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撮影:池田有輝

早大の番記者が見た早川隆久。大学野球での挫折の先にあった栄光

パ・リーグインサイト

「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」で4球団競合ののちに楽天イーグルスからドラフト1位で指名を受けた、早川隆久投手(早大)。これからプロ野球選手としてのキャリアをスタートするルーキーを、早稲田スポーツ新聞会で早川選手の取材を担当していた学生記者が紹介する。

投手への再挑戦と甲子園での活躍

 中学では軟式野球部に所属していた早川。今となっては意外なようにも思えるが、当時は2番手ピッチャーとして、主にファーストや外野を守っていたという。そして、千葉県内でも屈指の強豪校である木更津総合高校に進学。最初は軟式球とのボールの違いに苦しみ、投手ではなく野手として数カ月を過ごした。しかし、外野手として出場していたオープン戦で「自分が投げたほうが試合が終わるのが早いかも」と思い、監督に「投げたいです」と直訴したことで、投手への再転向が決定。監督には「めちゃくちゃ怒られた(笑)」そうだが、ここから投手としての早川のキャリアがリスタートした。

 木更津総合高時代の活躍は熱心な野球ファンならご存じの通りだろう。2年春、3年春、3年夏と甲子園に3度出場し、ベスト8にも2度進出。今ドラフトで千葉ロッテに1位指名された法大の鈴木昭汰(常総学院)らと共に「関東左腕四天王」と呼ばれ、さらにはU18日本代表にも選ばれた。この時の代表は粒ぞろい。なんせ投手は今井達也や藤平尚真、堀瑞輝など、後に早川以外の全員が高卒でプロ入りしているほどだ。そんななか、周りの投手とのレベルの差を痛感した早川は、投手でただ一人プロ志望届を提出せず、東京六大学野球の名門・早稲田大学への進学を決意したのだった。

2人の先輩から学んだこと

1年春:防御率5.12  1勝2敗 19回1/3
1年秋:防御率6.00 0勝1敗 9回
2年春:防御率4.80 0勝2敗 15回
2年秋:防御率1.72 1勝1敗 15回2/3
3年春:防御率2.09 3勝2敗 51回2/3
3年秋:防御率3.00 2勝4敗 45回
4年春:防御率2.12 1勝0敗 17回
4年秋:防御率0.39 6勝0敗 46回

通算 :防御率2.51 14勝12敗 218回2/3

 大学4年間の成績は上記の通りだ。1年時には「実力がなかった」と振り返るように、レベルの高い東京六大学の壁にぶち当たった。特に自身初となる早慶戦のマウンドでは、ほろ苦い経験をしている。2年生ながら慶大の主軸として活躍していた柳町達に逆転満塁ホームランを浴びたのだ。「次の日はもう絶対に投げられない」と思うほど落ち込んだという早川。しかし、そんな早川に声をかけたある先輩がいた。2学年上の先輩・小島和哉だ。

「ずっとくよくよしてても意味ないし、使ったのは監督なんだから、打たれたのは別にお前が悪くないんだよ」。この言葉に助けられた。実は同じ試合で、小島も満塁弾を浴びている。にもかかわらず、小島は切り替えが早く、さらには「俺も一緒の身だよ」と後輩を案じる余裕まであった。小島の場合は逆転弾ではなかったため、早川の方がダメージが大きいことは想像に難くないが、それでも前向きなエースの姿は早川の心を動かした。「ポジティブにいることでマウンドでもポジティブになれるし、強気にもなれるから、そういうところから直していかないといけないんだよ」。こうして早川は小島から“野球に対する心構え”を学んでいった。

 また、3学年上の先輩・大竹耕太郎からも多くの学びを得た。その最たるものが「投球フォームのリズム」だという。早川いわく「自分はリズムがバラバラだったので、リズムよく一連の動作を進めるために、足を上げるスピードをちょっと早めた」。2年の8月に見た大竹のプロ初登板時の投球リズムを参考に、位置エネルギーを生かした投球フォームへとマイナーチェンジ。秋以降の成績の向上につなげたのだ。

昨秋の森下を超える成績を残している

 このように先輩たちから多くのものを学んだ早川は今季、エースとして早大を5年ぶりのリーグ優勝に導く活躍を見せた。個人成績はまさに“化け物”クラス。46回を投げて被安打18、74奪三振、防御率0.39、4完投2完封、奪三振率は驚異の14.48と、どこをとっても圧巻の成績を残した。これは、同じ東京六大学出身の森下暢仁(広島)が昨秋に残した54回、被安打38.53奪三振、防御率1.00という成績と比べても遜色のないどころか、むしろ上回っているレベルだ。もちろん、イニング数が異なる上に、昨年は柳町を筆頭に4年生の打者のレベルが高かったこともあるため、単純な比較はできないだろう。しかし、セ・リーグの新人王筆頭候補との呼び声も高い森下以上の成績を残す早川に、期待せずにはいられない。

「野手の先輩方と戦ってみたい」

 ドラフト会議を終え、取材にうかがった際には「パ・リーグに行くことがすごく楽しみ」だと話していた。その理由を早川に聞くと「中村奨吾さんだったり、石井一成さんだったり、鳥谷敬さんだったり、パ・リーグには早稲田の選手が多いと思うので、野手の先輩方と戦いたい」からだと笑顔で教えてくれた。また、楽天には茂木栄五郎、福井優也と2人の早大卒の先輩がいるため、早川も「心強い」と安心している様子。かつて日本ハムに早大出身の斎藤佑樹、有原航平、石井、そしてなぜか杉谷拳士も所属している「早稲田会」なるものが存在すると話題になったことがあったが、楽天でも同じような会が開かれたら面白いかもしれない。そしてもちろん、小島や大竹ら、早稲田のユニホームを背負って共に戦った先輩たちとの投げ合いにも注目だ。

 ちなみに、ドラフト1位指名を受け、前述の柳町からは「おめでとう。また打たせてもらいます」と連絡がきたそうだ。プロでの「リベンジ」なるか――。因縁の対決も忘れてはならない。

 プロでの目標は「新人王」だという。早川隆久の物語はまだまだ始まったばかり。新たなステージへと挑戦する早川を、これからも応援し続けたい。


早稲田スポーツ新聞会・山田流之介

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