【東京2020オリンピックメダリストインタビュー】藤田倭:謙虚な気持ちを忘れずに、ソフトボールができることに感謝して

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【東京2020オリンピックメダリストインタビュー(写真:アフロスポーツ)】

 東京2020オリンピック1周年を記念して、東京2020オリンピックでメダルを獲得した各アスリートのインタビューをご紹介します。(2021年7月取材)

藤田 倭(ソフトボール)
金メダル

■先輩たちの背中を見て

――金メダルの獲得、おめでとうございます。

 ありがとうございます。

――率直な感想を聞かせてください。

 オリンピックが始まるまでは、楽しいこともなく、苦しい思いとつらい思いしかしてこなかったので、この大会でメダルをとることができて本当に報われました。あの一瞬でそういう気持ちになれたので、本当に良かったなという気持ちです。

――今大会で、ご自身の一番良かったところはどんなところですか。

 上野(由岐子)さんの誕生日(7月22日)にバースデーアーチを打てたということは個人的にすごくうれしかったです。本当に集中して打席に入り打った1本でした。また、決勝の最後の2点目は相手ピッチャーが変わった直後のタイミングで打つことができたことで、日本に勢いをつけることができたのではないかと思っています。

――13年前の北京オリンピックを体験していた上野選手や山田選手の存在は大きかったですか。

 北京オリンピックを経験された先輩方が、あるべき姿を背中で見せてくれました。経験したことを私たちにもたくさん話してくれましたし、また私たちもその背中を見ながらあそこに追いつけるようにという思いで向上心を持ちながら、常に一緒に成長してチームを作り上げてこられたのはないかと思います。

■諦めない気持ちが大切

――無観客という誰も経験したことのない環境でしたが、実際に参加されてみてどのような感想を持ちましたか。

 無観客という点については、ソフトボール自体がすごくマイナーな競技で、普段のリーグ戦でも観客が少ない時もありますから、そのこと自体は残念ではあるもののあまり気になりませんでした。
コロナ禍でオリンピックが開催されるか分からないという不安を感じていたなかで、オリンピックが開催されることが決まりました。「テレビの前から応援しているよ」というメッセージをいただいて、それがすごく大きな励みになり頑張ることができました。

――新型コロナウイルス感染症拡大の影響で大会の1年延期が決まりました。その1年延期をどのように受け止めて過ごしたのでしょうか。

 1年延びたことで良かった部分はあったと思いますし、すごく苦しかった部分もあると思うのですが、スポーツができることにもっとさらに感謝する気持ちが増えました。当たり前のことを当たり前に行うことができない世の中になってしまったことに衝撃を受けた、というのが正直な気持ちです。ただその一方で、やるべきこと自体は変わりませんし、私たちにはオリンピックがあるということを信じて常に練習してきたので、何かすごく大きく変わったという感覚もなかったです。

――金メダリストになりました。オリンピックメダリストとしてソフトボールを愛する人、スポーツを愛している人に伝えたいことはありますか。

 13年間ずっとオリンピックとしては競技が開催されず、ソフトボールの知名度もすごく下がりましたし、人気もなくなりました。それでも信じ続けて願い続ければ夢はかなうということも実感できましたし、諦めない気持ちはすごく大切だなと思いましたね。

――ソフトボールの人気がなくなったとおっしゃっていましたが、来年には新たにJDリーグが始まります。金メダルをとって次の目標は新リーグだと思うのですが、どのように考えていますか。

 上野選手も話していましたが、オリンピックメダリストとなれば周りの見る目も変わってくるでしょうし、さらに自分自身のプレーや行動もすごく注目されると思います。謙虚な気持ちを忘れずに、ソフトボールができることに感謝して、ソフトボール人口が増えるように私たちも一生懸命プレーしていきたいと思っています。

■ソフトボールが好きな気持ちを大切に

今大会のうれしかったこととして、上野由岐子選手(右)の誕生日にバースデーアーチを打てたことを挙げた 【写真:ロイター/アフロ】

――2024年パリオリンピックではソフトボール競技は開催されませんが、2028年ロサンゼルスオリンピックはアメリカでの開催となるので復活の可能性もあると思います。ソフトボールをまだそれほど知らない人たちに対して、どのように広めていきたいですか。

 団体スポーツの魅力は、表向きに見える華やかな部分だけではありません。どんなシチュエーションでも一人ひとりが周りのことを考えなければなりません。今回の決勝も日本の強さがすごく出せた試合だったと思いますし、このようなソフトボールを続けていけば、おっしゃるような7年後の開催にもつながっていくかもしれないと思います。すごく先のことを見据えながらソフトボールをやっていてもつらくなってしまう部分もあるかもしれませんので、純粋にソフトボールが好きだという気持ちを大切にして、日々、ソフトボールに取り組んでいくことがベストではないかと思っています。

――野球の世界では、大谷翔平選手がメジャーリーグで二刀流として活躍していますが、今大会、藤田選手もソフトボール界の二刀流として注目を集めました。決勝については打者として金メダルに貢献されましたが、次は投手としても活躍したいという思いはありますか。

 そもそも、これまでに実績を積み重ねてこないと、この場にはいられないと思います。投手登録をされていることについては、自分自身もいろいろと今大会を通して思うところはありましたし、感情を押し殺している面もありました。でも、それがチームの勝利につながっていればうれしく思いますし、引き続き新リーグでも頑張りたいと思います。

――現在、日本リーグの中でもアメリカの選手たちが活躍していますね。

 日本のエースである上野投手とアメリカのエースであるモニカ・アボット投手。この2人がいるというのは、世界最高レベルの日本リーグになっていると思います。また一方で、自分たちもその二人と対等に戦える力がなければ、日本全体が強くなっていかないとも思います。海外選手のタフさやハートの持ち方などを見ていると、日本リーグにいるからこそ学べることがあると感じます。そうやって切磋琢磨して自分たちも向上していくことがベストなのではないかと思います。

――最後に、応援してくださった皆さんに一言お願いします。

 たくさんの方が応援してくださったおかげで、私たちも最後まで全力で戦うことができました。今回、ソフトボールの魅力がたくさん伝わったと思います。こんなに楽しいスポーツがあるということを皆さんに分かってほしいですし、また私たちがそれを発信していけるように今後も頑張っていきます。引き続き応援よろしくお願いします。

(取材日:2021年7月28日)

■プロフィール(東京2020オリンピック当時)
藤田 倭(ふじた・やまと)
1990年12月18日生まれ。長崎県出身。5歳からソフトボールを始める。2012年に日本代表に初選出。世界選手権やワールドカップなどに出場し優勝。14年、18年にはアジア大会に日本代表として連続出場し日本の5連覇に貢献した。21年東京2020オリンピックでは13年ぶりに金メダルを獲得、投打の二刀流選手として活躍した。(株)ビックカメラ所属。
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著者プロフィール

日本オリンピック委員会(JOC)は、「スポーツの価値を守り、創り、伝える」を長期ビジョンとして掲げ、オリンピックの理念に則り、スポーツ等を通じ世界の平和の維持と国際的友好親善、調和のとれた人間性の育成に寄与することを目的に活動しております。 JOC公式ウェブサイトでは、各種事業の活動内容をはじめ、オリンピック日本代表選手団や、世界で日本の代表として戦う選手やそのチームで構成されるTEAM JAPANに関する最新ニュースや話題をお届けします。

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