攻めの姿勢を貫き、開幕戦で難敵・岡山シーガルズ相手に逆転勝利!【NECレッドロケッツ】

NECレッドロケッツ川崎
チーム・協会

【NECレッドロケッツ】

例年とは違った想いで迎えるシーズンがついに開幕した。
今年2月頃から世界的に拡大した新型コロナウイルス感染症の影響で、多くの人々の日常が奪われた。バレーボール界も例外ではなく、3月の天皇杯・皇后杯全日本選手権大会ファイナルラウンド、5月の黒鷲旗全日本選抜大会、6月のV・サマーリーグと公式戦が軒並み中止。レッドロケッツも活動自粛を余儀なくされ、選手たちは約1ヶ月半の間、ボールを使った練習はまったくできなかったという。

強化してきたオフェンスを初戦で出し切ることが大事

キャプテンの山内は「Vリーグも開幕できるかどうかわからない中で、どういうふうに準備していけばいいかという不安はありました」と明かす。
それでも「この10月18日が私たちの初戦と決まった時に、そこに向けて準備するだけ。強化してきたオフェンスを初戦で出し切ることが大事」と切り替えた。やるべきことと目指すターゲットが明確になり、チーム全体が良いモチベーションで、SAGAサンライズパーク総合体育館のコートに立っていた。

2020-21 V.LEAGUE DIVISION1、レッドロケッツの初戦の相手は、昨季準優勝の岡山シーガルズ。レッドロケッツとしては昨季3戦3敗の難敵だったが、金子監督はリスペクトの思いこそあれ、過度に警戒するようなこともなかった。

「岡山さんに対して何か準備するというより、自チームの準備というところしか意識していませんでした。昨シーズンの結果は過去のことで、今日からまた横一線のスタート。岡山さんとは日本人同士の戦いになりますから、負けるわけにはいかないという強い覚悟で戦いました」

「岡山さんに対して何か準備するというより、自チームの準備…」 【NECレッドロケッツ】

スターターは、セッターが澤田、対角のライトに曽我が入り、レフトは古賀と廣瀬、センターには山田と島村、リベロは小島というラインナップだが、ベンチ要員を含めて総力戦で臨むスタイルは、これまでと一切変わらない。ただ、古賀が「1セット目は硬さがあった」と振り返ったように、曽我の先制点の後は常に追いかける展開を強いられ、19-25で落としてしまう。

「1セット目は硬さがあった」と振り返った古賀 【NECレッドロケッツ】

流れを引き寄せるきっかけを作ったのが、途中交代で入った選手たち

第2セットも廣瀬のブロックや山田の連続得点が決まったものの、完全にペースを握ったとは言えなかった。

むしろ走られそうになる相手に必死に食らいついているという印象の方が強かった。そうした状況の中、流れを引き寄せるきっかけを作ったのが、途中交代で入った選手たちである。

第1セット中盤に投入された塚田は「チームの雰囲気が暗い感じだったので、自分が絶対に声を出して盛り上げるつもりでした」と、持ち味である高い位置からのトスワークでリズムを生み出していく。

持ち味である高い位置からのトスワークでリズムを生み出した塚田 【NECレッドロケッツ】

第2セット13-13の場面で送り込まれた柳田は、「自分に求められていたのは決定打。後から入るからこそ、外から見ていてどういうプレーが決定打につながるかを考えていました」と話す。それがいかんなく発揮され、柳田の思い切りの良い3本のスパイクなどでレッドロケッツが一気に20-13と駆け抜けた。セットポイントでは同じく途中交代の山内が締めくくり、25-19で第2セットを奪い返す。

思い切りの良いスパイクで流れを手繰り寄せた柳田 【NECレッドロケッツ】

第3セットも山内のサービスエースや柳田のブロックで、6-2と好スタートを切った。
一旦は逆転を許したものの、16-15から山田の2本のブロックが炸裂。終盤には古賀や山内がしっかり決め切って、このセットも25-19でものにした。

夏場から強化してきたというオフェンスにばかり目が行きがちだが、この日はディフェンス面でほとんど綻びを見せなかった。

金子監督が「サーブレシーブが比較的安定していたので、オフェンスの方に意識を持っていけた」と語ったように、サーブレシーブ成功率は古賀の88.0%を筆頭に、チーム全体で72.2%と高水準。ブロックも9得点を挙げた以外に要所でワンタッチを取り、後方で小島らがきっちり拾ってつなげる。粘り強さには定評がある岡山のお株を奪うようなプレーで、白熱のラリーを制する場面が次第に増えていった。

チームにディフェンスでの安定感をもたらした小島 【NECレッドロケッツ】

コート内で自然発生的に生まれた声がけ

第4セットも立ち上がりは山田、島村のセンター線が機能し、嫌な流れになりかけた所で古賀、山内、柳田らサイドアタッカーが踏ん張った。

15-16からの3連続得点で一歩抜け出したとき、コート内で自然発生的に生まれた「先にどんどん行くよー!」という声掛けが、チームの充実ぶりを物語る。古賀と島村が決めて相手を引き離し、最後は山内が連続サービスエース。25-18でこのセットも奪取したレッドロケッツが、開幕戦を見事に勝利で終えた。

