろ」と言われたことです。
他の選手と比べるのではなく、自分にしかできないプレーや自分の強みにもっとフォーカスして取り組め、という言葉は支えになっていましたね。
―――中田選手の強みは「ゲインラインの攻防と左足のキック」ですね!
センターはコンタクトが大事なポジション。そこは負けないように、ゲインラインの攻防をしっかりと。
左足で蹴れる選手は少ないこともあり、左足のキックは自分の武器にしていきたいです。

17. 仲間に言われて一番印象的な言葉は?
言葉ではありませんが、このチームには助け合う文化があるので、ファーストキャップのときに「足りないことがあれば何でも手伝うよ」と気にかけてくれたことが一番うれしかったです。

18. 中田選手に最も影響を与えた人は?
両親です。
僕の望むことに一切反対せず、「やりたいんだったら、ちゃんと本気でやれよ」と言って、自由にやらせてもらえました。
高校卒業時に就職と悩んだ末に「絶対にトップリーグ(リーグワンの前身)へ行く」と決めて大学に進学したことを両親も知っていたので、スピアーズへの入団が決まったときは最初に親に報告しました。そのときにめちゃくちゃ喜んでくれて、そのことが自分も本当にうれしかったことは覚えていますね。
ファーストキャップのときも電話しました。「思い切り後悔のないように頑張れよ」という言葉をいただきました。

19. 同じポジションの高身長の選手が新たに加入すると公表されましたが、率直にいかがですか?
驚きましたが、良いライバルとして吸収できるところは吸収して、切磋琢磨して負けないように取り組んでいきたいです。

20. プレシーズンマッチを控えた今の目標は何ですか?
コンスタントに試合に出ることがまず目標です。
そのために今のシーズンが一番大事だと思います。
走り込みの時期を乗り越えて目標を達成できるように頑張ります。

ポジションを争うライバルであっても、チーム練習以外の時間であっても、進んで練習相手を買って出る。チームの全員が、そんな中田選手の姿を知っている。選手たちのSNSを通じて「助け合う文化」をうかがい知ることができるのも、スピアーズの良さの一つだ。 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

インタビュー中に何度もチームメイトやオレンジアーミーへの感謝を口にした中田選手に、「全体練習後にハイボールキャッチを教わる金秀隆選手を手伝っていた姿が印象に残っています」と伝えると、互いの個人練習を手伝う仲だと説明してくれた。
そんな風に、当たり前のように、どれだけのチームメイトを支えてきたのだろう。

今年もソワソワをドキドキで圧倒する冬がわたしたちを待っている。
稀代のチームマンが仲間のために積み重ねた時間が実り、リーグワンの舞台で翔ぶように活躍する姿に、終わらない拍手を贈ろう。
中田翔太選手の新しい幕が上がる。

It's SHOW time!



(高橋さんの「高」は正式には「はしごだか」、山崎選手の「崎」は正式には「たつさき」)

文:クボタスピアーズ船橋・東京ベイ オレンジリポーターHaru
写真:チームフォトグラファー 福島宏治
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著者プロフィール

〈クボタスピアーズ船橋・東京ベイについて〉 1978年創部。1990年、クボタ創業100周年を機にカンパニースポーツと定め、千葉県船橋市のクボタ京葉工場内にグランドとクラブハウスを整備。2003年、ジャパンラグビートップリーグ発足時からトップリーグの常連として戦ってきた。 「Proud Billboard」のビジョンの元、強く、愛されるチームを目指し、ステークホルダーの「誇りの広告塔」となるべくチーム強化を図っている。NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23では、創部以来初の決勝に進出。激戦の末に勝利し、優勝という結果でシーズンを終えた。 また、チーム強化だけでなく、SDGsの推進やラグビーを通じた普及・育成活動などといった社会貢献活動を積極的に推進している。スピアーズではファンのことを「共にオレンジを着て戦う仲間」という意図から「オレンジアーミー」と呼んでいる。

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