大型イベント「抱きしめタイ!」限定の選手紹介映像が面白すぎる! 制作秘話をたっぷりと!

川崎フロンターレ
チーム・協会

【© KAWASAKI FRONTALE】

9月10日(土)に行われるJ1第29節の広島戦のイベント「抱きしめタイ!」。タイ王国大使館全面協力のイベント開催を記念して、スタジアムの大型ビジョンで流れる選手紹介VTRを特別版でお届けすることになりました。そこで、フロンターレ映像チームがこのためだけに国を越えて、タイまで撮影へ! 大変なこともあれば、色んなミラクルもあったという企画を深掘りするべく、2017年から数々のフロンターレにまつわる映像を制作しているエレファントストーン代表取締役CEOの鶴目和孝さん(写真/右)と、フロンターレのタウンコミュニケーション部 プロモーショングループの田代楽さん(写真/左)に面白い裏話を聞きました。

インスピレーションを受けたのはEURO2020

楽しそうに裏話を話してくれた鶴目さんと田代さん 【© KAWASAKI FRONTALE】

──まず、オリジナル選手紹介をタイで撮影することになった経緯を教えてください。

田代「エレファントストーンさんとの会話の中で、EURO(UEFA欧州選手権)の話が出たところからですよね?」

鶴目「そうですね。これまでフロンターレさんの選手紹介を作らせていただいてきた中で、会う度に『こういう選手紹介良くないですか?』という話をしていました。その中で、選手の動画を撮りたいという思いがありましたが、コロナ禍の影響もあって撮れないなと…。そこでアイデアとしてEURO2020に出場したデンマーク代表の選手紹介映像をSNS上で見た時に『これだ!』ってなったんです(動画リンク/https://twitter.com/dbulandshold/status/1403726588324294656)。内容は選手が出ていないけど、色んな人がユニフォームを持って紹介したりと、とても面白い映像でした。だから、それを『いつかやりましょう!』と話して、少し経ったら田代さんから『タイで撮りたいんです』って言われて(笑)」

田代「もともと『抱きしめタイ!』のイベントを立ち上げたのは、2月で、ちょうどチャナティップ選手が加入したタイミングでした。今までまったく何もやってこなかった土地ですし、色んなフォーマットを駆使して企画を考えていました。このイベントは場外がメインとなりますが、スタジアムの中で、タイの魅力を伝えるためには、通常も演出として使用しているハーフタイムショーと始球式がポイントになります。そんな中、もう1つアクセントを加えるために欠けていたピースが選手紹介でした。だからこそ、ここでなんとしても何かを作りたいという思いに至ったんです。もちろんデンマーク代表の選手紹介も参考にしましたが、デンマーク代表の映像は自国での撮影で完結しています。我々としてはフロンターレらしさが出る映像を作りたかったのでタイの現地に行こう!と(笑)。ただ、タイに行って選手の名前を喋っているだけでは意味がないと思っていたので、選手紹介を見ることによってタイの雰囲気が入ってくるように現地の方々が目にしている景色の中にフロンターレをフィクションとして入れることを考えて企画をしていました」

鶴目「それが3月、4月のころでしたね」

田代「でしたね。本格的な話をしたのって立ち話でしたっけ?(笑)」

鶴目「いや、あれは全然違う打ち合わせだったような…(笑)。でもファン感の打ち合わせのときだったような気もします(笑)」

田代「あ、そうかもしれないです(笑)。でも、最初は絶対に金額面で100%無理ってなったんですよね(笑)」

鶴目「いまは渡航費がめちゃくちゃ高いですから」
――その状況から実現できたのは、どんなミラクルがあったんですか?

田代「ほぼ無理なことが確実だったのですが、運良く協賛の企業さんが付いてくれたことで費用面をクリアすることができました。それで改めて鶴目さんに相談をしてひとこと、『お願いします!』とだけ言いました(笑)。しかも、ファン感が終わった後で連戦もあって撮影には、僕たちスタッフはどう頑張っても行けないとなり…。もう頼れるのはエレファントストーンさんしかいませんでしたから」

鶴目「『はい』とは言いましたけど、ここは声を大にして言い“タイ”のですが、ウチのスタッフをタイに連れていくのに飛行機代が1人15万円以上かかって、宿泊代もあると…。多くの人は連れていけないから田代さんに現場の仕切りをお願いしていたのに、連戦も重なって『僕、行けないです!』という連絡があって…(笑)」

田代「もうファン感もあってパリ・サン=ジェルマン戦もあって何も考えられない状況だったんですよ。もう行くのは絶対に無理だから、とりあえず脳みそだけは使えますと(笑)。だから、プランは一緒に組んでやりました」

