元ソフトバンク投手の山田秋親監督、大学野球の監督としての初シーズンを振り返る
【©びわこ成蹊スポーツ大学】
大学、スポーツ大学の監督に就任して一番の印象は―
京滋大学野球連盟でリーグ優勝の経験がないチームなので、「初優勝したい、チームを強くしたい」と思って就任した。2017年にコーチ就任した時から、「チームを強くしたい」という気持ちが根底にある。ただ、選手たちはスポーツ大学の学生なので、授業で学んだことをもっと野球に活かしてほしいとコーチに就任した頃から感じている。正直、もったいないなと。監督としては、選手たちが自ら考え、行動し、結果から反省ができる「真のアスリート集団」へと成長できるようにしたい。
監督として迎えた初のシーズン、今思うことは―
監督として選手たちに対する「過度な期待」はいけないと感じた。シーズンを戦う中では当然、期待以上に活躍した選手や期待通り活躍した選手がいた一方で、期待していたが活躍できなかった選手などもいた。特定の選手に頼るような監督ではいけないなと感じた。チーム力の底上げが必要になるが、誰を起用しても勝てるようなチームとすることが今、自分に求められること。それでも、チームには柱が必要と思っている。投手出身なので、まずはバッテリーを中心に育てたい。
監督として指揮を執る中で、改めて野球が「おもしろい」と感じた。コーチとしての4年間は投手起用が中心だったが、今シーズンからは野手の起用も考えないといけないことで、野球について改めて勉強する機会が増えた。野手の起用法などまだまだ学ぶことが多くあり、純粋に「おもしろい」と感じていて毎日が楽しい。
試合以外のことでは、慣れないことばかりで苦労が多かった。リクルートや学生の進路に関することも今までより責任を感じている。特に進路については、4年次生を中心に話を聞く時間が増えた。他にも、コロナ禍で多くの制限がある中での活動のため、多くの選手たちから悩みを聞くことも多かった。選手たちが満足に野球をできない環境が続き、心苦しい期間が続いた。
今シーズン、コロナ禍で行った対策は―
今シーズンは、部内でも陽性者が出たことで、リーグ戦を1節辞退するなど、対応に追われることも多くあった。ただ、2020年1月から毎朝の検温報告を全部員に徹底してきたことは、選手たちの体調の変化などに気付くためのきっかけとなり、感染を最小限に抑えることにつながったと思っている。大学の対策として、人数や時間などのルールが明確であったことは、活動をするための光にはなった。ただ、どうしても多くの選手を抱えるからこそ、満足に野球ができない環境であったことは選手たちに申し訳なく感じている。
監督としての手応えや課題、その克服はどうする―
チームを確実に勝たせることが良い監督と考えている。前向きに野球に取り組む選手たちの姿勢は見られるが、まだまだ監督としての手応えを感じることはできていない。少しずつではあるが、リーグ戦を戦ったAチームからは「勝ちたい」という想いを感じられるようになってきた。まだまだチーム全体には浸透していないので、全員がすべての試合に対して「勝ちたい」と思えるチームにしたい。
選手たちのリアクションが少し早くなってきていることは変化の兆し。11月の第11回京都新聞杯滋賀県社会人・大学野球交流大会では「優勝」を経験できた点は良かった。ただ、作戦や戦略ではまだまだ課題が多いので、少しずつ克服していきたい。
監督としては、チームを確実に勝たせることができる確かなものが掴めないからこそ経験が必要と感じている。今は周りに西コーチをはじめ経験豊富なスタッフから学ぶ機会があることはありがたい。これからも人を動かす言葉や行動についてはまだまだ学び続けることになる。永遠の課題となるような気がしている。
第11回京都新聞杯滋賀県社会人・大学野球交流大会優勝 【©びわこ成蹊スポーツ大学】
高校、大学、プロと様々な指導者との出会いがあるが、最も意識している指導者は―
誰をモデルにしているということはないが、大学野球の監督さんが学生とどうコミュニケーションをとっているのか興味がある。特に、全国で活躍されている同じ連盟に所属する佛教大学の田原監督をはじめ、関西の強豪大学の監督が学生に対してどう向き合っているのか勉強させてもらいたい。同世代の監督と話す機会もあるので、「学生の意見を聞きながら調和をとれることを強みにしたい」と意見を交わしている。また、プロでお世話になった指導者の「勝利に対する貪欲さ」は参考にしたいと思っている。まだまだ、お世話になってきた指導者の方の足元にも及ばないからこそ、もっともっと勉強したい。
監督として考える理想のチームは―
学生野球だからこそ、爽やかにグランドを駆けまわるチームであってほしい。身体だけでなく精神面も爽やかで健康でなければいけない。活き活きした目や表情をしてグランドに出てきてほしい。選手たちには技術面ではなく、人間性をより求めていきたい。選手たちは自分で考えることができているが、想定外のことがあると反応できないのが現状。多くのことを考えるためにも、自発的に考え行動できるように、ある程度は選手たちに委ねることも増やしていきたい。そのためにも、日頃から言っていることではるが「準備力」が必要。そういう意味でも、選手たちが自ら考え、行動し、結果から反省ができる「真のアスリート集団」が理想のチームと考えている。
スポーツ大学の学生に対する印象や学生から学ぶことはあったか―
プロや社会人の世界から学生野球に戻ってきて、「この練習をしよう」となると手を抜かず一生懸命やる姿は尊敬に値するなと思った。ただ、集団であれば頑張れるが、個人ではまだまだなのが学生。一人でも一生懸命に取り組める選手に育てたい。
また、野球部も含めびわこ成蹊スポーツ大学の学生たちはマナーが良いように感じる。明るい学生も多く、挨拶をはじめコミュニケーションが取れる学生ばかり。特に、数年前にJリーグクラブに加入した卒業生は、コミュニケーションや立ち振る舞いから「トップアスリートらしさ」を感じた。サッカー部だけでなく、様々な競技に対して一生懸命な学生から刺激を受けることができる環境は恵まれているなと感じている。
来シーズンの展望、期待する選手は―
来シーズンは、バッテリー中心にロースコアの試合に勝ちたい。個人的には、3ー2や3ー1などのスコアが野球としてはおもしろい、逆転できればなおおもしろいと思っている。今シーズンは逆転勝ちがなかなかできなかったので、逆転勝ちできるようになれれば少し手応えを感じられるようになりそう。初優勝するために、キャッチャーを中心としたセンターライン、特にキャッチャーの湯浅公貴(2年次生・智辯和歌山高校出身)には期待している。ただ、リーグ戦への出場経験がある選手も多くいるものの、まだまだチーム全体の底上げは必要。秋季リーグ戦後の実戦を通しておもしろい選手も出てきていることは大きな収穫。ただ、12月の過ごし方が少し物足りなかった。年明けから良い準備をして春を迎えたい。「勝てる監督」と言われるようになるために、まずは2年目での「初優勝」を目指します!
マウンドで選手へ指示をする山田秋親監督(中央) 【©びわこ成蹊スポーツ大学】
◆プロフィール◆
山田 秋親(やまだ・あきちか)1978年9月19日生まれ。京都府出身。184センチ、85キロ。右投げ右打ち。投手。北嵯峨高校3年時に夏の甲子園に出場。立命館大学4年時には、最速153キロの直球を武器にシドニー五輪に出場。ドラフト2位で2000年に福岡ダイエーホークス(現・福岡ソフトバンクホークス)に入団。2016年シーズンで現役を引退し、2017年よりびわこ成蹊スポーツ大学硬式野球部コーチに就任。2021年1月から監督に就任。
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