【新門司NOW】闘う!引っ張る! 佐藤 亮選手の覚悟

ギラヴァンツ北九州
チーム・協会

【©GIRAVANZ】

6月12日に行われた福島ユナイテッドFC戦を1-1の引き分けで終え、8試合勝利なしと未だ苦境から脱せずにいるギラヴァンツ。とはいえ、ここ2試合は得点を挙げており、6試合得点なしの時からわずかながら復調の兆しを見せつつあるもある。その2試合で好パフォーマンスを披露しているのが、在籍3年目を迎える佐藤亮選手。福島戦では自らのシュートで得たCKから同点ゴールを挙げ、勝点獲得に貢献した。

「味方についている相手の選手をブロックする役割だったんですけど、自分のマークについていた選手も厳しく付いてきていたので、まずはそれを振り切ろうと。ただ、自分より身長も低かったし、おそらくフェイクをかければ引っかかるかなと思っていました。蹴った瞬間に空いているスペースにボールが入ってくるかもという感覚があって、相手を振り切ることもできたので、ある程度余裕をもてていました。ヘディングする時もコースを意識するよりスペースに入れたことで、シュートは入るなという感覚もありましたね。あまりヘディングは得意じゃないんですけど、最後は気持ちで押し込んだ感じでした」

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数試合前まではチーム全体でまともにボールを運べず攻撃するチャンスもなかった状況だったとはいえ、やはり前線の選手として点を取れていない事実に対し責任も大きく感じていたようだ。

「アタッカーとして点を取れないというのは情けないことだし、自分が取れていないからチームも取れていなかったという捉え方が正しいと思います。アタッカーで、自分が取れなくても他の誰かが取ってくれればいいと思っている選手はいないと思うんですけど、やはり自分が点を取ってチームを勝たせるということを常に言い聞かせていました。練習から誰よりも手を抜くことなく、どうやったらチームが勝てるのかということを考えていましたし、その意味では点を取るというのは一番大きな部分。今まで責任を感じていた部分を昨日の試合では力に変えて発揮できたと思います」

敗れはしたもののリーグでは7試合ぶりの得点を挙げた前々節のSC相模原戦。佐藤選手は2点ビハインドで迎えた後半からピッチに立った。ハーフタイムには静まり返ったロッカールームで「こんなんじゃ誰も納得しないぞ!全員で走って闘って取り返そう!」と声を張り上げ味方を鼓舞していた。その言葉を誰よりも実践し、立ち上がりから右サイドでキレのある動きからいくつもチャンスを作るなど、いつもよりさらに一段階ギアの上がった熱いプレーを見せてくれたが、これには心技両面に理由があったそうだ。

「プレーの面においては基礎技術の向上があります。京増雅仁ヘッドコーチと全体練習後にパス&トラップの練習をしているんですけど、自分が一番やりたいドリブルなどのプレーに移るまでのストレスを解消できたんです。今まではトラップや、後ろから背負った相手に対してどうボールをタッチするのかという部分でストレスを抱えていたんですが、それがなくなったことでトラップした後に相手をどう剥がそうかという次の部分に思考を持っていけているので、その変化が要因の一つだと思います。
あとはマインドの部分。ずっと勝てていない状況の中、僕自身すごく情けない思いでいます。昨季も相当悔しい思いをしてJ3に降格してしまい、今季はその分の覚悟まで背負って1年でJ2に上がらなければいけないという気持ちでいた中、これほどうまくいかない、勝てないことが続いているにも関わらず、僕自身が感じているチームへの責任感と周りが感じている責任感をプレーに反映させられていないことが嫌で…。批判ではないけれど、『なんでこの状況で走らないの?』とか『これだけ負けているのに目の前の相手に球際で負けて悔しくないの?』、『ビハインドなのに味方を奮い立たせる声がかけられないの?』というストレスがあって、ああいう声を掛けました。
戦術に対してああだこうだ言う前に、基本的なことができていないのに勝てるわけないよなとずっと思っていたので、たとえ僕1人でも変えられないかとずっと思っています。そのために自分が限界を超える必要があって、練習でもあと一歩足が出ないところでもどうにか出すようにするとか、きついけど声を出して仲間に伝えることを止めないこと、どうにかして仲間に響く声をかけられないかということを意識していました。オフ明けや試合前日の練習でも一切手を抜くことなく、調整するわけでもなく、自分の成長やチームを勝たせることだけを考えてやることが一番良い影響を与えられることだと思う。また、そうすることで自分に一番プレッシャーをかけて、周りに言っているんだから一番やらなければいけない、ミスをすれば誰よりも速く切り替えなければいけない、もし周りがミスすれば率先してカバーしてあげられるくらいのプレーをできれば、周りも僕に文句を言うことはないだろうし。『あいつがやっているから俺もやらなければいけない』と思わせられるようにすればチームは変わるだろうし、自分の価値も上がる。ひいては、チームの浮上のきっかけになると信じてやっています。ギアが上がったのは、そういうプレーとマインドの両面が重なったからではないでしょうか」

