【新門司NOW】芽生えた自覚と責任 針谷岳晃選手

ギラヴァンツ北九州
チーム・協会

【©GIRAVANZ】

「昨シーズンJ3に降格させてしまった責任もありますし、自分のサッカー人生においても追い込まれているというかやらないといけないという気持ちを、より強く持ったのかなと思っています」

開幕からボランチとして攻守で替えの効かない活躍を続ける針谷岳晃選手が、2022シーズンに抱えている本音である。開幕から5試合、そのプレーぶりから今年に懸ける思いを大いに感じ取っている方が多いのではないだろうか。

今季はキャンプから、全体練習後の個人練習にも多くの時間を割いている。シュート練習や筋トレにも取り組む中、欠かさず行っているのが道本和晃コーチと行う対面パス。『止める・蹴る』という最重要スキルを磨くためである。

「自分の課題を克服するのもそうですし、良い部分を伸ばすのもそうですし、結局基礎が大事だなというのがあります。毎日継続してできているので、試合でもミスが続いてしまうことはないですしね。普段のトレーニングや自主練でできている分、今季は自信をもってやれているんじゃないかと思っています」

こういった技術面については本来持つ強みでもあるが、今季は豊富な運動量も目を引く。チームが志向するサッカーの性質上、否応なしに運動量を求められるが、攻守において縦横無尽に駆け回り、チャンス、ピンチ両面において効果的なプレーを出せている。

「実はキャンプ含めてプレシーズンの入りはさほど良くなくて、コンディションも上がらなかったんですが、キャンプを過ごして練習試合をやりだしてから良くなっていったんです。その後くらいですかね、自分でも『行けるな』と思い始めたのは。あとは走る所が見えると言うんでしょうか、『ここに戻らないといけない』とか、そこにしっかり戻ったり出て行ったりできているので、自然と運動量も増えているんじゃないかと思っています」

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今季に懸ける想いは、昨季まで在籍し双子のように仲が良かった高橋大悟選手(現清水エスパルス)が抜けたからこそ、という側面もある。
※高ははしご高

「昨季は結果を見てもそうですが、あいつに頼っていた部分もあります。あいつが抜けて、僕自身はチームの現状を分かっているのもそうだし、そういった中でも北九州に残ってやらせてもらっているからこそ自覚も責任もあります。役職にはついていませんが、プレーでもっともっとチームを引っ張っていきたいです。大悟も声掛けなどはさほどするタイプではなかったですし、どちらかというと背中で語るタイプでした。僕も口で言うよりプレーで見てもらった方が良いと思っていますし、今のところはそれが出せているかなと思っています」

一方、今季は同じくジュビロ磐田から期限付き移籍で、同期でもある藤川虎太朗選手が加入した。2人が得点やチャンスで絡むシーンは多く、前節沼津戦でも前半にスぺ―スへ抜け出した藤川選手に絶妙なスルーパスを通し、決定的なシーンを作り出した。

「コタは走ってくれるので、自分の武器でもあるスルーパスや裏へのボールも活きるのかなと思います。沼津戦のあのシーンも、コタが僕だったら出すと思って走ってくれたんじゃないかと。あいつは、ここだったら絶対ボールが出てくるからいてくれるというのが多いので、そういうところは助かっていますね」

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そして、余談になるがもう一つ大きく変わったと感じたことについても聞いた。あらゆる選手とのコミュニケーションがより一層増えたことについて、だ。

「いえ、それは意識しているわけではないです(笑)。でも、ひょっとしたら僕が一番しゃべっているんじゃないですか。うるさいと思います(笑)。チームに慣れてきたというのもあるんじゃないでしょうか」

誰とでもよく話す針谷選手だが、今季はとりわけ藤谷 壮選手と仲が良く、一緒にいるのをよく見かける。

「壮くんは1つ上ですし、仲良いですよ! 壮くんは人見知りなので、代表でも一緒にやっていて知っていたのに、当時はさほど話していなかったんですけど…。壮くんも慣れてきてよかったんじゃないですかね(笑)」

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チームの中心選手としての自覚を持ち、あらゆる点でモデルチェンジを遂げた針谷選手。チームとしてはJ2昇格を果たすことが目標だが、個人としての大きな成長も見据える。

「全試合に出て、個人的にも成長して上を目指す。誰が見ても『こいつすごいな』と思ってもらえるようなプレーをできればと思っています」


2017年、鹿児島で行われたニューイヤーカップでジュビロ磐田と対戦したが、実はプロ入り直後の針谷選手が対戦相手として出場していた。磐田の名波 浩監督(現松本山雅FC監督)が試合後、北九州のスタッフに向けて口にした言葉を、ふと思い出した。

「うちの新入り、いいでしょ?」

“うちの新入り”というのは、もちろん針谷選手のこと。希代のレフティに認められた逸材が、自覚と責任を背負い覚醒しようとしている。シーズンを終える11月に果たしてどんな姿を見せてくれるのか、楽しみで仕方がない。自らが思い描いた姿をピッチで表現できていれば、チームのJ2復帰という目標もおそらく達成されているはずだ。

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著者プロフィール

イタリア語で"ひまわり"という意味の「Girasole」と"前進する"という意味の「Avanzare」を組み合わせた造語。ひまわりは、ホームタウン北九州市の市花で、太陽に向かって力強く伸びていく元気を象徴する。「Girasole」は、本来「ジラソル」と発音するが、ここでは「ジラ」部分を「ギラ」と読み、太陽の輝きと躍動を想起させる強い語感に。「北九州から、日本、アジア、そして世界へと飛躍すべく、常に成長・前進を続ける光り輝くチームであり続けたい」「サポーターや地域が輝き、元気になる、その象徴でありたい」という願いが込められている。

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