土居聖真 SQUAD NUMBERS〜8〜「人と人とをつなぐサッカーが好き」【未来へのキセキ-EPISODE 20】

鹿島アントラーズ
チーム・協会

【©KASHIMA ANTLERS】

「SQUAD NUMBERS〜背番号の記憶」
これまで数多くのレジェンドがアントラーズ伝統の背番号を背負ってきた。
積み重ねた歴史が生み出した、背番号に込められた重みと思い。
そして、継承するアイデンティティ。
そこには背番号を背負ったものたちの物語が存在する。
創設30周年を迎えた2021シーズン、クラブがリーグ戦毎ホームゲームで特別上映している背番号にまつわるストーリー。
それぞれが紡いできた物語を胸に、今を戦う現役選手が背負う思いとは。
今回は背番号8 土居聖真の覚悟を、ここに紐解く。


 アントラーズのクラブハウスの壁面には、土居聖真の姿が大きく描かれている。クラブオフィシャルパートナーであるナイキ社の広告でもあるが、その巨大なビジュアルからも、この男が今のアントラーズの象徴であることを示している。

「パートナーさんがあっての、僕たちですから」

 他にも、上田綺世とともに常陽銀行のイメージキャラクターを務めたり、5月15日の2021明治安田生命J1リーグ第14節横浜FM戦では「イエローハットハットトリック賞」を受賞して、文字通り“イエローハット”を被った姿を披露したりもした。また、遠藤康、荒木遼太郎とともにホームタウン向けの“アントラーズ給食”も考案。クラブと、パートナーやホームタウンとの架け橋にもなっている。

 その姿勢はピッチにおいても具現化されている。「人と人とをつなぐサッカーが好き」。言葉だけでなくピッチでの姿勢によって、チームの潤滑油の役目も果たしてきた。

「秀でた個が目立つのも、もちろんサッカーだとは思うんです。だけど、みんなでいいディフェンスをして、いいボールのつなぎをゴール前までして、最後に誰かが決める。そこで決めたFWの選手も、うしろのいいつなぎや、いい守備があったから“もう決めるだけだったよ”というサッカーが僕は好きなんです。みんなで取ったゴールがあればあるほど、チームの自信が深まり、結束も深まっていくんじゃないかと思うから」

 チームメートが得点すればすぐさま笑顔で駆け寄り、まるで自分がゴールを決めたかのように大はしゃぎする。組織を重んじるフィロソフィーが、土居聖真というサッカー選手を形づくっている。

「サッカーって本当に1人ではできないので、チームで助け合って、誰かのミスが多かったらそこをサポートしてあげるとか、1人任せにしないというのも選手の能力の一つだと、僕は思っています。アントラーズでもそれができつつあったし、実際にできている試合も多々ありました。そういうサッカーが僕は好きなんです」

【©KASHIMA ANTLERS】

 ただ、理想とは程遠い現実と向かい合わなければいけない日々もある。ザーゴ前監督退任時には「監督の力になれなかったことに強く責任を感じています」と、人一倍に悔しさを募らせた。うまくいかないときほど思考を巡らせ、静かに、落ち着いて、感覚を研ぎ澄ませながら、自身の経験則をたどる。

「たとえば2016年にJリーグで優勝したときは、相手に8割ボールを持たれていても、カウンターからゴールを決めて勝利をもぎ取ることができました。チーム全体が、勝つことを意識してプレーしていたし、試合中も常に勝つ方法を探していた。一つひとつのプレーが、一瞬一瞬が勝つためにあった。強いアントラーズを取り戻していくには、どれだけの選手たちがそれを感じることができるか」

 苦しいときでも光を見いだせることこそ、伝統の息づくアントラーズの強みでもあるだろう。チームの先頭に立ってそれを求めていく土居の存在が、アントラーズがアントラーズたる由縁を示しているとも言えるはずだ。

 プロ入りしてから11年、もっとさかのぼると小学校卒業後に故郷の山形県を離れてから17年の間、鹿島アントラーズで戦い続けてきた。今年で29歳になり、今ではチーム6番目の年長者。「年月が過ぎれば後輩だった自分が先輩になっていくし、自分の後輩だって誰かの先輩になっていく。これはもう自然の流れですからね」とリーダーの自覚も芽生えてきた。

「(小笠原)満男さんが引退したとき、(内田)篤人さんは“自分は満男さんにはなれない”と言っていました。だから、僕も“自分らしいリーダー像をつくる”ということだと思っています。誰かの代わりを誰かがそのまま同じようにはできません。篤人さんの言葉をかみしめて、僕は僕らしく、もちろんピッチ上でもそうですが、ピッチ外でも自分らしくやれればと思っています」

 鹿嶋の街で大人へと成長しても、いつまでも少年のような屈託のない気持ちでサッカーに向き合っている。「生え抜きのテクニシャンであるゲームメーカーが付ける番号です。これまでの系譜を継承してほしい」という鈴木満フットボールダイレクターの思いとともに受け継いだ背番号8。過去に小笠原満男、野沢拓也が背負ってきた伝統を継承すべく、常に勝利への期待感を胸に抱いて、ゴールへと真っ直ぐに走り続ける。

「フットボールは一人でやるものではない。ピッチに立つ11人、試合メンバーの18人、さらにはチームに所属する全員で勝利を目指していくものです」

 すべては勝利のために、すべては仲間と喜び合うために。いつの時代も、そしてこの先の未来も、背番号8を背負いし者がアントラーズの象徴であり続ける。

「試合の状況や流れに応じたプレーを選択できることも僕が知るアントラーズです。それをピッチ上で表現できれば、チームメートの信頼につながることは優勝したときに強く感じました。これからも頼りにされる存在であり続けたいし、あとはやっぱり結果です。内容よりも結果を出さないといけない。今は特にそう思います」

 チームスピリットの体現者として、これからもチームを牽引し続けていく。


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著者プロフィール

1991年10月、地元5自治体43企業の出資を経て、茨城県鹿島町(現鹿嶋市)に鹿島アントラーズFCが誕生。鹿角を意味する「アントラーズ」というクラブ名は、地域を代表する鹿島神宮の神鹿にちなみ、茨城県の“いばら”をイメージしている。本拠地は茨城県立カシマサッカースタジアム。2000年に国内主要タイトル3冠、2007~2009年にJ1リーグ史上初の3連覇、2018年にAFCアジアチャンピオンズリーグ初優勝を果たすなど、これまでにJリーグクラブ最多となる主要タイトル20冠を獲得している。

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