東京五輪女子テニス展望:大坂なおみが初のオリンピックでメダル獲得を目指す

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【(C)Getty Images】

大坂なおみ(WTAシングルスランキング2位、7月19日付け、以下同)が、Tokyo 2020(東京五輪)に臨む。23歳の彼女にとって初のオリンピック出場となる。

■2021年全豪OP制し4度目のグランドスラム優勝
東京オリンピックは出場します。なぜなら、日本は私が生まれた国であり、大切な母国だからです。日本での思い出はたくさんあり、私の生き方や考え方に影響しています。今回、日本代表としてオリンピックに出場できることに誇りを持っています。

このように語った大坂の2021年シーズンは、激動の歩みとなっている。新型コロナウィルス感染症のパンデミックが続く中、メルボルンで2月に開催された今季グランドスラム初戦・全豪オープン。大坂は得意のハードコートで持てる力を如何なく発揮し、2年ぶり2回目の優勝を果たした。これで彼女のグランドスラムタイトルは4個目となった。

全豪オープン期間中オリンピックに関して質問された大坂は、自分には2週間の検疫を受け入れる心の準備があると表明していた。新型コロナウィルスの影響によって、日本で東京オリンピックの開催可否の議論があった中で、大坂は、日本国民のことを気にかけ、多くの外国人を受け入れる日本国民の安全が何よりも大事だと慮っていた。

もちろんオリンピックは開催してほしいと思っています。私はアスリートですし、これまで自分の人生の中でずっと待ち望んでいた大会ですから。でも、とても重要な出来事があまりにも多く起きています。とりわけここ1年は。予想できないことが起きたと思います。もしオリンピック開催が、人々を危険にさらすのであれば、そして、人々をすごく不快にさせるのであれば、われわれは今すぐに議論をすべきなのは明白なことだと思います。つまるところ私はアスリートにすぎません。そして、パンデミックは今も起きています。

すべての人が安心だと感じられる、安全な大会であってほしいと願っています。多くの人が日本に入国することになります。間違いなく正しい選択をしなければならない問題です。私はワクチンを接種しました。いろいろ考えると、他の誰かにワクチンを無理強いはできません。オリンピックであろうが何であろうが、開催するのであれば、開催国が幸せだと思える方法で行われなければなりません。

■全仏OPで会見拒否、うつ症状を告白
5月6日には、世界のスポーツ界で権威のあるローレウスワールドスポーツアワードの年間最優秀女子選手賞を日本人として初めて受賞した大坂だったが、その後別人のような発信をして大きな騒動となった。

パリで開催されるグランドスラム第2戦・全仏オープン(ローランギャロス)開幕前の5月27日に、大坂は自身のSNSで大会期間中の全会見を拒否すると宣言。「アスリートのメンタルヘルスについてあまり考慮されていないと感じていた」という大坂は、負けた選手への配慮に欠ける質問があるなど、会見の在り方も含めて痛烈に批判した。ローランギャロス大会自体やすべてのメディアを非難するものではないと断ったものの大きな物議となった。そして自分が会見を拒否した時に科せられる罰金は、メンタルヘルスをケアする団体に寄付されればいいと皮肉った。

5月31日に大坂は全仏オープンからの棄権を表明。さらに、「2018年全米オープン以降、長い間うつに悩まされてきて、本当に対処するのに苦しみました」と、うつ症状で悩まされていることも打ち明けた。

もともと内気な女の子で、人前で話すのが得意ではなかった大坂は、自分のテニスの成績が飛躍的に良くなっていくのと同時に、瞬く間に世界中で注目を集める存在となった。多くのメディア対応を要求されることが増える中で、彼女の心は疲弊してしまい、メンタルヘルスにダメージを受けてしまったのだった。全仏オープン後、一時ラケットを置いた大坂は、イギリス・ロンドンで開催されるグランドスラム第3戦・ウィンブルドンも欠場して回復に努めた。

最近は、少しずつですが、気持ちを整理しています。私にとって、自身のメンタルヘルスの状態を告白するのは、とても勇気のいることでした。この問題には、これからも向き合い続けていかなければならないと思っています。

■東京五輪で金メダル獲得の期待
そして、東京オリンピックが、全仏オープン後初の公式戦参戦となる。

まずは、大坂の心身が、どれだけ回復しているのか気になるところだ。世界ランキング2位の大坂はメダル候補として期待され、さらに母国日本で開催されるオリンピックなだけに、否が応でも注目の存在となる。大坂のテニスの調子だけでなく、彼女の心が本当に回復できているのか見ていかなければならない。

東京都では新型コロナウィルス感染症拡大による緊急事態宣言が発令中で、異例づくしのオリンピック開催となる。選手たちはバブル(大会会場と選手村での隔離空間)の中での行動を強いられる。ただ、大坂は、プロテニスツアーの中で、すでにバブルは経験済みなので、テニスに悪影響が出ないようにうまく対処できるのではないだろうか。むしろ初体験となる選手村生活にうまく馴染めるかがキーポイントになるかもしれない。

東京オリンピック・テニス競技(7/24〜8/1)は、有明コロシアムおよび有明テニスの森公園で開催されるが、新型コロナウィルス感染の影響を踏まえて無観客での試合となる。難しい状況下ではあるが、大坂は、自らの力を出し切ることを誓う。

このような状況で東京オリンピックの開催に携わっている日本をはじめ、世界中の医療関係者の方々に心から敬意を表します。オリンピックは全力を尽くします。母国日本の皆様と、この星の全ての皆様に、感謝と愛を込めて。

大坂が東京でどのようなプレーを見せてくれるのか楽しみは尽きない。

文=神 仁司
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