急増する「DH解除」…9回打ち切りがベンチワークに与える変化
【(C)パ・リーグ インサイト】
DHがいなくなり、投手に打席が回るリスクも負うため、その策が取られるのは基本的に攻撃より守備固めに専念したいタイミング。つまりリードしていて逃げ切りたい、あるいは同点で終わらせたい試合終盤だ。そして延長戦が行われず9回打ち切りが決まっている2021年シーズン、その数は増え続けている。ここでは、パ各球団のDH解除の回数や状況を確認し、特別ルールが試合運びに及ぼしている影響について見ていきたい。
DH解除を積極的に使っている千葉ロッテ、オリックス
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しかし2021年シーズンは9回打ち切りが確定しているため、9回表が終了すればもう攻撃回が回ってくることはない。延長戦のことを考えず守備に専念すれば、自然な流れとしてDH解除の頻度は増すだろう。
また、DHを解除したチームがホームチームだったケースは1回(4月20日のオリックス)だけで、ほかのケースはすべてビジターチームだった。9回表が終了し、攻撃面でのリスクが生じない状況でこの策を取るのが最も合理的なため、それも当然の傾向といえる。
リードしているチームの戦略
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また、唯一ホームチームでありながらDHを解除した4月20日のオリックスに関しては、9回の時点で8点リードと大きな差をつけていた。余裕があったからこそ、野手を減らすことのリスクがより大きくなる後攻であるにもかかわらず、DH解除に踏み切ることができたと考えられる。
8回からDH解除を決断するケースは、勝ちパターンの逆算?
そういった逆算の象徴的な例となるのが、4月29日に千葉ロッテが見せた采配だろう。この試合では8回裏からセットアッパーの唐川侑己投手が投入され、指名打者の角中勝也選手の代走として出場した和田康士朗選手が、DH解除に伴ってセンターに入った。9回表にその唐川投手に打席が回ったため、鳥谷敬選手が代打に。そして9回裏はクローザーの益田直也投手がマウンドに送られ、そのままリードを守り抜いた。
この試合では代打の駒が残っていたこともあり、DH解除した後に投手に打順が回った際のリスクを最小限としていた。通常であれば守備に回すことができない指名打者の位置で代走に出た選手を、スムーズに守備固めに移行させていた点も含め、9回打ち切りならではのベンチワークを見せていたと言えよう。
シーズンが深まるにつれて新たなアイデアも生まれるか
延長戦が10回までに短縮された2020年と同様に、今回のルール変更も各球団の試合終盤の戦いぶりに変化をもたらす。今後も同じ傾向が続くのか、あるいは進化したアプローチが始まるのか。各チームの動きに、注目してみる価値は大いにある。
文・望月遼太
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