ダートの新馬・未勝利戦を圧勝する馬が増加中!?

JRA-VAN
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【2021/12/18 中山6R 新馬戦 1着 11番 タヒチアンダンス(1番人気)】

現3歳世代はこれまで約700頭が新馬・未勝利戦を勝ち上がっているが、この世代はダート戦で後続を大きく突き放して勝つ馬が非常に多いように感じられる。昨年12月18日の中山ダート1800m新馬戦で母にミラクルレジェンド(JBCレディスクラシック連覇など)を持つタヒチアンダンスが、2着になんと3.3秒もの差をつけたのがその代表例だ。果たして実際にダート戦を圧勝する馬が例年よりも多いのか、JRA-VAN Data Lab.とTarget frontier JVを利用して調べてみたい。集計期間は昨年6月5日から本年1月23日までとした。

現3歳世代新馬・未勝利戦(ダート)タイム差ベスト11

■表1 【現3歳世代新馬・未勝利戦(ダート)タイム差ベスト11】

まず表1は現3歳世代の新馬・未勝利戦(ダート)における、2着馬とのタイム差ランキング(10位タイまで)である。冒頭に触れたタヒチアンダンスの3.3秒差が断トツで、6位タイの1.8秒差までが着差としては「大差」。ちょうど10馬身差になる1.6秒差の3頭まで、計11頭が10馬身以上の差をつけてダートの新馬・未勝利戦で初勝利を挙げている。

明け3歳になってからランクインした馬はいないが、1月22日の中山ダート1200m新馬戦ではクールライズが1.5秒差で優勝(12位タイ)。また集計期間外にはなるが、1月29日・中京ダート1200m未勝利戦では初ダートのバトルクライが2着に1.7秒差をつけるなど、年が明けてからもダート戦で圧勝を飾る馬は出ている。

新馬・未勝利戦(ダート)で2着馬に1.0秒以上の差をつけた優勝馬数

■表2 【新馬・未勝利戦(ダート)で2着馬に1.0秒以上の差をつけた優勝馬数】

さて、この世代は本当にダートの新馬・未勝利戦を圧勝する馬が多いのかどうかデータを調べたのが表2で、対象は2着に1.0秒以上の差をつけた馬とした(現8歳世代以下)。1回中山(1回中京、例年の京都)終了時の該当馬数で比較すると、現3歳世代の39頭という数字は1位。この世代で0.9秒差以下も含めた全優勝馬は299頭おり、このうち39頭で13.0%という占有率でもトップに立つ。2位にあたる現5歳世代の35頭も例年よりはかなり多く、3位は27頭(現7歳世代)とさらに離れている。印象通り、現3歳世代はダートの新馬・未勝利戦で後続に大きな差をつけて勝ち上がった馬が多いというデータだ。

この表でひとつ気になったのは、現3歳世代の対象馬(2着と1.0秒差以上の優勝馬)は上位人気に推された馬が多くなっていることで、全39頭中30頭は1〜2番人気だった。年によってブレはあるものの、全体としては穴馬が圧勝するケースが減っているとみていいだろう。

新馬・未勝利戦(ダ)優勝馬平均人気、単勝平均配当

■表3 【新馬・未勝利戦(ダ)優勝馬平均人気、単勝平均配当】

そこで、2着馬とのタイム差を問わずダートの新馬・未勝利戦優勝馬すべてについて平均人気と単勝平均配当を調べたのが表3である。こちらも現時点では、今年の3歳世代は例年に比べ平均人気の値が小さく、単勝平均配当も低くはなっている。ただ、表2では現3歳世代の単勝平均配当は現5歳世代の半分以下だったのに対し、そこまでの差は見られない。人気馬が勝ちやすくなり、勝ったときには着差が開きやすくなった、というだけで済むような単純な話ではないようだ。

新馬・未勝利戦(芝)で2着馬に0.6秒以上の差をつけた優勝馬数

■表4 【新馬・未勝利戦(芝)で2着馬に0.6秒以上の差をつけた優勝馬数】

では、芝のレースを圧勝した馬はどうだろうか。一般的に芝はダートに比べタイム差がつきづらいため、こちらは集計対象を0.6秒差以上とした。1回中山終了時の該当馬数で比較すると、現5歳世代だけは49頭と群を抜いて多かったが、その他の5世代は31〜34頭でほぼ横並び。現3歳世代の34頭という数字はまったく目立たない。

もし芝でも圧勝馬が増えているのであれば、たとえば有力馬が分散する傾向が強まったとか、完勝態勢に持ち込んでも最後まで気を抜かせずに追うジョッキーが増えた、など考えられることはいくつかあったが、これらは当てはまらないことになる。

この「ダート戦だけ」ということから思い当たるのは新種牡馬だ。今年、ダート戦で活躍が目立つ新種牡馬といえばドレフォンとArrogate(米国繋養、2020年死亡)。ダートの新馬・未勝利戦で1.0秒以上の差をつけて勝った馬を調べると、種牡馬別の現3歳世代トップはシニスターミニスターの5頭だったが、これに次ぐ2位がドレフォンの4頭、そして3位がArrogateの3頭だった。もちろん要因はこれだけではなかろうが、両者の産駒だけで全39頭中7頭を占めているのだから非常に大きい。今後、この中から大物が誕生する可能性も十分にあるだろう。

新馬・未勝利戦(ダート)を1.0秒差以上で勝った主な活躍馬

■表5 【新馬・未勝利戦(ダート)を1.0秒差以上で勝った主な活躍馬】

最後にその「大物」について。ダートの新馬・未勝利戦を1.0秒差以上で勝った馬のうち、後に活躍した馬を一部挙げてみた。表2にあったようにさほど多くの該当馬がいるわけではないが、現8歳〜5歳世代までは中央競馬に2つしかないダートG1を制した馬が各世代から出現しており、ほかに地方競馬のJpn1を制した馬もいる。現4、3歳世代はまだまだこれから、といったところだろう。

以上、ダートの新馬・未勝利戦を圧勝した馬についていくつかデータを調べてみた。現3歳世代に該当馬が多いことはデータから裏付けられた一方で、芝の新馬・未勝利戦は例年並みという数字だった。ダートで好結果を残しつつある新種牡馬・ドレフォンやArrogateの影響はありそうだが、現状でははっきりとしたことは言いづらい。現3歳世代の今後や、この夏以降にデビューする2歳世代の成績もみていきたいところだ。

文:浅田知広(あさだ ともひろ)
1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。
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