【新門司NOW】今こそ、池元友樹クラブコーディネーターが伝えたいこと
【©GIRAVANZ】
J2リーグは残り10試合を残すばかりとなった。残留圏内とは勝点差1の20位。ここ2試合の”6ポイントマッチ”における展開と結果を考えれば、非常に厳しい状況と言えるかもしれないが、まだまだいろいろなことが起きる、起こせる試合数でもある。群馬戦翌日、そしてオフ明けの今日もこれまでと変わらず、いや、いつも以上に前を向いてボールを追う選手たちの姿が見られた。
ここから運命の2か月を迎えるにあたり、5年前に今と同じく厳しい残留争いを経験した池元友樹クラブコーディネーター(以下、池元CCN)に話を聞く機会をもらった。今季、ほぼすべての練習と試合をその目で追ってきたクラブのレジェンドに、外から見てきたチームのこと、大切なこの時期にみんなに伝えたいこと、聞きました。
昨季まで選手として、数多くの経験を重ねてきた池元CCN。今季から立場が変わり、外からチームを見守っている。時には、選手の相談役になることも。
「選手一人一人の表情や声掛けに目が行くようになりました。『この選手はこんな声掛けをするんだ』とか『今日はこんな表情をしているんだ』とか…。自分が選手の時は全然気にならなかったんですけどね。キャプテンをやったり最年長になったりして、そういう細かいところも気にしないといけないとは思っていたんですが、自分がピッチに立った時にそこまで見きれなかったところがあって、ピッチから離れて初めてそういうところを見られるようになりました。
昨季選手として一緒にプレーした選手も多くいますが、ほとんどの選手が変わったな、成長したなと思っています。プレシーズンキャンプの頃からそう思っていて、何か特別話したわけでもないけど、トレーニングを見ただけで変化を感じました。もちろん、選手ってキャンプの時が一番意欲的になるものですが、今年は一層やってやるんだ、チームを引っ張っていくんだという覚悟みたいなものを持っている選手が多いなと思って。シーズンインしても、皆とはちょくちょくいろいろな話はしていて、改めて選手の時とは違う立場で話してみると、『こんなにしっかり考えていたんだ』という選手がいたり、そういう発見が多いですね」
昨季の結果もあり、今季は選手たちがより意欲的に入ったプレシーズンキャンプだった。FUJI XEROX SUPER CUP 2021を間近に控えたJ1王者・川崎フロンターレを相手にも好ゲームを見せ、小林伸二監督も手ごたえを感じていたように、キャンプ時点での充実度は昨季を超えていると池元CCNの目にも映っていた。
「正直、春先までのチームを見ていて、こんなに苦しむことになるとは思いもしませんでした。序盤につまずいてしまったのも一因だとは思います。僕自身、横浜FC在籍時に同じような経験をしていて、キャンプのトレーニングマッチで一回も負けず、すごくいい状態でシーズンを迎えたことがありました。あくまでキャンプなので、チームごとにテンション差はあるけれど、自分たちよりも上のカテゴリー相手に勝てて、ましてやキャンプでやってきたことと内容がうまくかみ合って結果につながっていたので、チームとして今年は行けるんじゃないかという手ごたえをもってシーズンに入りました。にもかかわらず、いざ開幕したらなかなか勝てずに1年間苦しんでしまって…。キャンプが悪ければシーズンは良いというわけでもないし、逆にキャンプが良いからシーズンが良くなるわけでもないというのをその時すごく感じていたので、手放しで今季のチームが良いとは言えなかったんですが、それでも良いものは良いと感じていました。新加入組も、実際にプレーする姿を見たことのない選手もいましたが、いい選手が集まったなと思ったし、さっき言った通り昨季からいるメンバーも意欲的でした。さらに、キャンプでのわずかな間でも成長を感じられて、今季はすごく楽しみだなと純粋に思えていたから、今これほど苦しんでいるのは想像できなかったです」
まさかのJ3降格を味わった2016年、チームの目標は「J1昇格プレーオフ出場」だった。2014年は5位、2015年は7位という好成績を残し、池元CCNの復帰をはじめ、本山雅志選手をはじめとした実力ある選手の加入もあり、シーズン前の下馬評も高く、J3降格という結果を予想した人は皆無だった。
「2016年は周りの期待もすごく感じていたし、いい選手がそろっていました。2014年からの2シーズンもいい形で来ていたし、このメンバーがいて落ちるわけないよね、という感覚がチーム内にもあったと思う。しっかりとした実績をもつ選手が多かったので、そういった変な自信が消えず、どこかで大丈夫だろうという気持ちが最後までありました。だからああいう結果になってしまったのかなと、今振り返れば思います」
2016年は実績ある選手たちが中心になっていた一方、ここ数年は若い選手たちがチームの中心を担い、その勢いがチームのカラーにもなっている。180°違うチーム指針であるため、一概に比較するのは難しいが、2016年の降格は”慢心”が原因だったとするならば、今季のチームが最悪の結末を回避するために必要なことはなんだろうか。
