環境教育体験レポート:moriccoと裸足の道の体験
【環境教育体験レポート:moriccoと裸足の道の体験】
そこには、山を切り開いたような、校庭ほどの広さの場所がありました。
先ほどまで綺麗に整列していた幼稚園児が、ランダムに走り回っています。まるでエントロピー増大則・・・!ひたすらに走っている子、急な坂を器用に登る子、何かにとりつかれたように落ち葉を拾い集める子、工具を使って丸太を加工する子、、、よく見ると奥の方にあるブランコで楽しむ子も(木の枝からブランコが垂れている・・・?アニメで見た光景!?)。どの子も、みんな一生懸命です。当然どろんこです。
【©FC. IMABARI】
両手いっぱいに木の枝を抱えながら下り坂を走ってきた一人の男の子が、案の定、盛大に転びました。先生、見てましたよね、注意しないんですか。
「ここでは『あぶない』『やっちゃだめ』は言わないルールなんです」
【©FC. IMABARI】
公園で事故が起こるたびに遊具そのものが危険視され、悪者にされてどんどん遊具がなくなっていると聞きます。なんでもかんでも親が先回りして、子どもに立ちはだかる障害を取り除いてしまって、結果的に経験・成長のチャンスを奪ってしまっている、そんな状況に対する忸怩たる思いが、このルールを作らせたのだと言います。
人は誰しも経験から学びます。母親のお腹から出てきてから、常に自分の外の世界との相互作用を通して「これをこうするとこうなる」という学びを積み重ねていきます。友だちとのコミュニケーションも、硬いものにぶつかると痛いことも、物理の法則も、昆虫や鳥などの生き物のことも、そうした経験・体験を経た学びは自分の血肉となって、大人になってからも大いに役立つのだと思いました。 と、気が付けば、先ほどまで敷地ギリギリまで四方八方に散らばっていた園児たちが、ブレークショット前のビリヤードのように整列していました。お弁当の時間です。親御さんがわが子に持たせた色とりどりのお弁当が並んでいます。私も学生時代はお弁当生活だったのですが、お弁当をあけるドキドキとその直後の喜びの瞬間ってすごく幸せですよね。NHKの『サラメシ』でサラリーマンがお弁当を食べる様子を最近はよく見ていましたが、サッカーボール型のおにぎりやキャラ弁に喜ぶ園児たちの姿にすっかり私も癒されました。
私たちはお弁当ないけどおなか空いてきたな、、、と寂しく思っていたら、園長先生が園児たちのために焼いていた焼き芋をお裾分けしてくださいました!こんなふうに焚火をすることも、みんなで焚火を囲んで焼き芋を食べること(園児たちのうらやましそうな眼差しを尻目に!)も、なかなか都会では難しいですね。
【©FC. IMABARI】
靴を脱いで、靴下も脱いで、裸足になって歩くための道がありました。一緒に行った先輩は「裸の道」と勘違いしていたようですが・・・脱ぐのは靴下だけで大丈夫ですから!
さて、あなたは一日のうちどれぐらいの時間、目を閉じていますか?
裸足の道は、外で裸足になるという非日常に加えて、目隠しをするという非日常も加わります。知らない土地で裸足(服は着ている)と目隠し。この状態になると何が起こると思いますか?
(とりあえず不安・・・)
それに尽きます。この先、何が待ち受けているのだろう・・・急に、黒澤さんにつないでもらった方の手の感覚が敏感になりました。次の一歩がどんな道に続いているのか、下り道なのか上り道なのかもわからない不安の中、恐る恐る一歩二歩踏み出し、足の裏の感覚が脳内にイメージを運びます。
(これはなんだ?石か?硬い土か?)
自分の足が土と石の違いすら分からないことに戸惑いを覚えながらも進むと、今度は「クシャ、クシャ」という音。これはおそらく落ち葉だろう・・・あ、今度は草っぽい感じ・・・芝生?と思ったら次は木かな?でも「ポコポコ」音がするから薄い板・・・?音や匂いなど視覚以外の五感をフル稼働させ、まさに「全集中」です。
足と耳からの情報を頼りにあれこれと考えながら、トラック一周ほども歩いたような気になりましたが、黒澤さんの合図で目隠しを取るとせいぜい50mほどしか歩いていませんでした。途中、結構な坂を上り下りしたと思ったのですが、目で確かめると自分の膝ぐらいの高さ!いかに自分が日ごろ目からの情報に頼っているかを思い知らされました。
ちなみに東京に戻った後、あるアート展で、同じ香りのスチームを浴びながら花束を見ている時と土や草を見ている時では感じる匂いは違うか、という実験を行いました。結果花束を見ている時はフローラルな甘い匂い、土や草を見ている時は自然の匂いがしました。私の嗅覚はなんとも適当なものです。でもそれほどに視覚情報は影響力を持っているということ。裸足の道では目隠しをしたからこそ、きっとあのような自然への没入感を体感することができたのだと思います。歩きながら吸った空気はなによりも澄んでいて、一歩を踏み出す不安も、次第に次はどんな世界なのだろう、という好奇心に変わっていました。
【©FC. IMABARI】
次回は地球の道の体験レポートをお届けします!地球46億年の歴史を460mの道に置き換えたという「地球の道」を歩いて地球の歴史を学び、これからの私たち人類の生き方を考えました。お楽しみに!
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