尻上がりに調子を上げた島村。 【NECレッドロケッツ】

「今シーズンは総力戦で、オフェンスを強化して頑張っていこうというのをチームのテーマとしてやってきました。2セット目以降、しっかりその形が出せたと思います」 試合後、古賀はそう言って胸を張った。

それと同時に、試合に勝てたこと、力を出せたこととは別の意味で感慨を抱いている選手も少なくなかった。その一人が柳田だ。

「ファンのみなさんの前でバレーをできることが嬉しかった。(公式戦ができない時期に)チームで紅白戦をやったりはしましたが、やはりいろいろな方に見てもらう中でプレーするのは全然違うと改めて感じました」

ファンの前でバレーをできる喜びを噛みしめる柳田 【NECレッドロケッツ】

より多くのサポーターの存在がチームの背中を後押ししてくれる

約9ヶ月ぶりとなる公式戦で、重圧のかかる開幕戦。しかも相手は手強い岡山という難しい試合を乗り切り、選手たちは大きな自信をつかんだに違いない。

次節は、川崎市とどろきアリーナでの今季最初のホームゲーム。より多くのサポーターの存在がチームの背中を後押ししてくれることだろう。レッドロケッツの2020-21シーズンのチームスローガンは、『挑続〜For the TEAM〜』だ。4年ぶりのリーグ制覇を目指し、チーム一丸となってライバルたちに挑み続ける。

最高の形で10・24『Vリーグ屈指の感動空間・とどろきアリーナ』でのホーム開幕へ 【NECレッドロケッツ】

「こういう状況の中、Vリーグが開幕できたことをすごく嬉しく思う。」

新たな観戦環境ではコート上の音が響き渡る。その環境下での掛け声が一際目立った山内キャプテン 【NECレッドロケッツ】

Hot Topic 山内美咲キャプテン《チーム最多の25得点》

歴代のキャプテンの中でも、これほど厳しい時期を過ごさなければいけなかった選手は他にいないかもしれない。
これまでは、たとえ試合で負けて悔しい思いを味わっても、練習でレベルアップして雪辱する機会はいくらでもあった。しかし、新型コロナウイルスという不可抗力によって、バレーボールをできない、公式戦を戦えないという日々が長く続いたのだ。

試合後のヒーローインタビューで、勝利の要因を聞かれた山内は、まず「こういう状況の中、Vリーグが開幕できたことをすごく嬉しく思います。ありがとうございます」と、笑顔で感謝の気持ちを表した。紛れもなく実感が込められた言葉だった。

この日の山内はベンチからのスタートだったが、第1セット中盤にさっそく出番がやってきた。ライトからのパワフルなスパイクは今季も健在。ブロード攻撃に入る島村の後ろから回り込んで押し込むなど、攻撃面での多彩さも披露した。アタックは40本放って20得点。サービスエースも3本決め、途中出場ながらいずれもチーム最多の数字をマークした。ディフェンスでもブロックの2得点を含め、サーブレシーブやディグで奮闘し、攻守における活躍でチームを逆転勝利に導いた。

「開幕戦ということもあり、少し独特な雰囲気の中でしたが、サーブで攻めて、相手の崩れたところからブロックディフェンス、そしてそこからのオフェンス展開というところを意識してやり続けた結果、このような形で勝てたのは良かったです」と本人は語った。

キャプテンとして2年目のシーズンに突入した。
チームを引っ張るという点では「勝つ気持ちを見せる」ことを意識しているという。「私自身、声を出してそういう姿を見せることで、自分もやってやろうという気持ちが上がってきます。劣勢時などには古賀選手が チームの雰囲気を良くしようといろいろな声をかけてくれますが、それに甘えず自分も苦しい時だからこそ自分にしかできない声かけを意識してやっていきたい」

キャプテンの重圧や重責はあるだろうが、山内にはその役割を果たせる資質があるからこそ、力強くチームを引っ張っていってほしい。

(取材・文:小野哲史)

今季スローガン『挑続』。リモート50の環境下で迎える24日の開幕戦はほぼ完売状態で、25日はまだ残席あり。大きな声援は送れずとも、今季ならではの空間づくりにファンと共に挑む。 【NECレッドロケッツ】

  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

V.LEAGUE DIVISION1 WOMEN(V1女子) に加盟する女子バレーボールチーム。日本リーグで優勝1回、Vリーグでは優勝7回、天皇杯・皇后杯1回、黒鷲旗でも2回の優勝実績がある。2021年、これまでの歴史を継承しながら、更なる進化を遂げるためチームのリブランディングを実施し、ホームタウンを神奈川県川崎エリア、東京エリアとした。チームのエンブレムであるロケット胴体部の三層のラインは、ロケットに搭乗しているチーム、サポーター、コミュニティを表現。チームに関わるすべての皆さまに愛され、必要とされる欠かせない存在になることを目指す。

新着記事

編集部ピックアップ

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着コラム

コラム一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント