福田 正博の視点:浮かび上がった「9番」不在の課題。勝利にこだわるのであれば、大胆な采配があっても面白かったが...【ACL 浦和vs大邱】
【©J.LEAGUE】
浦和は大邱との第2戦、チャンスを作れるもののノーゴールに終わりました。今季の傾向であり課題が、この試合でも顔を覗かせました。
この日のメンバーに関して言うと、「9番」(ストライカー)が見当たりませんでした。最後の仕上げのところにひとりほしかった。公式戦初先発のアレックス シャルクは1.5列目やサイドのスペースを活用するタイプで、「9番」とはやや異なるのかなという印象を受けました。
もちろん、引き分けでもいいと徹底してゴール前と中央を固めてくる相手だと、1トップの選手が仕事をするスペースが消されてしまいます。スペースがないなか、運動量を活かして隙を突いていくタイプだと言えるシャルクは、その相手の守り方に非常に難しさを感じていたと思います。
そうしたなか、この日は(ダヴィド)モーベルグと酒井 宏樹のいる右サイドで圧力を強め、3日前の大邱との第1戦からはるかに改善され、幅も取り、いいポジションも取って攻撃ができていました。パスワークに固執するだけでなく、モーベルグの突破も生かすなど攻撃に工夫は見られました。そこにもう少し江坂(任)が絡めてくると、攻撃の迫力が生まれてきたのだと思います。大邱との2試合、スペースを消されたなかで江坂が思うようにプレーできませんでした。その結果、ある意味、モーベルグしか迫力を生み出せなかったという状況になってしまいました。
しかし後半モーベルグが対応されてしまった時、なかなか変化を付けられませんでした。どのように再び圧力を強めるのか。モーベルグの「一発」に懸けていたのも頷けますが、終盤疲れが感じられただけに、右MFを代えても良かったのかな?と選択肢としては感じました。結果はスコアレスドローで、(キャスパー)ユンカーがいれば、という展開になってしまいました。
浦和がACLで勝ち進んできた過去のシーズンを振り返ると、実はその当時のチームはいずれも守備にバランスの軸を置いていたチームでした。優勝した2017年はペトロヴィッチさんからシーズン途中に堀 孝史監督に代わり、攻撃に比重を置いていたところから守備的な戦いに移行し、優勝を果たしています。準優勝だった2019年も軸は守備に置かれたチームでした。だからこそ今大会、主導権を握った戦いの時、どうなるのかと楽しみにしていました。
ただ、これまでのところ、リーグ戦と同様に勝ち切れずにいます。獲得してきた外国籍選手が「違い」を見せてくれていますが、それだけですべての問題が解決されたわけではないという現実も突き付けられています。
この日の大邱戦は、まさに「バス2台でゴール前を固められる」というような展開だったと言えます(枠内シュートは浦和の8本に対し、大邱が0本)。それでもこの一戦で「勝利」が必須と捉えるならば、綺麗に崩すことにこだわってきたなか、クロスを活用する際、前線に高さを加えるのもひとつの方策でした。何としても「勝ちたい」のであれば、大胆な采配があっても面白かったと思います。とはいえ、立ち位置とスペースで相手を上回っていくこだわりが、リカルド ロドリゲス監督のサッカー観であり、それがスタイルにもなっているわけです。
大邱はセーラーズに一度負けていて、そのセーラーズは山東泰山と1勝1敗。そのため現在勝点7で3チームが並び、浦和は「1位」突破の可能性がある一方で、「3位」となる危険性も少なからず残っています。ただ「2位」突破の可能性を高めるうえで、大邱相手の1分1敗は、決して「最悪」の結果ではありませんでした(決して「良い」わけではなく、悪いほうから2番目という意味)。2敗を喫していると決勝トーナメント進出はより厳しくなっていました。
今日勝てなかったことを受け入れなければいけません。ただ、最大の目標はグループステージを突破することです。
残り2試合の相手であるセーラーズと山東泰山には、いずれも第1戦で勝利しています。「得失点差も重要になる」というシチュエーションですが、まず勝つこと、そのうえでたくさんゴールを奪うことが重要になります。戦いに向かう目的を明確にしなければなりません。こうした時こそ、監督の手腕が問われます。
大邱との重要な2試合で、いずれもノーゴールに終わっていて、どのように修正を図るのか。同時にまだ何も決まっていないわけで、選手たちの気持ちを切り替えさせなければいけません。どのようなモチベーションで、残り2試合を戦わせるのか。
セーラーズ戦では今日出場していないサイドアタッカーの選手が、肝になると思います。次戦はモーベルグがメンバー外になると予想されるので、代わってピッチに立つ可能性が高い左利きの大久保 智明、松崎 快に期待したいです。一方、後半途中に足を痛めて交代した酒井 宏樹の状態は、今後のリーグ戦も見据えると非常に心配されます。浦和はセーラーズとの第1戦、前半4バックだった相手に対し、松尾(佑介)の突破から再三チャンスを作って得点を重ねました。しかし3バック気味にして対応されると、苦戦を強いられ、結局、後半立ち上がりにゴールしてからは攻めあぐねました。セーラーズが第1戦で手応えを得た5-4-1気味のシステムで臨んできた場合、浦和はこの大邱戦の経験を踏まえ、どのようにサイドで揺さぶりをかけて崩すのか。そのあたりがポイントになりそうです。
最後に個人的な思いをひとつ。浦和はACLで2度優勝しているチームなので、どのような結果になったとしても、選手から「いい経験になった」といった言葉はあまり聞きたくないと思っています。リカルド ロドリゲス監督にとっては初のACLで、若いチームであることも重々承知しています。とはいえ「浦和レッズ」という歴史を作ってきたなかで、今、再び優勝するために臨んでいるわけですから、個々の「いい経験」で済ませてほしくないという思いはあります。
AFCチャンピオンズリーグ2022 東地区グループステージMD5
浦和レッズvsライオンシティ セーラーズ
2022年4月27日(水)20時00分キックオフ
DAZN独占配信
公式戦初先発のアレックス シャルクは1.5列目やサイドのスペースを活用するタイプで、「9番」とはやや異なるのかなという印象を受けました 【©J.LEAGUE】
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