【サーフィン】過去に例を見ない程、CT選手が引退している理由とは?コロナ禍でのツアー転戦にストレス

チーム・協会

【© WSL/Thiago Diz】

すでに1年半以上も世界中のプロスポーツ選手に多大な影響を与えている新型コロナウイルス。

特にCT選手はNBAやMLBのように一つの国ではなく、何カ国も移動しながら時に短期間で移動しなければいけないため、コロナ禍による各国の対応に合わせて隔離されたり、家族の同行が難しかったりと非常に窮屈であるし、直前でキャンセルされたタヒチ戦のようにスケジュールの変更も多々あった。

そんな状況の中、エイドリアーノ・デ・スーザ、ジェレミー・フローレス今シーズン限りでCTを引退。ジュリアン・ウィルソンがCT参戦を無期限に休止。

マイキー・ライトはフリーサーファーに戻り、2021年ランキングからリクオリファイを逃したエースことエイドリアン・バッカン、ウィメンズのブロンテ・マコーレーもツアー離脱を表明するなど過去に例を見ない数のCT選手がツアーから去っていくことに…。

共に10年以上のキャリアを持ち、プロ選手として成功もしているエイドリアーノとジェレミーに関しては次世代の選手を育成するという次の目標や使命などもあり、腑に落ちるが、その他の選手は新型コロナウイルスの影響を口にする選手も多い。彼らが辞める理由を一人ずつ紐解いてみよう。

ジュリアン・ウィルソン

【WSL/Cestari】

東京五輪の開催直前にWSLワールドツアーを無期限に休止、つまり事実上の引退を表明したジュリアン・ウィルソンの大きな理由は「家族」と言える。
まだ幼い子供がいるジュリアンはただでさえ一年の大半を海外で過ごすCTが負担であるし、更にコロナ禍で海外から帰国した際に14日間の隔離が義務になっている厳しいオーストラリアの規則とすでに築かれた地位と財産を天秤にかけて離脱したと考えるのが妥当だろう。

サーフィンに社会的地位があるオーストラリアでは国内だけの活動でプロとして十分成り立つ土台がある。
その証拠にすでに自転車メーカーのサポートを新たに獲得したようだ。

マイキー・ライト

【WSL/Heff】

姉が2xワールドチャンピオン、タイラー・ライト。兄が東京オリンピックで銅メダルを獲得したオーウェン・ライトとサーフィン界のサラブレットでもあるマイキーはコンテストの世界よりもフリーサーフィンの世界を選んだ。

「Quiksilver」という大きなスポンサーをバックにしている彼はCTでの勝敗を気にしなくても世界中の良い波で自己表現をし続けていれば、同じ収入を得ることができるらしい。

オーストラリアを代表するビール、VB(ヴィクトリアビター)を片手にサーフィンと趣味の釣りを楽しむだけの人生が許される。
彼にはそれだけの才能があるのだ。

エイドリアン・バッカン

【WSL/Poullenot】

エースことエイドリアン・バッカンのハイライトは2013年のタヒチ戦、ケリー・スレーターを倒しての優勝だろう。
エイドリアーノ、ジェレミーと同じような長いキャリアを持つ彼は今シーズン怪我に悩まされてしまい、ルーキーイヤーを除くとキャリア最低の36位でシーズンを終えた。

エースが最終戦の直後にポストしたInstagramのメッセージを見るとまだ完全燃焼とは言い難く、もし、WSLが2022年に怪我人によるワイルドカードの枠を与えれば受け取る可能性があるだろう。
但し、それが無い場合はCS(チャレンジシリーズ)からやり直すことは年齢的にも考えて難しいと思う。

”私のキャリアの中で最も困難なコンテストイヤーが終わったよ。この数ヶ月間を振り返ると、さまざまな感情が湧き上がってくる。妻や子供たちと離れていた時間、怪我、イベントの欠場。信じられないほど困難な時期に好きなことをする機会を得たということに関しては感謝している。

まだ若い子供を持つオーストラリア人の父親として、比較的安全な自宅を離れ、旅とコロナの現実に直面したこの数ヶ月間は、間違いなくカルチャーショックを受けた。正直に言うと、人生で初めて家を出てサーフィンに専念することを難しいと感じたんだ。

その一方でツアーに参加しているサーファーの間では、いつものチームがいなくなったことで、これまでにない仲間意識が芽生えていた。

エイドリアーノ・デ・スーザ、ジェレミー・フローレス、ジュリアン・ウィルソンの素晴らしいキャリアを祝福したいと思う。
彼らとの友情、戦い、ヒートを共有できたことをとても幸せに感じているよ。彼らは私にとって大きなモチベーションであり、その競争心とスポーツへの愛情で多くの人を刺激してきた。

個人的には自分と家族にとって何がベストなのかを考えるための時間をとりたい。最終的には子供たちの前でキャリアを終え、夢と信念があればどんなことでも達成できるということを子供たちに伝えたいと思っている。”

ブロンテ・マコーレー

【WSL/Bennett】

ブロンテ・マコーレーにとって困難なシーズンが終わった。

『ブーストモバイル マーガレットリバープロ』のファイナルデイの朝、弟のジャックが亡くなり、最終戦で訪れたリクオリファイのチャンスも逃してしまったのだ。

今年一杯は家族や親友と過ごし、来年以降のことはまだ公にしていない。
まだ27歳の才能あるサーファーが再びツアーに戻ってくることを願いたい。

”2022年のワールドツアーのリクオリファイができなかったので、今年一杯は試合に出ずに帰国することにしたわ。グレイスタウンで家族や親しい友人と一緒にいることが今の私にとって何よりも大切なことよ。

彼らが私のためにしてくれているように、私も彼らのために存在したい。
今の時点では、それが正しいと感じている。

オーストラリアを出入りするのも、今はとても大変で、帰国後にシドニーで2週間隔離した後、州境の状況次第で西オーストラリアに戻ることができると思う。

今年、私をサポートしてくれた皆さん、本当にありがとう。こんなに良い人たちに囲まれていたのに、自分は何もできなかった。
駆け足で申し訳ないけど、自分の計画を公開しようと思ったの。

今年サポートしてくれたスポンサー。
アメリカでの2週間を特別なものにしてくれた家族のような友人にも感謝しているわ。”
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