【新門司NOW】”楽しいサッカー”の証明を。藤原広太朗選手

ギラヴァンツ北九州
チーム・協会

【©GIRAVANZ】

ようやく長いトンネルを抜けた。26日にホームで迎え撃ったカマタマーレ讃岐を1-0で下し、リーグ戦では実に10試合ぶりの勝利を手にした。チーム最年長の一人、藤原広太朗選手はこの日も最終ラインからプレーで、声で、チームを鼓舞し続け、久しぶりの勝利を手繰り寄せる原動力に。

「讃岐戦は自分たちがやりたいこと、丁寧につなぐことに対してミスを恐れずにやれたんじゃないかと。得点したシーンもそうだし、やろうとしていることを全員が共有してやれたことが良かったのではないかと思います。ただ、押し込まれるシーンもあったので、そこは修正しないといけないですが、まずは一つ勝てたので前に進めるのかなと思います」

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勝てなかった9試合は先制点を奪えなかったが、前回勝利を挙げたFC今治戦同様、讃岐戦も先制点が勝利につながった。その先制点は美しい連携から生まれ、チームの特長が遺憾なく発揮された形であった。

「自分たちのスタイルを崩さないということが一番だし、ロングボールばかりになると自分たちのサッカーではなくなってしまう。選手一人一人の特長を活かしながらプレーできたのは良かった点です。それと、自分たちのサッカーにおいて先制点が試合展開に与える影響は非常に大きい。先制すれば相手が取り返さなければならず、どんどんプレッシャーに来るので、その背後を突いていけると思いますから。讃岐戦も先に点を取れたことが一番大きかったと思います」

勝利の予兆は、前節のいわきFC戦・前々節の福島ユナイテッドFC戦での戦いぶりからも見られた。それまでの試合では得点どころかシュートすら打てない状況が続いた中、上位を相手に復調のきっかけを掴めた要因とは。

「メンタル的に下位チームに負けて吹っ切れたのはあります。ただ、J3リーグはどこのチームもさほど力の差はないというのもあります。皆はどうかわからないですけど、個人的には上位チームと対戦しても敵わないなという感じはなくて。ただ、自分たちは結果が出ていないので、そこは声を大にしては言えないんですけど、自分たちのスタイルが確立できて勝点を重ねていければもう少し相手に対してどうとか言えるようになると思います。でも、どことやってもしっかり守って自分たちがビビらずにやることができれば、観ている人が楽しめるサッカー、自分たちがやっていても楽しいサッカーを体現できると感じています」

J1〜J3の全カテゴリーでプレーし、経験豊富な藤原選手だが、やはり勝てない時期が長くなるとその影響は大きいようだ。

「ずっと勝てない時期を経験したことはもちろんあります。ただ、さっきも言ったようにJ3は力の差がなく、どこのチームにも勝つチャンスはあるし負けることもあるリーグだと感じています。だから1つ勝った負けたで一喜一憂することなくやることが大事なんですが、やはり負けが続くと試合で硬くなってしまったり、ミスをしないよう消極的なプレーをしてしまいがちになったりします。この年齢(32歳)になってわかったことでもありますが、サッカー選手としてメンタルの切り替えというのは大事だなと、特にこのカテゴリーでは思いますね」

「勝てないとどうしても疑心暗鬼になって、色々な方向に矢印を向けてしまうことが多いですが、今年のチームはそれなりに自分に矢印を向けながらというか、皆若いなりに自分のことを考えながら練習に取り組めているのがいいところ。サッカー選手としてなかなか試合に出られないとメンタルの持ちようだったり、一日一日の練習がしんどくなってきたりします。ただ、いつも良い時ばかりではないし、悪い時にどれだけ自分の良さを出せるか、周りを引き上げられるかがチームの相乗効果に繋がると思う。若い時はなかなか難しいけど、自分も含めて上の選手がそういう事を促していけたらと。うちには良い選手が多いと思うし、上手い選手も多いのでもっと良くなるのではと感じています」

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“もっと良くなる”と言えば、センターバックを組む河野貴志選手のことにも触れてくれた。ピッチ外でも夫婦のように仲が良い2人の、ピッチでの関係性向上はチーム浮上にも欠かせない。

「貴志の場合は良さがはっきりしているし、その良さを出しつつ、自分の良さも出しながらという感じでやっています。すごく気を遣える選手なので、周りのカバーもちゃんと行くし、自分のプレーだけにならない選手なのですごくやりやすいですよ。けど、もっと良くなるんじゃないかなと横で見ていて思います。貴志もこれからじゃないですかね(笑)」

