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浦和が川崎、神戸を抑え、Jリーグマネジメントカップ2019でJ1優勝！2年ぶり4度目

デロイトトーマツグループ 2020年10月1日 7:00

チーム・協会

【© URAWA REDS】

クラブチームの運営においては、試合に勝利するための「フィールドマネジメント」と同様に収益確保、そして事業拡大に向けた経営、すなわち「ビジネスマネジメント」が重要です。勝敗で決まるリーグ優勝とは別に、ビジネスマネジメントの側面で“優勝”を争うのがJリーグマネジメントカップ。今年で6回目となる最新版では、浦和レッズが僅差で川崎フロンターレを抑え、2年ぶり4度目の優勝を果たしました。

Jリーグマネジメントカップ2019は、Jリーグから公表されている各クラブの財務情報を中心にビジネスマネジメントにおいて最も重要なテーマである「マーケティング」「経営効率」「経営戦略」「財務状況」の4つの視点から合計13の指標を設定しそれぞれの評価を集計した結果をまとめています。

浦和は経営戦略分野で1位となり、その他のマーケティング分野、経営効率分野、財務状況分野も4位と、各分野で安定した強さを見せ、2位と僅か1ポイント差という接戦でしたが、見事優勝を勝ち取りました。優勝の要因としては、2位に倍近くの金額差をつけている入場料収入が挙げられます。入場料収入の裏側には一人ひとりのファン・サポーターの存在があり、こうしたクラブへのコミットメントの強い、質の高い収入を得られる基盤を有している点が結果に表れたと言えます。

一方で、今年のJリーグマネジメントカップは昨年にも増して混戦模様でもありました。前年優勝の川崎フロンターレ、初の100億円クラブとなったヴィッセル神戸など特筆すべき点が多々あります。そこで、13の指標のうち、今年注目のポイントを特徴的なクラブの動向とともに取り上げます。

平均入場者数大幅増：横浜FM、G大阪

1位となったのは浦和で33,860人。浦和はJリーグマネジメントカップの集計開始以来、唯一平均入場者数30,000人超を記録しており、これが先に述べた圧倒的な入場料収入にも繋がっています。一方、前年対比で特徴的なのが横浜FMとG大阪です。

横浜FMは2003年シーズン以来15年ぶりのリーグ優勝を果たした影響もあり、前年比+1,928人（+8.8%）の23,716人と大幅な増加を記録しました。
そして、興味深いのがG大阪です。カップ戦を加味した場合の平均入場者数は22,322人となり、同様の基準の前年入場者数20,138人を大きく上回りました。メインスポンサーであるパナソニックのデータ分析専門家とともに、来場者の顧客データを分析し、マーケティングや試合会場でのイベント企画に活用してきたことが、着実に成果に表れてきているものと推察されます。

スタジアム集客率　唯一の平均8割超：川崎F

1位となったのは昨年に引き続き安定的に高い集客率を保った川崎Fです。コロナ禍により当面困難な状況ではあるものの、「満員のスタジアム」を実現することは、スポーツ興行において最も基本的で重要な目標であるとデロイトトーマツは捉えています。その指標において川崎Fは金曜開催の1試合を除くリーグ戦16試合で80%以上を実現しています。

勝点1あたりチーム人件費：クラブ間格差は約8倍

この指標は、各クラブにおけるコストの中で最も大きな比率を占めるチーム人件費を、いかに効率的にFM面の結果（試合の勝利）へ結び付けられているか、ということを可視化するものです。2019年シーズンのJ1において最も効率的に勝点を獲得したのは大分で、勝点
1を18.3百万円で獲得したことになります。対して最下位の神戸は勝点1を獲得するのに
147.3百万円をかけたことになっており、その差は8倍以上にもなります。

勝点1あたり入場料収入：サポーター側の満足度を高めた横浜FM

この指標は、クラブ側の視点で言えば「勝点1をいくらで売れたのか」、となりサポーター側の視点で言えば「勝点1をいくらで買ったのか」と言い換えられる指標です。最も高く売れた1位は浦和でしたが、前年比で下落率が最大だったのが横浜FMです。
単純には、クラブ側はこの指標をできるだけ高くしたいと考え、サポーター側はこの指標をできるだけ低くしたいと考えるものと捉えられますが、本質的には競技成績を上げることにより、ファン・サポーターの満足度を向上させつつ、クラブはしっかりとその対価を入場料という形で得て、新たに選手強化や顧客体験の向上策に投資するという好循環を目指すものです。

売上高：神戸が初の100億円突破

2019年シーズンでの注目は、Jクラブの史上最高営業収入となる売上100億円を突破した神戸です。前年比で+1,774百万円となる大幅増収を実現し、100億円を大きく上回る水準となりました。営業収入増加の内訳は、スポンサー収入が+1,197百万円、入場料収入+420 百万円、物販収入+143百万円と全体的に伸びています。スター選手の獲得をうまく事業面での増収につなげています。

このように各指標を掘り下げると、各クラブチームのビジネスマネジメントの側面における取り組み、その効果、あるいは課題が明らかになってきます。気になるクラブのポジションや他の指標における注目点などはJリーグマネジメントカップ2019でご確認ください。

コロナの影響により入場料収入などの減少も予想されるなか、クラブチームの収益確保と持続可能な成長のためにも、改めてビジネスマネジメントの手腕が問われています。Jリーグマネジメントカップが、Jリーグはもとよりあらゆるスポーツのクラブチームを運営する方々のビジネスマネジメントを考える上でのヒントとして活用されること、またスポーツを通じてビジネス展開を考えるスポンサー企業、パートナー企業にとっての取り組みのヒントに繋がることを願っています。

次回は引き続き、JリーグマネジメントカップよりJ2の結果についてレポートします。

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著者プロフィール

デロイトトーマツグループ

デロイトトーマツグループは、財務会計、戦略、マーケティング、業務改革など、あらゆる分野のプロフェッショナルを擁し、スポーツビジネス領域におけるグローバルでの豊富な知見を活かしながら、全面的に事業支援を行う体制を整えています。またコンサルティング事業の他、国内外のスポーツ関連メディアへの記事寄稿などを通し、スポーツ業界全体への貢献も積極的に行っています。