本日初登板! 田中将大メジャー7年間の投球スタイルの変遷と「3つの強み」を探る
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メジャーでも指折りを証明した「制球力」
通常、強打者揃いのメジャーに活躍の場を移した日本人投手は、三振を奪うペースはある程度維持しながら、四球を与える割合が増す傾向にある。だが、田中将は日米での通算奪三振率(8.47/8.46)とともに、与四球率(1.88/1.78)でもほぼ変わりがない。
【筆者作成】
メジャーでは、打者のパワーはもとより、田中将が海を渡った14年はリーグ全体が過渡期を迎えていた。10年台前半は「投高」に傾いていたが、15年からは本塁打の飛躍的な増加に伴い、投手全体の防御率も上昇傾向。ホームランが出やすいヤンキー・スタジアムを本拠地とした田中将は、17年にリーグワースト3位の35本塁打を浴びるなど、「打高」に転じる流れの憂き目に遭った。
日本人投手が必ずと言っていいほど直面する「メジャーの洗礼」。田中将の制球力をもってしても、そこは避けて通れなかったが、逆を言えば日本球界復帰により一発の脅威は薄れる可能性が高い。今年のオープン戦では3登板で3四球しか与えず、被弾も1本のみ。開幕直前に判明した右足の負傷は気掛かりだが、万全なら日米で冴えた制球が大きく乱れるとは考えられにくい。安定してゲームメイクする能力は、最も再現性が期待できそうだ。
縦に変化する「二枚刃」の切れ味
まず、海の向こうでもセンセーションを巻き起こしたスプリッターだが、ここ数年は落差が低下し、以前ほど空振りが奪えなくなっている。18年から縦の変化量(マウンドの高さ10インチを含む)は平均34.0インチ→31.9インチ→27.9インチと減る一方で、3年の間に約15センチも落差が失われた。その結果、空振りを奪う割合は36.2%→18.7%→23.0%とブレーキがかかっている。それでも低めに集めて、被打率は.210→.254→.207と大幅な上昇は避けているが、当時とイメージはやや異なるようだ。
昨季は短縮シーズンのため投球数自体が少なかったが、それ以前から田中将がスプリッターの落ち方に苦心する様子は何度も伝えられていた。もはや公然の秘密である非公式でのボール変更も影響したか、思い通りに操れなかったとの本人のコメントもあり、一過性の現象とは受け止められがたい。
【筆者作成】
直近2年はスライダーで最も多く三振を奪っている事実にも、この球種に対する田中将の信頼が透けて見える。球種別の奪三振数も、近年になってスライダー(383)がスプリッター(359)を追い越した。
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昨季のパ・リーグでは、スライダーに栗山巧(埼玉西武)が.333、柳田悠岐(福岡ソフトバンク)も打率.325と好成績を残し、フォークには吉田正尚(オリックス)が打率.449と破格の数値を記録している。チームの勝敗を左右するような場面では特に、リーグを代表する打者たちに対して、田中将が「二枚刃」をどう駆使するか見物だ。
攻め方の引き出しが増えた「投球術」
ヤンキースに移籍した当初の14年は、あらゆる持ち球を織り交ぜていた。翌15年はよりバランスが良くなり、全球種とも投球割合7.2%以上の配色グラフは7年間で最も均整がとれている。だが、最初の2シーズンとも4シームは被打率3割以上で、被本塁打は最も多く、明確に打ち込まれたボールだった。
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しかし、そのシンカーも、翌17年以降は被打率.340→.382→.375と捉えられてしまう。「バットに当てられると危険」。そうした認識が、「打高」化に向かうメジャー全体に浸透するなか、対抗策として潮流になった「高めへの4シーム」を田中将も採り入れた。
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1、2年目は右打者の外角と左打者の内角を軸に、全体へ散りばめるように配球していたが、近年は高め中心にはっきりとシフト。例えば、14年は高めのストライクゾーン外に44球しか投げていないが、19年は385球も投じている。使い方を変えてからも被打率は変わらず3割台を推移したが、空振りを奪う割合が上昇した。
直近3年間の田中将はスライダー、スプリッター、4シームの3球種を主体に投球している。19年は主要3球種だけで投球割合の9割が占められ、昨季も86.5%だった。そこに、浅いカウントではカーブでストライクを稼ぎ、バットの芯を外すために時折、シンカーやカッターを交えている。
【筆者作成】
過去の傾向からピッチングの輪郭は浮かび上がるが、今季もそれらを踏襲するのか、今までとはガラッと違う攻め方も見られるのか。間もなく、マウンドの上で明らかになる。
文・藤原彬
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