「前提として、どのシーズンも一体感が必要なのは間違いない。となると、今は”残留”という明確な目標がある分、昇格も降格もない中位のチームより、まとまりやすさはあるはず。そのうえで、プラスアルファを考えると、『俺が引っ張る』という選手がたくさん出てきてほしい。たとえ出場機会が少なくても、『俺が起爆剤になるゴールを決める』とか、『俺がこのチームを変える』という野心みたいなものを皆が持ってほしい。もちろん、今も持っているはずだけど、それを前面的に、空回りでもいいから出していくみたいな。選手によって、出し方の特徴はあると思うし、声で引っ張る選手、プレーで引っ張る選手…それぞれ32人の役回りや出し方は違うと思うけど、『俺がこのチームを変える』っていうのを前面的に出してほしいです。それを見た他の選手が『あいつ変わってきたよね、じゃあ俺たちもあいつを応援しなきゃ』ってなってしまうくらいの空気感を出していければ、それがチームの力になるんじゃないかと思います」
5年前と同じ轍を踏まないように…。最後に改めて選手・サポーターそれぞれに伝えたいことを聞いた。
「選手たちには、何人かに伝えているけど、ああしとけばよかった、こうしとけばよかったというのは絶対にあってほしくない。5年前僕自身はそういうのがあって、後悔していることもあって…。さっきも言ったように空回りでもいいし、あいつなんだよって思われてもいいと思うし、間違えや正解なんてないんだからアクションをどんどん起こしてほしい。それがチームの力になると思うので。残り10試合になったから焦ってやるんじゃなくて、必要だと自分自身が思ってやってほしいなと思います。
サポーターの方たちには、あの時山形で一緒に泣いてくれた人もいるし、同じ思いを二回もさせられない。J3というカテゴリーはすごくきつくて、もちろんそこを経験したからこそ、選手・チームが強くなったというのはあるけれど、もうその場所にいるクラブではないと思います。選手を離れて思うのが、クラブはトップチームだけでなく、選手・チームを支えてくれるたくさんの人たちの存在もあるので、そう考えた時に結果というのはすごく大事。支えてくれる人たちにはいい場所にいてほしいし、クラブとしてもしっかりとした基盤をつくって上で勝負するために降格しちゃダメだし、今の苦しい時期を皆で乗り越えていい時間だったよねってあとで言えるようにしたい。なかなか勝てない今季もずっと支えてくれている皆さんだからこそ、必死にもがいて頑張っている選手たちの熱量をしっかり感じてもらって、最後まで一緒に戦ってほしいと思います」
2016年11月20日、降格が決定したあと、我々クラブスタッフにも「こんな結果になってごめん」と声をかけてくれた池元CCN。その後、2017シーズンの契約更新を誰よりも早く決意し、3年かかったもののクラブをあるべき場所に引き戻した。プレーヤーとしてではなくとも、大好きなこのクラブに関わる人たちが二度と辛い思いをしないよう、ピッチ外で闘い続ける。
ここから運命の2か月を迎えるにあたり、5年前に今と同じく厳しい残留争いを経験した池元友樹クラブコーディネーター(以下、池元CCN)に話を聞く機会をもらった。今季、ほぼすべての練習と試合をその目で追ってきたクラブのレジェンドに、外から見てきたチームのこと、大切なこの時期にみんなに伝えたいこと、聞きました。
昨季まで選手として、数多くの経験を重ねてきた池元CCN。今季から立場が変わり、外からチームを見守っている。時には、選手の相談役になることも。
「選手一人一人の表情や声掛けに目が行くようになりました。『この選手はこんな声掛けをするんだ』とか『今日はこんな表情をしているんだ』とか…。自分が選手の時は全然気にならなかったんですけどね。キャプテンをやったり最年長になったりして、そういう細かいところも気にしないといけないとは思っていたんですが、自分がピッチに立った時にそこまで見きれなかったところがあって、ピッチから離れて初めてそういうところを見られるようになりました。
昨季選手として一緒にプレーした選手も多くいますが、ほとんどの選手が変わったな、成長したなと思っています。プレシーズンキャンプの頃からそう思っていて、何か特別話したわけでもないけど、トレーニングを見ただけで変化を感じました。もちろん、選手ってキャンプの時が一番意欲的になるものですが、今年は一層やってやるんだ、チームを引っ張っていくんだという覚悟みたいなものを持っている選手が多いなと思って。シーズンインしても、皆とはちょくちょくいろいろな話はしていて、改めて選手の時とは違う立場で話してみると、『こんなにしっかり考えていたんだ』という選手がいたり、そういう発見が多いですね」
昨季の結果もあり、今季は選手たちがより意欲的に入ったプレシーズンキャンプだった。FUJI XEROX SUPER CUP 2021を間近に控えたJ1王者・川崎フロンターレを相手にも好ゲームを見せ、小林伸二監督も手ごたえを感じていたように、キャンプ時点での充実度は昨季を超えていると池元CCNの目にも映っていた。
