「2030年までに世界の海30%を海洋保護区へ」WSLが全世界のサーファーに署名を呼び掛け

チーム・協会

【WSL】

WSLが、海を守る新しい国際キャンペーン『We Are One Ocean』を先月末に発表した。「30X30」と題して、2030年までに世界の海の30%を保護区に指定するよう世界各国の首脳に圧力をかける狙いで、世界中のサーファーや海を愛する人々に署名を呼び掛けており、日本語のサイトも用意されている。

このキャンペーンはWSLの非営利組織WSL PUREが主導し、サーフライダーファンデーション、パタゴニア、PADIなど60以上のNGOと企業が協力。今年予定されている生物の多様性に関する国連会議で「30X30」が採択されることを目指している。

イタロ・フェレイラもWe Are One Ocean 30X30に賛同してキャンペーンをPR 【WSL / Tony Heff】

WSLで海洋責任を担当するリース・パチェコ氏はキャンペーンの発表に際して、「海の回復力を支えるために、高水準の保護区を作ることが素晴らしい手段だと思う。これからの世代のために貴重な海洋環境や多様性を守るまたとない機会だ。これは海のためだけでなく、人間のためでもある。海を守り、30X30を実現することで全ての生き物にとってより健康な未来を保証できる」と述べた。

「サーファーとして、海は私の家であり、職場でもある。それを守るために、自分にできることを可能な限りやっていきたい。自分のストーリーや海に対する愛を共有することでより多くの人がこの署名に賛同することを願っている」
2019年WSL男子ワールドチャンピオン イタロ・フェレイラ

WSLサイトには、2019年ワールドチャンピオンのイタロ・フェレイラ等著名なサーファーや科学者、環境活動家などによるPR動画が数多く公開されていて、今後もバレンタインの週末にかけて複数のオンラインイベントが予定されている。

昨年、五十嵐カノアをアンバサダーに海や環境を守るプロジェクトで話題になったコスメ大手、資生堂もオフィシャルパートナーとしてWe Are One Oceanキャンペーンに参加している。

「計測史上最も温暖で酸性化した海」3030の意義とは

将来の世代のためにきれいで健康な海を残したい 【(c) WSL】

 (キャンペーンHPより抜粋)

海は、化石燃料の燃焼により人類が発生させてきた余剰熱の90パーセント以上と二酸化炭素(CO2)の4分の1を吸収し、気候変動による最悪の荒廃から地球を保護するのに役立ってきた。

海は現在、測定開始から最も温暖であり、この1400万年で最も酸性化しており、酸素の供給量も減っている。こうした変化は、極小プランクトンから重要な漁場、巨大なクジラに至るまで、海の全ての生物に影響を与えている。

私たちが海のためにできることは、CO2の排出を減らすだけでなく、人間の産業的な活動を禁止する海洋保護区(MPA)を作り出すことにより、乱獲、沖合石油開発、海底採掘、生息地の破壊といった様々なストレス要因を大幅に減少させること。

2030年までに海の30パーセントを保護する国際目標である「3030」は、海が持つ気候変動からの回復力を大幅に高め、魚類による食糧や仕事の保障を強化し、クジラ、海鳥、サメ、カメその他の絶滅に瀕している海洋生物に安全な避難場所をもたらす。2030年までに海の30パーセントを保護することによる利益は、何千億ドルにも達すると見込まれている。

この目標を確実なものにするには、完全に保護されたMPAの創出を可能とし、世界の海のほぼ3分の2にあたる公海での人間の活動を規制する強力な新しい国際条約が必要。現在、公海には基本的な現代的管理手段がなく、完全に保護された海洋保護区を作り出す法的メカニズムも存在しない。

米国の新政権が政策を一変、気候変動への対応を強化

海を守るのは海洋生物のためだけではなく、地球上すべての生き物のためだ 【(c) WSL / Cestari】

米新大統領ジョー・バイデンは1月20日に就任してからわずか1週間で前代未聞の30以上の大統領令に署名をしたと報じられている。その中気候変動に関する政策を路線変更して、公有地でのガス田、油田の新規リースを凍結、2030年までに海上風力発電量を2倍に増やす方針を示している。

「これ以上待つことはできない。新型コロナウイルスに対する包括的な対策が必要であると同じように、気候変動の危機に対しても全国レベルの包括的な対策が必要だ」
バイデン米大統領

ホワイトハウスの発表によると、バイデン大統領が、可能な限り国有地や海域における新規のガスや石油の掘削契約を保留することに加え、既存の契約の再検討を指示して、2030年までに国有地及び海域の30%を保護することを目指している。

バイデン新政権は、米国が世界をリードする覚悟で、気候変動に関する諸課題は国家安全及び外交政策の面でも優先課題に指定されている。アメリカがこのような方針を示したことは、世界にとってもインパクトがあるが、気候変動の問題はいずれの危機も一国だけでは解決できない。そこで問われるのが世界全体としてどう取り組むのかという点だ。

世界全体としてどう取り組むか。サーファーから声を届けよう

今回のキャンペーンは、国連会議で「30X30」が採択されることを目標としているが、国連が2021年からの10年間をUN Decade of Ocean Science for Sustainable Development(国連海洋科学の10年間)に指定していることが背景にある。
これは、今後10年で国際協力を強化し、外洋と海岸を持続可能かつ健康な形で利用や保護していくため、各国の科学者を集めて海洋科学研究や政策提言を促進しようとするもの。
この大きなムーブメントのなかで、重要なのは具体的な目標を掲げ、実行していくことだろう。今回の「30X30」が採択されれば、その具体的な指針の1つになる。

2030年までに世界の海の30%を保護区に。海を愛する者として世界中のサーファーから声を届ければ、きっと大きな力になるだろう。行動する時は今。署名はWe Are One Oceanキャンペーンの日本語サイトからできる。

執筆:ケン・ロウズ
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