アストン・ヴィラの激動の2021/22シーズンを振り返る
【©︎AstonVillaFC】
プレミアリーグで虎視眈々と上位進出を狙うアストン・ヴィラの2021/22シーズンをプレイバック
しかし、シーズン前にエースが離脱から始まり、そしてプレミア昇格の功労者であった監督の更迭とリヴァプールのレジェンドの新監督就任、そして冬の移籍市場での大型補強まで、話題には事欠くことがなかった。この記事ではアストン・ヴィラの波乱万丈のシーズンを振り返る。
エースのジャック・グリーリッシュがマンチェスター・シティに電撃移籍
アストン・ヴィラでは絶対的エースだったジャック・グリーリッシュ 【©︎AstonVillaFC】
一方でアストン・ヴィラは、リヴァプールやサウサンプトンで活躍したダニー・イングスら補強した他、前シーズンでチャンピオンシップでMVPを獲得したエミリアーノ・ブエンディアと契約に成功する。なお、移籍金はアストン・ヴィラ史上最高額の3300万ポンド(約51億円)とも報じられていた。
迎えたプレミアリーグ開幕戦で、アストン・ヴィラはアウェイでワトフォードと対戦。しかし序盤に守備のミスが響き、立て続けに3失点。終盤に2点を返すが、反撃及ばず2-3で敗れてしまう。
開幕戦で躓いたヴィラだったが、2戦目のニューカッスル戦では違いを見せつける。ホーム開幕戦となったニューカッスルとの試合で、新加入のダニー・イングスが前半終了間際に鮮やかなオーバーヘッドキックを決めて先制。このゴールはファンが選ぶ年間最優秀ゴールに選出されている。そしてこの後さらに1点を追加し、2-0でホーム初戦を白星で飾ったのだ。
5連敗でディーン・スミス氏が解任
チャンピオンシップのプレーオフで優勝してプレミア再昇格を果たしたディーン・スミス監督(写真右) 【©︎AstonVillaFC】
そしてサウサンプトン戦での敗戦が決め手となり、アストン・ヴィラのフロントはディーン・スミス監督の解任を決断。チャンピオンシップからプレミアリーグ昇格までチームを立て直した功労者だったが、旧エースのグリーリッシュが抜けた後のチームの舵取りをうまくこなすことができなかった形となった。
ディーン・スミス氏が電撃解任され、後任は誰が務めるのかが注目の的となった。幸いにもサウサンプトン戦の後すぐにインターナショナルブレークに突入したため、チームの立て直しにある程度猶予がある状況ではあったものの、泥沼のチームの再建のミッションは誰にとっても非常にチャレンジングなものだったことは間違いないだろう。
後任監督としてスティーヴン・ジェラード氏を招聘
シーズン中盤からアストン・ヴィラを指揮したスティーヴン・ジェラード監督 【©︎AstonVillaFC】
新指揮官は伝統あるアストン・ヴィラの加入を喜ぶと共に、オーナーやクラブが持っているビジョンに触発されて入団を決意したと語った。プレミアリーグでの指揮経験はないジェラード氏だったが、レンジャーズではスコットランドリーグで無敗優勝を成し遂げており、彼への期待は非常に大きなものだった。
そして初陣となったブライトンとの試合、後半にオリー・ワトキンスが値千金の決勝ゴールを決めて2-0でデビュー戦を勝利で飾ったのだ。日本国内でもジェラード氏は未だに人気は健在であり、彼の就任をきっかけにアストン・ヴィラの試合を見始めた人も少なくないだろう。
冬の移籍市場での大型補強
冬の移籍マーケットでヴィラに加入したフィリペ・コウチーニョ 【©︎AstonVillaFC】
ジェラード監督は20/21シーズンはトップ10に食い込むことを目標にしていたが、冬の移籍市場で来シーズンを見据えた補強を的確に行った。何と言っても目玉は、バルセロナから獲得したフィリペ・コウチーニョだろう。1月7日にレンタルでの獲得が発表されたコウチーニョは間違いなく冬の移籍マーケットの主役だった。ジェラード監督とコウチーニョはリヴァプール時代に共にピッチでプレーした経験もあり、この二人の共闘に胸を熱くさせたファンはきっと多かったはずだ。
