クラブとファン・サポーターを結ぶ、新たな形“note”「すべてのアントラーズファミリーに感謝を込めて」【未来へのキセキ-EPISODE 21】

鹿島アントラーズ
チーム・協会

【©KASHIMA ANTLERS】

「すべてのアントラーズファミリーに感謝を込めて」

 2021年2月1日に運用が開始されたアントラーズ公式noteの初投稿記事に、そんな一文が記されている。それまでFacebook、Twitter、Instagram、YouTube、TikTok、stand.fmといったあらゆるSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を駆使してチームの“今”を発信してきたが、クラブ創設30周年の年に新たなプラットフォームの運用を開始した。

 アントラーズ公式noteでの発信内容は、他のSNS媒体と比べるとやや趣旨が異なる。フットボールクラブとして注目の的になりがちなピッチ上の事象よりも、冒頭の一文とともに、パートナー企業や地域などとの連携によるさまざまな施策の発信を目的とされている。

「ファン・サポーター、地域、企業、多くの方々に支えられ、鹿島アントラーズは30年目のシーズンを迎えることができました。今年は30周年記念事業を通じて、皆様とクラブ創設当初から掲げる『Football Dream』を紡ぎ続けるとともに、新たに開設する公式noteでは、クラブによるこれまで、これからの様々な取り組み、想い、エピソードなどを発信していきたいと思います。

 そのなかで、中心となるトピックが、日々私たちクラブを支えてくださるパートナーの皆さまとの取り組みです。協力して進めるプロジェクト、一つひとつにパートナーの想いが込められ、その実現の裏側には様々な仕掛けや挑戦があります。公式noteを通じ、今までお伝えしきれていないパートナーとの取り組みを、より多くの方々へ届けていきます。」(アントラーズ公式noteより一部引用)

 ただ、noteでの発信という新たな試みには課題もつきまとった。フロントスタッフの多くは、いわゆる記者やライターといった文章を書く職業を経験しているわけでもなく、少なからずライティング業務に対する抵抗感が生じてしまう。そのため、更新頻度も月一回程度と頻度が少なく、効果的な配信ができていない状況が続いた。運用についてテコ入れの必要が求められるなか、公式noteの活用を重要視したのが、自身もメッセージの発信にSNSを活用している小泉文明社長だった。

「TwitterやInstagramなども利用しているけれど、写真がメインであったり、文字数が限られていたりと、発信内容が限られる。それらのSNSで伝えられないフロントスタッフの思いやクラブの裏側を発信するためにも、noteは役に立つのではないだろうか」

 そのような思い、そして公式noteの運用を改めて社内で見直し、新たな形での更新が始まった。

【©KASHIMA ANTLERS】

 9月からは週に1回のペースで記事をアップ。テーマは、社内各チームのスタッフがそれぞれ発信したいアイデアを持ち寄り、広報PRチームでスケジュールを組みながら更新している。

 たとえば、ホームタウンやフレンドリータウンと対面する地域連携チームが、選手考案の給食メニュー「アントラーズ給食」が実現した内幕を明かしたり、普段から選手と接する広報担当者が、アカデミーとクラブOBが今年12月26日に行うクラウドファンディングスペシャルマッチについて土居聖真の思いを取材して綴ったりしている。

 そのなかで目を引くのが、「アカデミークラウドファンディングが3億円を募る理由」と題され、クラブマスコットのしかおが空き地にいる写真を用いた記事。

【©KASHIMA ANTLERS】

「そもそも3億円もかかるのか、ということを私も思っていたので……(笑)」

 記事を書いた広報PRチームの加藤花菜さんは、笑いながら執筆理由を明かす。10月31日まで実施中のアカデミー専用グラウンドを新設するためのクラウドファンディングプロジェクト「#アントラーズの未来をみんなで」に際した内容の記事だが、グラウンド工費などを詳しく把握していなかった加藤さんは文中でも「“……3億円? グラウンドを建てるのに、そんなにかかるの?”」と記し、目標額の3億円という費用の内訳などを社内ヒアリングし、工程や計画内容とともに発信した。

 グラウンド建設予定地の作業状況の写真や完成予想図を交え、一般のファン・サポーターも詳しくなかったであろう、かつスタッフ自身の“知りたかったこと”を記事にした。すると、アントラーズのファン・サポーターからの反響もあり、社内のスタッフ間でも共有されてアカデミー専用グラウンド新設に向けた共通理解も促された。

「私は文章を書くことが苦手ですけれど、そういう人も含めていろいろなスタッフが発信していくことが大事だと思っています。結構がっしり書いている人もいれば、ちょっとゆるく書いている人もいる。その差も許容して“アントラーズのなかの人”が発信することを大切にするメディアにしようという思いで進めています」

 10月20日には新たな記事が投稿された。タイトルは「コロナ禍で行方不明!?しかおはいま。」だ。

【©KASHIMA ANTLERS】

 新型コロナウイルス感染症拡大により、Jリーグは感染症対応ガイドラインを定めた。それにより、すっかりファン・サポーターの前に姿を見せられなくなってしまったマスコットキャラクターのしかおの近況について、「もっとも行動をともにしている」と自負する地域連携チームのスタッフが伝えている。

「これからはゆるいネタの記事も出していきたいと思っています。たとえば、アントラーズスタッフのおすすめスタグル紹介とか、小泉社長がもつ煮を食べ比べる企画とか(笑)。そういった企画記事も発信していきたいです」(加藤さん)

 ここまでアントラーズが歩んできた30年間で、クラブとファン・サポーターを結ぶメディアの形は多種多様に変化を遂げた。そして、公式noteという新たな媒体を通して、また新たに情報の授受が行われている。クラブを支える人々の思いは言葉となり、そのバトンを未来のアントラーズへとつないでいく。一つひとつの記事に、感謝を込めながら。


鹿島アントラーズ公式noteは下記関連リンクから!

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著者プロフィール

1991年10月、地元5自治体43企業の出資を経て、茨城県鹿島町(現鹿嶋市)に鹿島アントラーズFCが誕生。鹿角を意味する「アントラーズ」というクラブ名は、地域を代表する鹿島神宮の神鹿にちなみ、茨城県の“いばら”をイメージしている。本拠地は茨城県立カシマサッカースタジアム。2000年に国内主要タイトル3冠、2007~2009年にJ1リーグ史上初の3連覇、2018年にAFCアジアチャンピオンズリーグ初優勝を果たすなど、これまでにJリーグクラブ最多となる主要タイトル20冠を獲得している。

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