ホークスにとっての“救世主”となるか。NPB復帰を果たした秋吉亮にかかる期待とは?

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独立リーグでの活躍が認められ、約半年ぶりとなるNPB復帰を果たした

 8月3日、秋吉亮投手が福岡ソフトバンクの一員としてマウンドに立った。5人の打者に対して、2安打(1本塁打)、2失点とほろ苦いデビューとなったが、「次の登板ではしっかりと抑えてチームの力になりたい」と前を向く。

 東京ヤクルトと北海道日本ハムで中継ぎ・抑えとして活躍し、かつては日本代表として国際舞台でも登板した右腕にとって、残るシーズンは自らの再起を懸けた、非常に重要な数カ月となることだろう。

 また、パ・リーグの優勝争いの真っただ中に位置する福岡ソフトバンクにとっても、経験豊富なリリーバーに対する期待は決して小さくはないはずだ。いわば緊急補強ともいえる今回の獲得には、当然ながら、現時点でのチーム事情も影響していると考えられる。

 今回は、秋吉投手のこれまでの球歴を紹介。それに加えて、過去の指標から見て取れるピッチングの特徴や、新天地で期待される役割についても、詳しく確認していきたい。

プロ初年度から3年連続で60試合以上に登板と、まさにフル回転の活躍

 秋吉投手が2021年までNPBで記録してきた、年度別成績は下記の通り。

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 秋吉投手は2013年のドラフト3位で東京ヤクルトに入団。大卒社会人でのプロ入りとあって、即戦力としての働きが期待されていた。そして、秋吉投手はプロ1年目の2014年から期待通りの快投を見せ、シーズン途中には抑えも任されるなどフル回転。61試合に登板して防御率2.28と安定感のある投球を見せ、NPB初年度から大いに存在感を発揮した。

 プロ2年目の2015年もその活躍は続き、自己最多となる74試合に登板。防御率2.36、6勝22ホールドという数字を残し、セットアッパーとしての役割を全うした。続く2016年はシーズン途中からクローザーを任され、10ホールド19セーブと持ち場を問わずに活躍。プロ入りから3年連続で60試合以上に登板と、そのタフネスぶりは驚異的なものだった。

 その活躍が認められ、2017年に開催された第4回WBCでは日本代表の一員としてもプレー。名実ともに日本を代表するリリーフ投手の一人となりつつあったが、同年のレギュラーシーズンでは故障もあって43試合の登板にとどまり、3年連続で2点台前半だった防御率も3点台に。2018年は登板数がさらに減少して防御率も4点台と、勤続疲労の影響が見え始めていた。

パ・リーグへの移籍初年度に復活を果たし、12球団セーブも達成

 しかし、その2018年のオフにトレードで北海道日本ハムへと移籍すると、2019年は再び調子を取り戻し、クローザーとして安定した投球を披露。故障による約1カ月の離脱がありながら、キャリア最多の25セーブを記録した。同年には史上5人目となる12球団からのセーブという快挙も達成するなど、初挑戦のパ・リーグでも持ち味を大いに発揮してみせた。

 翌年以降もファイターズの守護神としての活躍が期待されたが、2020年は開幕から安定感を欠き、防御率はキャリアワーストの6点台と不振に陥った。復活を期した2021年は防御率2.70と一定の数字を残しながら、登板はわずか10試合にとどまり、オフにはチームを離れる運びとなった。

 2022年はNPB復帰を目指し、独立リーグ・日本海オセアンリーグの福井ネクサスエレファンツに入団。ここでは18試合で35奪三振という圧倒的な奪三振力を発揮し、防御率も2.66と一定以上の数字を残した。新たな舞台で復調を印象付ける活躍を見せたことによって、7月16日に福岡ソフトバンクへの入団が決定。約半年でのNPB復帰を果たしている。

高い奪三振率を取り戻すことが、復活に向けた大きなカギに?