──これは鶴目さんがとてつもなく大変でしたね(笑)

鶴目「でも、たまたま縁があって僕は子どものときタイに住んでいたことがあったんです。あと、ちょうどウチの会社が昨年あたりからタイ事業を始めて、タイの映像制作会社と協業を始めていました。だから、出張も兼ねて一緒にやってしまえばいいじゃないかと(笑)。しかもタイでフロンターレのユニフォームをやりたい気持ちもありましたし『なんとかやります!』とタイへ行ってきました」

──話を聞いていくと、どうしてもやりたいという思いが伝わってきます。

鶴目「そうですね。どうしてもやりたいという気持ちが強かったです。やり“タイ”ということですね(笑)」

田代「タイだけに(笑)」

鶴目「絶対に面白くなることは間違いないから、お金で無理ですっていうのはイヤじゃないですか。だから『絶対にやってやるんだ』っていう思いが実現することができて、とても嬉しかったです」

『この時間があればゾウいけますよね!』(田代)

ゾウ園での撮影! とても良い映像が撮れています! 【© KAWASAKI FRONTALE】

──色んなプランを練ってタイへ行ったと思いますが、想定外なこともありましたか?

鶴目「海外だし、東南アジアなので予定通りにいかなさすぎました(笑)。予定していたところが行けなかったりとか、スコールで急に雨が降ってきたりして予定が狂いまくりました。ウチからは僕とディレクター、通訳兼コーディネーターとしてタイハーフのスタッフ3人が日本から行って、現地の撮影スタッフやドライバーの方に手伝ってもらいました。彼らは本当に良い方だし、大らかななんですけど自分たちは時間がなくて焦っていても彼らはマイペースなんです(笑)。『コーヒーを飲んでる時間なんてないから!』みたいな(笑)。日程を決めて動いているので、本当に焦ってました(笑)」

田代「それはプレッシャーも少しかけるんですか?」

鶴目「日本人なら撮影は撮りきらないといけないという共通の感覚があるけど、どうしてもほんの少し感覚が違うので、接点を探しながらやりました。その中でこっちの要求を通さないといけないんですが、そればかりになって雰囲気が悪くなったり、最悪やめられても困ります。だからすごく神経を使っていましたね」

田代「映像に関しては、事前にクラブスタッフとエレファントストーンさんがスプレッドシートにアイデアを書き込んだものを用意していました。僕らの書くものは、やや過激だったり、どんどん訳の分からないものを要求しているので、鶴目さんがコントロールしてくれます」

鶴目「まさに無茶振りでもいいから面白いと思うものを書いてくださいと要望をしました。書いてもらったうえで、宗教的にやっちゃいけないものもあります。それは本来フロンターレがやりたいタイ事業の本末転倒なところなので慎重にやりつつ、僕もフロンターレのサポーターが喜ぶものは分かっているつもりなので、そういった映像を撮影することを心がけてやっていました。結果的には、スプレッドシート通りには撮らなかったのも多かったですね」

田代「僕らも、これだけは絶対に押さえてほしいという要点だけを伝えていました。あとは現地で臨機応変に色んなものがあると思うので、それを取り入れながら。でも、時間がない中でしたが『ゾウだけは絶対にお願います!』ってパワーを掛けていました(笑)」

鶴目「ずっとチャットで『ゾウを撮りたい』『ゾウを撮りたい』ってめっちゃ来るんですよ(笑)」

田代「『この時間があればゾウいけますよね!』って(笑)。でも、一回『多分、無理だと思います』って来ましたよね」

鶴目「あまりにも時間に余裕がなくて(苦笑)。日本で例えると富士山を撮りたい、力士を撮りたいという感覚に似ているかなと思うんですけど、その辺にゾウがいるわけではありません。しかも調べてみたら結構、撮るのに時間がかかるんですよ。だから、やることを全部やって最後にゾウを撮れるかどうかだなと。それで最終日に『撮れそうだ』と田代さんに連絡しました。あれも大変だったんですよ(笑)」

田代「そうですよね(笑)。すみません(笑)」

鶴目「1時間半、2時間半くらいかけて電話でアポが取れたゾウ園に行ったんですけど…、これは海外あるあるでもありますが、ゾウ乗り場の手前のおばちゃんに止められたんです(笑)。それでタイハーフのウチの社員がタイ語で20分ぐらい交渉してくれたときに、ミラクルが起きたんですよ(笑)。おばちゃんの息子とウチの社員が同じ高校だったという繋がりがあって、『じゃあいいよ』って(笑)」

