リーグ優勝に突き進むロッテ 2021年シーズン 流れを変えた場面を振り返る。中村奨吾編

千葉ロッテマリーンズ
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【千葉ロッテマリーンズキャプテンの中村奨吾内野手】

 マリーンズは6月を7勝11敗4分けと大きく負け越した。6月の最後のカードとなった敵地大阪でのバファローズ戦は1敗1分け。交流戦優勝を飾った相手の勢いに飲み込まれるように敗れた。7月1日の移動休日を挟んで2日は雨天中止。しばしの休養を挟み、流れを変えるべく挑んだ7月最初のゲームも前の月の悪い流れを引きずるかのような陰鬱な展開が続いていた。7月3日、ZOZOマリンスタジアムで行われたイーグルス戦。初回に2点を先制する最高の形もその後は追加点を上げられず、逆転を許し1点差で運命の八回を迎える。

 「なんとかしないといけないという想いがあった。マリーンズらしく粘り強く繋ぐ野球を取り戻したいと思っていた」

 キャプテンの中村奨吾内野手は必死にまだ見えぬチャンスが出現するのを待っていた。向かい風が吹く試合展開も必ず追い風に変わる瞬間があると信じ我慢のプレーを続けた。だから試合終盤、マウンドには安定感抜群の宋家豪投手が姿を現しても動じなかった。そして好機が訪れる。

 八回、先頭の藤原恭大外野手が右前打で出塁して打席に向かった。信じて応援してくれるファンに勝利を届けるにはこの回の反撃は必須と考えていた。

 「後ろには好調の両外国人が控えている。粘って繋いでなんとしてもチャンスを広げないといけないと考えながら打席に立っていました」(中村)。

 カウント1ストライク、1ボールからの高めのスライダー。少し態勢を崩しながら打ち抜くと打球は大きな弧を描き、レフトへ飛んだ。

 「ストレート狙いでしたがその前に1球、スライダーがあったこともありイメージはあった。打ち方としては良くなかったけど、うまく下半身を粘りながら打つことが出来た。下半身の力を残して打ったので拾いながらもしっかりとボールに力を込めることができました。いい角度で上がったので手ごたえはあった。あとは風でどうなるかなあという感じでした」(中村)

 長年の経験で手ごたえはあった。長い滞空時間を経て打球はスッとスタンドに吸い込まれていった。逆転の6号2ラン。この回、さらに1点を奪い勝利した。梅雨空と同じように暗いムードに包まれていたチームが、この瞬間に生き返ったといっても過言ではない。7月を6勝2敗1分け。前半戦を首位バファローズに2・5ゲーム差まで詰め寄り、3位で折り返した。

 中村には忘れられない出来事がある。2019年9月。球場でファンであるという中学生と面会をした。彼の名前もまた「尚吾(しょうご)」だった。重い病気を患っていたが、わざわざ球場まで応援に来てくれた。マリーンズを応援すること、特に同じ名前の中村奨吾が活躍することが楽しみで元気が出ると目を輝かせながら語ってくれた。しかし、尚吾くんはその年の12月に天国に旅立った。

 彼の両親から「あの子はマリーンズが勝つことで元気をもらっていました。毎日、病室で中村選手の応援歌をかけて手拍子して歌っていました」と教えてもらうと、熱い想いがこみ上げてきた。それまではちっぽけな存在だと思っていた自分を見直すキッカケとなった出来事だ。

 「病気と闘いながら応援してくれた。そんな人たちが見てくれているのに調子が悪いとか結果が出ないとか身体が疲れているとか弱音を吐いてはいけないと思いました。自分たちのプレーを見て元気になってくれる人たちがいる。楽しみにしてくれている人たちがいる。そういう人たちのために、どんな時でも諦めてはいけない。力になるようなプレーをしないといけないと思いました」

 中村は今年、キャプテンに就任した。大事にしているのはどんな逆境でも諦めない姿勢。自分たちを信じて前を向き立ち向かうことだ。ファンはスタンドから、テレビから見てくれている。その想いに応えなくてはいけない。7月3日の大きな弧を描いた本塁打はまさに背番号「8」のファンへの想いを込めた逆転本塁打だった。主将の熱き想いを全員で共有しファンと共にマリーンズは優勝戦線を突っ走っている。

千葉ロッテマリーンズ広報室 梶原 紀章
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