またコウチーニョだけではなく、ヴィラは積極的な補強を次々と敢行。エヴァートンから攻撃的サイドバックでフランス代表でもあるリュカ・ディニュを獲得。さらにアーセナルからカラム・チェンバース、そしてローマからレンタル(シーズン終了後に完全移籍)でロビン・オルセンの獲得に成功したのだ。この補強には、日本のファンも驚きを隠せず、ヴィラが後半戦の脅威になるかもしれないなどと言ったコメントがSNS等で目立つようになった。
コウチーニョの魔法、そして快進撃もチームの調子は上向かず
同じく冬の移籍市場でヴィラに加入したフランス代表のリュカ・デュニュ 【©︎AstonVillaFC】
リーズ戦では圧巻の1ゴール2アシストの圧倒的なパフォーマンスを披露する(なお、チームは3-3の引き分け)。アストン・ヴィラは2月26日に行われたブライトン戦から3月10日のリーズ戦まで3連勝勝つ3試合連続のクリーンシートを達成した。これはクラブとしては12年ぶりの快挙だった。
ただコウチーニョの魔法のようなプレーでチームの調子が劇的に良くなったかといえば、決してそういうわけではない。相変わらず上位チームには力負けをし、下位チームにも勝てる試合を取りこぼしたりすることが少なくなかった。今シーズン19敗のうち、1点差で負けている試合はそのうちの14試合を占めており、来季はその僅かな差を埋められるかがリーグ戦の鍵となるだろう。
最終節で王者マンチェスター・シティに善戦
シティ戦でゴールを決めたマティ・キャッシュ 今シーズン、ファンが選ぶ年間最優秀選手にも選出された 【©︎AstonVillaFC】
試合はボールポゼッションでシティが試合を支配していたが、この日のヴィラは集中力が高く、素晴らしい守備の強度でシティに決定的なチャンスを与えなかった。すると耐え忍んでいたヴィラがまさかの先制に成功する。前半37分に左のリュカ・ディニュのクロスを駆け上がった右サイドバックのマティ・キャッシュがヘッドで叩き込んだ。さらに後半24分には、味方ゴールキックのこぼれ球を拾ったコウチーニョが絶妙なコントロールシュートでリードを2点差に広げたのだ。
2-0となった瞬間はほとんど誰もがヴィラの勝利を確信していたことだろう。しかし現実には、この後プレミアリーグ史に残る大逆転劇を見せられ2-3で敗れてしまう。この結果、アストン・ヴィラは順位表の14位に沈み、目標としていたトップ10入りは叶わなかった。
実力ある即戦力と来シーズンへの期待
一つ目は来シーズンはスティーヴン・ジェラード監督の2シーズン目であり、フルシーズンを通してジェラード監督が指揮することになるからだ。実際にジェラード監督は11月から前監督のチームを引き継いで途中からシーズンを戦い始めたため、彼の戦術が浸透しきれていなくても無理はない。ジェラード監督も、プレシーズンでしっかりとしたチームの土台作りをするとコメントを残しており、彼の本当の手腕は来季以降にその真価が試される。
二つ目の理由は新戦力である。冬の移籍市場でレンタル移籍だったフェリペ・コウチーニョは完全移籍で買い取っており、来季以降も彼の魔法のようなプレーをヴィラのユニフォームで見続けることができる。さらにヴィラは今夏すでに二人の選手の大型補強を行なっている。フランスのマルセイユからレ・ブルーの若きホープであるブバカル・カマラとセビージャから大型CBのブラジル人DFディエゴ・カルロスをそれぞれ獲得したのだ。即戦力に相応しい二人の選手の獲得はチームにとっても大きなプラスであり、今後さらに獲得する選手も増えないとも言い難い。
これだけの事実からも、アストン・ヴィラは来シーズン開幕から注目すべきチームの一つであることは疑いようがない。クラブが目指している欧州カップ戦出場権確保に向けて、これからもスティーヴン・ジェラード率いるヴィラから目が離せない。
【©︎AstonVillaFC】
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