藤原選手個人に目を向けると、鹿児島ユナイテッドFCに在籍した昨季はケガにも悩まされ不完全燃焼で終えたが、今季はここまで安定して出場機会を得ている。だが、充実感を得るにはやはりチームの成績が伴わなければと言う。

「試合に出られているのはいいことですが、あまり勝てていませんからね…。天野賢一監督も信頼して使ってくれていますし、自分に求められていることは理解して表現しているつもりなので、その点は良いですけど勝てていないので満足はできない。いつも監督は自分の責任だと言っていますけど、結局ピッチでプレーしているのは僕たち選手なので、選手が今やらなければいけないことをやっていければ、もっと上にいけると思っています」

勝利の勢いをもって迎え撃つ次なる相手は、古巣の鹿児島。首位との対戦、そして天皇杯でのリベンジという意味でも、高いモチベーションで臨む一戦になりそうだ。

「相手は首位だし天皇杯でも負けているので、僕らは気合が入る一戦になりますが、あまり力を入れすぎずにやることも大事です。今の立ち位置を考えれば、相手は絶対勝たないといけないという心理状態でくるので、そこを逆手にとってやりたい。個人的には一回負けているし古巣というのもあるので、もちろん意識はするんですけど、讃岐戦のような試合をすれば大崩れすることはないと思う。試合の入り方と全員で助け合いながらプレーすることが大事だと思います」

前半戦は次節の鹿児島を含めて3試合を残すばかり。後半戦での大逆襲に向けて、ポイントになることは?

「チームとしては簡単に失点しないこと、そして勝てなかったとしてもいわき戦のように最悪でも勝点1を取るようなゲームにすること。個人としては失点を減らしながら、監督の目指すスタイルを体現できていければ、やってる方も見ている方も”面白いサッカー”ができると思う。どうしても負けると、『なんだこのサッカーは』となってしまいますし、『回しているだけ』と思われるけど、勝つことによってそれは変わってくるというのを讃岐戦で改めて感じました。やっている僕たちは楽しいので、それを観ている人に感じさせられるように内容と結果が伴ってくればいいと思います」

「もちろん、J2昇格を諦める必要はないと思います。富山も一気に連勝して上位に行きましたが、僕たちが対戦した時には大型連勝するなんて思っていなかった。どのチームもそういう可能性を秘めていると思うので、勝つ流れや勝ち癖は大事にしたいです」

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ところで、藤原選手といえば印象深いのが新体制発表会で行われたトークショーでの一幕。今季誰のユニフォームを購入するか悩んでいるサポーターからのリクエストにより、各選手が自らをアピールする場面があった。その中で藤原選手は唯一、自分のユニフォームではなく他の選手のユニフォームを買って、と答えたのだ。これ以外にも、事あるごとに自分にスポットライトが当たることは避け、他の選手に譲るような場面を多く見かける。

「やっぱり華やかな選手を応援してほしいですよ。点を取る選手を応援してくれたら点を取るし、チームの勝利のことを考えればそっちに行ってほしいんです(笑)。優也(高澤選手)なんて応援されればされるだけ乗るだろうし、前線はそういう選手が多いから。後ろの選手が目立つのはいいチームではないし、前が目立っている方が絶対いいチーム。前の選手には気持ちよくプレーしてもらうのが一番いいですよ。でも、生まれ変わったらディフェンスは絶対やらないですね(笑)」

もはやこの回答だけで藤原広太朗という選手がどういったパーソナリティを備えているかは伝わるだろう。目立ずとも華やかでなくとも、落ち着いたプレーと振る舞い、そして大きな声でチームを闘わせる兄貴分。勝利を重ね、目指すスタイルが観る人にとっても”楽しいサッカー”だという証明を果たし、その先の大逆転劇を目指す。

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著者プロフィール

イタリア語で"ひまわり"という意味の「Girasole」と"前進する"という意味の「Avanzare」を組み合わせた造語。ひまわりは、ホームタウン北九州市の市花で、太陽に向かって力強く伸びていく元気を象徴する。「Girasole」は、本来「ジラソル」と発音するが、ここでは「ジラ」部分を「ギラ」と読み、太陽の輝きと躍動を想起させる強い語感に。「北九州から、日本、アジア、そして世界へと飛躍すべく、常に成長・前進を続ける光り輝くチームであり続けたい」「サポーターや地域が輝き、元気になる、その象徴でありたい」という願いが込められている。

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