「正直、春先までのチームを見ていて、こんなに苦しむことになるとは思いもしませんでした。序盤につまずいてしまったのも一因だとは思います。僕自身、横浜FC在籍時に同じような経験をしていて、キャンプのトレーニングマッチで一回も負けず、すごくいい状態でシーズンを迎えたことがありました。あくまでキャンプなので、チームごとにテンション差はあるけれど、自分たちよりも上のカテゴリー相手に勝てて、ましてやキャンプでやってきたことと内容がうまくかみ合って結果につながっていたので、チームとして今年は行けるんじゃないかという手ごたえをもってシーズンに入りました。にもかかわらず、いざ開幕したらなかなか勝てずに1年間苦しんでしまって…。キャンプが悪ければシーズンは良いというわけでもないし、逆にキャンプが良いからシーズンが良くなるわけでもないというのをその時すごく感じていたので、手放しで今季のチームが良いとは言えなかったんですが、それでも良いものは良いと感じていました。新加入組も、実際にプレーする姿を見たことのない選手もいましたが、いい選手が集まったなと思ったし、さっき言った通り昨季からいるメンバーも意欲的でした。さらに、キャンプでのわずかな間でも成長を感じられて、今季はすごく楽しみだなと純粋に思えていたから、今これほど苦しんでいるのは想像できなかったです」
まさかのJ3降格を味わった2016年、チームの目標は「J1昇格プレーオフ出場」だった。2014年は5位、2015年は7位という好成績を残し、池元CCNの復帰をはじめ、本山雅志選手をはじめとした実力ある選手の加入もあり、シーズン前の下馬評も高く、J3降格という結果を予想した人は皆無だった。
「2016年は周りの期待もすごく感じていたし、いい選手がそろっていました。2014年からの2シーズンもいい形で来ていたし、このメンバーがいて落ちるわけないよね、という感覚がチーム内にもあったと思う。しっかりとした実績をもつ選手が多かったので、そういった変な自信が消えず、どこかで大丈夫だろうという気持ちが最後までありました。だからああいう結果になってしまったのかなと、今振り返れば思います」
2016年は実績ある選手たちが中心になっていた一方、ここ数年は若い選手たちがチームの中心を担い、その勢いがチームのカラーにもなっている。180°違うチーム指針であるため、一概に比較するのは難しいが、2016年の降格は”慢心”が原因だったとするならば、今季のチームが最悪の結末を回避するために必要なことはなんだろうか。
「前提として、どのシーズンも一体感が必要なのは間違いない。となると、今は”残留”という明確な目標がある分、昇格も降格もない中位のチームより、まとまりやすさはあるはず。そのうえで、プラスアルファを考えると、『俺が引っ張る』という選手がたくさん出てきてほしい。たとえ出場機会が少なくても、『俺が起爆剤になるゴールを決める』とか、『俺がこのチームを変える』という野心みたいなものを皆が持ってほしい。もちろん、今も持っているはずだけど、それを前面的に、空回りでもいいから出していくみたいな。選手によって、出し方の特徴はあると思うし、声で引っ張る選手、プレーで引っ張る選手…それぞれ32人の役回りや出し方は違うと思うけど、『俺がこのチームを変える』っていうのを前面的に出してほしいです。それを見た他の選手が『あいつ変わってきたよね、じゃあ俺たちもあいつを応援しなきゃ』ってなってしまうくらいの空気感を出していければ、それがチームの力になるんじゃないかと思います」
5年前と同じ轍を踏まないように…。最後に改めて選手・サポーターそれぞれに伝えたいことを聞いた。
「選手たちには、何人かに伝えているけど、ああしとけばよかった、こうしとけばよかったというのは絶対にあってほしくない。5年前僕自身はそういうのがあって、後悔していることもあって…。さっきも言ったように空回りでもいいし、あいつなんだよって思われてもいいと思うし、間違えや正解なんてないんだからアクションをどんどん起こしてほしい。それがチームの力になると思うので。残り10試合になったから焦ってやるんじゃなくて、必要だと自分自身が思ってやってほしいなと思います。
サポーターの方たちには、あの時山形で一緒に泣いてくれた人もいるし、同じ思いを二回もさせられない。J3というカテゴリーはすごくきつくて、もちろんそこを経験したからこそ、選手・チームが強くなったというのはあるけれど、もうその場所にいるクラブではないと思います。選手を離れて思うのが、クラブはトップチームだけでなく、選手・チームを支えてくれるたくさんの人たちの存在もあるので、そう考えた時に結果というのはすごく大事。支えてくれる人たちにはいい場所にいてほしいし、クラブとしてもしっかりとした基盤をつくって上で勝負するために降格しちゃダメだし、今の苦しい時期を皆で乗り越えていい時間だったよねってあとで言えるようにしたい。なかなか勝てない今季もずっと支えてくれている皆さんだからこそ、必死にもがいて頑張っている選手たちの熱量をしっかり感じてもらって、最後まで一緒に戦ってほしいと思います」
2016年11月20日、降格が決定したあと、我々クラブスタッフにも「こんな結果になってごめん」と声をかけてくれた池元CCN。その後、2017シーズンの契約更新を誰よりも早く決意し、3年かかったもののクラブをあるべき場所に引き戻した。プレーヤーとしてではなくとも、大好きなこのクラブに関わる人たちが二度と辛い思いをしないよう、ピッチ外で闘い続ける。
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