 次に、秋吉投手がNPBで記録してきた、年度別の指標について見ていきたい。

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 76.1イニングで81個の三振を奪った2015年をはじめ、NPBでの8シーズンのうち、奪三振率が8.00を上回った年が5度存在。通算の奪三振率も8.26と一定以上の数字であり、独立リーグでは驚異的なペースで奪三振を記録していた。総じて空振りを奪う能力が高いことは、リリーフ投手としての大きな強みと言えるだろう。

 また、東京ヤクルト時代は2015年を除いて与四球率がいずれも2点台と安定しており、奪三振が多く、与四球は少ない、という理想的な傾向を示していた。しかし、北海道日本ハムへの移籍以降は3年連続で与四球率が3点台と、やや数字が悪化していた。この点に改善が見られるかも、新天地で活躍できるかを左右するポイントとなってきそうだ。

 被打率は年によってややばらつきがあるものの、2021年には.189というキャリアベストの数字を記録。好成績を残していた2015年と2016年には、2年続けて被打率.190を記録していただけに、昨季はその時期の水準に近い球質となっていた、とも考えられる。

 また、1イニングで出した走者の平均値を示す「WHIP」の面でも、2021年は好投を見せた2019年と同様の数字を記録している。昨季の課題は持ち味の一つだった奪三振率が大幅に下落していた点だったが、独立リーグで見せた抜群の奪三振力がNPBの舞台でも発揮されれば、復活を果たす可能性は十二分にあるはずだ。

左封じのスペシャリストと組み合わせた、「一人一殺」にも期待大

 今季の福岡ソフトバンクでは、秋吉投手と同じ右のサイドスローである又吉克樹投手が、セットアッパーとして開幕から大車輪の活躍を見せていた。しかし、7月8日の試合で右足を骨折し、現在は離脱を余儀なくされている。NPB通算379試合に登板してきた百戦錬磨のリリーバーである秋吉投手には、その穴埋めとしての働きが期待されるところだ。

 また、左封じのスペシャリストである嘉弥真新也投手が防御率1.26と、前年の不振から脱して好調をキープしている点も、秋吉投手にとってプラスとなる可能性がありそうだ。秋吉投手はキャリアを通じて対右打者の被打率が低い傾向にあるだけに、左キラーとしての実績は抜群の嘉弥真投手との補完性は高いと考えられる。

 すなわち、打者の左右に応じて嘉弥真投手と組み合わせて1イニングを抑えていく、「一人一殺」に近い継投も期待できる。これまでは右の上手投げの投手が嘉弥真投手の後を受けるケースが多かったが、より右打者に対して効果を発揮しうるサイドスローの投手が加わったことによって、チームの投手運用にもさらなる幅がもたらされるかもしれない。

 加えて、現在抑えを務めるリバン・モイネロ投手の3連投を避けたい試合では、秋吉投手がスポットで9回を任されるケースも考えられる。開幕時のクローザーだった森唯斗投手が新型コロナウイルスの影響で7月31日に登録を抹消されているだけに、12球団セーブという希少な記録の達成者でもある秋吉投手にかかる期待も大きくなりそうだ。

酸いも甘いも嚙み分けた右腕が、離脱者が相次ぐチームの“救世主”となるか

 かつては日本代表としても活躍を見せた秋吉投手が、独立リーグでの挑戦を経てNPBに帰ってきた。セ・パ両リーグで確かな実績を残してきた右腕が、新たな舞台での経験を糧にして、どのような“変化”を見せてくれるかは、ファンならずとも興味深い要素と言えよう。

 国際舞台から独立リーグまで酸いも甘いも嚙み分けた百戦錬磨のリリーバーが、投手陣の離脱者続出に苦しんできたチームを助ける、文字通りの“救世主”となるか。逆境を乗り越えてパ・リーグの舞台に舞い戻った秋吉投手の、文字通りNPBへの生き残りをかけた魂の投球に、ぜひ注目してみてほしい。

文・望月遼太
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