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上述したマインド面における課題は、J2リーグで苦しんだ昨季にも見られ、前キャプテンの村松航太選手らと共になんとかチームを鼓舞しようとする姿があった。だからこそ、今季は同じ轍を踏みたくない強い思いもある。

「僕が育った環境と皆が育った環境とは違うので、僕のやり方や考え方がそもそも正しいかはわかりません。でも、去年もそうだし今年もそうですけど、一人のサッカー選手、一人の男としてやるべきことをやらないとか、当たり前のことを当たり前にできないというのは納得できない。福島戦は皆走っていたと思うし、良くなってきているとは思うんですけど、まだまだ足りていないとも思う。それに誰かがやってはいけないミスをした時、もちろんそういうミスをするのはダメなんですが、文句を言うのではなく逆にその選手が次に頑張れるような声掛けをするのがチーム。厳しいことを言い合うのは練習の時だけでいいし、試合になった時には本当にチームのために闘う人が出てくるかでこれから絶対に変わってくる。自分がチームのためにやることで、いつかチームに救われる日が来ると思うし、そういう関係を作らないと去年と同じことになってしまうので、これから先も勝っていくことはできないと思います」

12節を終えた段階で今季の目標である”J2昇格”との勝点差16。残り試合数は22であることを踏まえればデッドラインとも言えるが、諦める気は毛頭ないようだ。

「J2昇格は全く諦めていないです。次は首位のいわきFCが相手ですが、相手どうこうではなく、自分たちがやるべきことをやれれば負ける相手はいないと思う。それこそ、どういうサッカーをするというよりかは、スタートから出る11人と途中から出る選手たちがピッチの中でどれだけチームの代表として出させてもらっているかという自覚をプレーに反映させられるかが、どんな戦術よりも勝敗を分ける強い要素だと考えています。皆がやるべきタスクを果たせれば絶対勝てると思うし、逆にそれができなければ永遠に勝てないと思います。どんな優れた監督がやってきても、どんな優れた戦術を用意しても、結局ベースとなるものを失っていたら勝てないし、それに早く気付かないとチームはどんどん低迷してしまう。そのことに気づく選手を増やすことが勝ちにつながる一番の近道だと思っています」

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こちらからの質問に対し、自らの考えを整理しながら想定以上の返答をくれる佐藤選手に甘え、最後の質問として「この場を通じて伝えたいことはある?」と問うた。

「自分はキャプテンや副キャプテンといった役職は担っていないし、大きな実績があるわけでもない。ただ、観ている人に闘う姿勢を見てもらうことで何かを感じてもらえれば嬉しい。プロである以上、もちろん勝ち負けは重要だし試合では絶対に勝たなくてはいけない。だけど、自分が先頭に立ってチームを引っ張っていくという覚悟はもっているので、そういう部分を見てもらえれば自分がサッカーをやっている意味というか、価値があると思っています。サポーターの人にも諦めてほしくないし、応援するかしないかは皆さんが決めることですが、応援してもらえるようにこれからも観ている人の心に響くプレーや姿勢、立ち振る舞いを目指し続けるので、付いてきてほしいと思います。もう在籍3年目ですし、どうにかチームを良い方向に変えて引っ張っていきたいので、そういうところが伝わるようにこれからもやっていきます」

ルーキーとして加入した2020シーズンから、この男が手を抜く姿は見たことがない。プロ入り後、すぐさま開幕スタメンの座をつかみ、J初ゴールも早かった。だが、上り調子の時に限って見舞われる故障や特徴を発揮できないチーム事情もあり、消化不良が続くプロ生活であろう。ただ、どんな逆境もすべてパワーに変え、苦しむチームの救世主になってくれるはず。周りにどう思われようが、溢れんばかりのチーム愛と責任感で突き進もうとする熱血漢に、そんな期待を抱かずにはいられないのだ。

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著者プロフィール

イタリア語で"ひまわり"という意味の「Girasole」と"前進する"という意味の「Avanzare」を組み合わせた造語。ひまわりは、ホームタウン北九州市の市花で、太陽に向かって力強く伸びていく元気を象徴する。「Girasole」は、本来「ジラソル」と発音するが、ここでは「ジラ」部分を「ギラ」と読み、太陽の輝きと躍動を想起させる強い語感に。「北九州から、日本、アジア、そして世界へと飛躍すべく、常に成長・前進を続ける光り輝くチームであり続けたい」「サポーターや地域が輝き、元気になる、その象徴でありたい」という願いが込められている。

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