田代「なんだそれ(笑)。奇跡の繋がりじゃないですか(笑)」

鶴目「『それでいいの?』ってなりましたよ(笑)。その後に撮り始めたらスコールが降ってきて撮れないじゃん…ってなったけど雨の中で撮りました。最終的にはそのおばちゃんにタオルマフラーを渡したら喜んでくれたので良かったですね」

ゾウ園の職員の方にタオルマフラープレゼント。喜んでくれました! 【© KAWASAKI FRONTALE】

――ゾウの映像って晴れ晴れしている風景が多い中で、雨の中のゾウってというのもシュールな感じもしますね。

鶴目「それを言うと全ての映像がシュールですよ(笑)」

田代「僕らはサンプルの映像を見させてもらったんですけど、普通に爆笑しました(笑)。タイの映像も素晴らしいのと演出がくだらなさすぎる(笑)。この選手紹介映像に、色んな人とお金が動いているという構造そのものが面白いですよね」

鶴目「たしかに、面白いですね」

田代「僕らがこういうのをやるのはクラブブランディングのひとつだと思っています。一般的にサッカークラブのブランディングは欧州のようにカッコいい、クールなのが良いと言われることもあります。でも、ブランディングというのは自分たちらしさ、クラブカラーを作ることです。だからこそ、僕らプロモーションチームはクラブカラーを創出するために働いています。この選手紹介映像もあえてカッコよすぎず、面白く。フロンターレはカッコよすぎずないことを選んで、そこが親しみやすさにつながる。そしてそれを表現してくれる、実現してくれる色んな方々に支えられています」

ゾウ、ふろん太、カブレラ! 可愛い4ショット! 【© KAWASAKI FRONTALE】

──エレファントストーンさんを含めて、色んな人たちが協力してくれたからこそ実現できたものが今までもたくさんありますよね。

田代「そうですね。クラブスタッフが取材されることも多いのですが、我々はコンセプトだけを決めてその先の作業はお願いすることも多いんです。鶴目さんも含めてですが、企画を伝えると趣旨を理解して制作してくれて、僕らを笑わせようとしてくる大人が周りにいる(笑)。つまり僕らの考えのプラスαのエッセンスが加わると。これが究極のクラブブランディングだなと感じます。それが出ているのが今回の選手紹介映像だと思っています」

鶴目「僕だけではなく社内でもフロンターレってこういうのが好きだよねというのが分かってきています。選手紹介でも車屋選手も車整備工場で撮影をしたのですが、コーディネートする人たちに初めは伝わらなくて、綺麗なカーディーラー店に行くことになっていたんですけど、『車屋選手の車は整備工場のおじさんがいい!』っていうのが個人的にあって(笑)」

田代「これ、僕らは何も言っていませんからね(笑)。車のお店でとしか言っていないのに、ここまで掘り起こしてくれる(笑)」

鶴目「それで、めちゃくちゃ探してくれてアポなしで車整備工場へ行って撮影することができました。あと谷口選手はイケメンなのでギャル。だから“夜のギャル”をテーマにしました」

田代「夜のギャル(笑)」

タイの方々は「めちゃくちゃ良い人たち」(鶴目)

撮影に協力をしていただいたタイの方々。フロンターレのフラッグを持っていただきました! 【© KAWASAKI FRONTALE】

──色んな要望にも応えてくれるタイの方々は本当に温厚ですね。

鶴目「めちゃくちゃ良い人たちです。日本人はあそこまでやってくれないかな(笑)。恥ずかしがって遠慮しちゃう。タイの方はノリノリでやってくれる(笑)」

田代「意味分からないですよね。もしプレミアリーグのブライトンから日本食を食べながら『三笘薫』って言ってくれってみたいなもんですから(笑)。これもチャナティップ選手だけなら分かるけど、他の選手は関係ありますっけ?って話ですよね(笑)」

──タイだからこそできたことなのかもしれませんね(笑)

田代「そうですね。ほほ笑みの国ですからね」

鶴目「改めてタイを好きになりました」

──そういった人柄も想定して企画を組んだと。

田代「それも想定して、そういうノリでやってくれるだろうと(笑)。もちろん僕も行ったことがないわけではないのでタイならいけるだろうという確信を持ってお願いしましたから(笑)。そこまで深くは考えてなかったですけどね(笑)」

鶴目「それが面白くなるんだと思います」

田代「そうですね。深く考えすぎないことは、良い意味でウチのクラブの強いところ。普通ならお金の問題で躊躇しますし、そもそもタイでどうやって撮影するの?ってなると思うんですよね。もちろん過密日程で大変だし、やめたほうがいいんじゃない? となってもおかしくないと思います。でも僕らの場合はやってみようというクラブカラーがあります。本当に幸せなのは、そこに乗ってきてくれて、支えてくれる人たちがたくさんいること。僕らだけでクラブを作っているわけではありませんから。本当に有り難いです」

マルシーニョ選手を戦紹介映像? どんな映像に出来上がっているのか当日が楽しみです! 【© KAWASAKI FRONTALE】

──選手紹介映像はYouTubeでも配信されます。

田代「初めての試みで完全版を公開します」

鶴目「全選手面白いので期待してください」

田代「やっぱり『ドン、ドン、パオーン』がいいんですよ(笑)。あれで一気にファニーになる(笑)。映像で終わっていたら面白いけどシュールなままで終わる。それだと違うかなと。だから『ドン、ドン、パオーン』があるとお客さんの中でここなんだ、ここで笑えばいいんだと思ってくれるので良いですよね」

――当日を迎えるにあたり、どんなところに注目してほしいですか?

田代「本当に今回の映像は思った通りに作っていただきました。素直に面白いと思えたのですごく気に入っています。あとはウケるかどうか。完成するまで無茶なお願いをするのですが、裏では『いつも無理なお願いをありがとうございます』と常に思いながらやっています」

鶴目「この前の打ち合わせの時に、田代さんがエレファントストーンさんとの打ち合わせは楽しいと言ってくれて嬉しかったなぁ(笑)」

田代「あと、今回のイベントはタイの本場のカルチャーと、フロンターレなりの解釈をした「タイ」のハイブリッドです。前者はタイの国民的歌手のSTAMPさんによるハーフタイムショーや、シントン駐日タイ王国大使による始球式、美味しいグルメを楽しんでもらう。いわゆる大使館が組むようなイベントですよね」

鶴目「タイフェスですよね(笑)」

田代「それを等々力でやりますから(笑)。プラスαでクラブらしさを取り入れた海外人気番組「Got Talent」にも出演経験のある“タイ”ツ姿でおなじみGONZOさんによるタンバリンショーだったり、“タイ”タニック“体”幹”タイ”ムトライアル、“タイ”ピング対決とか(笑)。ある意味、ひとつの国をPRする中にフロンターレのエッセンスを入れるというチャレンジでもあるので、楽しみです」

鶴目「タイの方々とフロンターレを共有したいという思いがあってのイベントだと思います。おそらく現地でも話題になるだろうし、素晴らしい試みだと思います。そこに自分が関わらせていただけたことが有り難いです。だから成功したいですね」

田代「成功し“タイ”! タイだけに(笑)」

鶴目「タイだけに(笑)」

田代「締めの言葉はこれで!(笑)」

撮影に協力していただいたスタッフの方々、現地の方々、本当にありがとうございました! 【© KAWASAKI FRONTALE】

■プロフィール

【© KAWASAKI FRONTALE】

エレファントストーン
鶴目 和孝 代表取締役CEO
1979年生まれ。父親の仕事の都合で幼少期をタイのバンコクで過ごす。大学を卒業後、広告制作業に携わったのちに映像制作の世界へ。右利きと左利きが混在しまくっているクロスドミナンス。気に入った音源のレコードを集めるのが好き。2007年より川崎フロンターレのガチサポーター。家族全員でフロンターレを応援している。

【© KAWASAKI FRONTALE】

川崎フロンターレ
タウンコミュニケーション部 プロモーショングループ
田代楽
1997年生まれ。右利き。主な企画に「東京カブストーリー」「カブレラ&たかたのゆめちゃんゴールインパーティ Supported by ゼクシィ」「ボーイズビーアンビシャス」「26(フロ)周年記念特別企画「LDH JAPAN」×「川崎フロンターレ」川崎市制記念試合」など。
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著者プロフィール

神奈川県川崎市をホームタウンとし、1997年にJリーグ加盟を目指してプロ化。J1での年間2位3回、カップ戦での準優勝5回など、あと一歩のところでタイトルを逃し続けてきたことから「シルバーコレクター」と呼ばれることもあったが、クラブ創設21年目となる2017年に明治安田生命J1リーグ初優勝を果たすと、2023年までに7つのタイトルを獲得。ピッチ外でのホームタウン活動にも力を入れており、Jリーグ観戦者調査では10年連続(2010-2019)で地域貢献度No.1の評価を受けている。

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