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【サーフィン】あなたはWSL新方針に賛成派?反対派? チャンピオンシップツアーの未来とは

THE SURF NEWS「サーフニュース」

新型コロナウイルスの影響で中止が決定した2020年のWorld Surf Leagueのチャンピオンシップツアー。
同時に発表されたWSL2021年の新方針は過去に例がない画期的なものであったと同時にとても複雑なフォーマットだった…。

シンプルに伝えると2020年の11月にウィメンズ、12月にメンズのツアーがハワイからスタートして2021年の9月に野球、バスケットボールなどでは一般的なプレーオフが行われ、ワールドチャンピオンが決定する。
このアイディアはすでに2018年に試みたものだったが、ハワイのイベントのスケジュール変更に対してホノルル市長が許可を出さず、実現が見送りになった経緯がある。

しかし、WSLはパンデミックによって世界が混乱する中で新たな道筋を組み立て、QSも含めての新方針を発表したのだ。

今回はWSLの新方針を米メディア『SURFER』が行ったパット・オコーネルのインタビュー記事を元に紐解いてみる。

2019年のイタロとガブリエルのバトルが新方針に大きな影響を与えた 2019年のイタロとガブリエルのバトルが新方針に大きな影響を与えた PHOTO: WSL/Cestari

新方針を後押しした2つの理由

2019年にキーレン・ペローからWSLコミッショナーの座を受け継いだパット・オコーネルは今春のロックダウンの最中、カリフォルニア・サンタモニカのオフィスでワールドツアーの未来を考えていた。

「この状況が始まった時は、まあ大丈夫かなと思ったけど、状況が深刻になった時、私達に何ができるのかを考えたんだ。今までは一つのことに集中してしまい、必要な変化を起こす時間があっただろうか?この時間を使って今すぐにでも実現してみないか?とね」

パットは今回の新方針を後押しした最大の理由を2つのワールドタイトル獲得の瞬間だったと話す。

一つは2017年にジョン・ジョン・フローレンスが最終戦のパイプラインで2度目のワールドタイトルを獲得した時。

ガブリエル・メディナとのタイトル争いは白熱したものだったものの、直接対決ではなく、タイトル決定の瞬間にジョン・ジョンは自宅の庭にいて門には鍵がかかっていたためにWSLのカメラはその瞬間を捉えることができず…。

ドローンで祝勝パーティーの場面を撮影できたのがせめてもの救いだったが、プロスポーツとしてシーズンのクライマックスの瞬間を捉えられなかったことに不満を持ったのは間違いない。

二つめは2019年の最終戦。

イタロ・フェレイラとガブリエル・メディナのワールドタイトル争いがファイナルまでもつれ込み、直接対決によって決まった。

この勝負がプレーオフによって決まるタイトルがファンにとって最も興奮できる可能性があると証明したのだ。

「ガブリエルとイタロのファイナルは過去最大の観客数だった。今まで望んでいたものが現実になったんだ。興奮しながらビーチを歩き、オフィスに戻って分析をしたのさ。ビーチにいた皆んなが私と同じような気持ちだった。だからこそ、私達は毎年この素晴らしい瞬間に向かって選手を駆り立てるために今回の決断をしたんだ。ワクワクするでしょ?って聞くと皆んなが最高だよ言ってくれたのさ。新しいツアーはこのワールドタイトルの瞬間から逆算して誕生したんだ」

2017年 ジョン・ジョンのタイトルパーティー 2017年 ジョン・ジョンのタイトルパーティー PHOTO: WSL/Sherman

ハワイ・パイプラインから離れた理由

「THE WSL FINALS」と称するプレーオフのコンセプトは何年も前から描かれ、パイプラインとは別の場所に移動することにもこだわっていた。

1980年代のようにこれまでも何度かツアーがパイプラインから離れたことがあったが、その度にまるで何かの呪縛があるかのようにパイプ戻ってきた歴史がある。ツアーの重要な指標でもある伝統的なパイプマスターは古くからの人との結び付きが強く、商業的な側面が強いツアーの中でサーフィンの純粋な羅針盤としてあり続けていた。

「それぞれの場所にはストーリーがある。パイプラインにも確実にそれはあるんだ。最終戦を実施するには、そのパイプのストーリーとも戦わなければいけない。それは一つのスポーツの最高の瞬間を作り出すためには、独立して歩む必要があるんだ。」

パットはシーズンを終える舞台として、パイプラインは特別すぎる場所であると今回の変更の理由を述べた。

パットの言葉の他にも最終戦をハワイから移動させることには理由があった。

冒頭のホノルル市長の話でも分かる通り、ハワイは組織としてのWSLを歓迎していないと言われている。特にASPからWSLに名称を変更、その他にも数々の改革があったポール・スピーカーがCEOを務めていた頃はWSLの拠点に警備員が必要だったそうだ。WSLは全てをコントロールしたがったが、ハワイでそれはできないと気付いた。

その他の大きな理由として、盛り上がりに欠けるという点。

確かに2019年のイタロとガブリエルのタイトル争いは素晴らしかったが、20年間の平均で見ると多くのワールドタイトルは最終戦の前に決まっている。
ケリーは9月のスペイン・ムンダカで獲得したこともあるし、2016年の最初のジョン・ジョンのタイトルはポルトガルの冷たい霧の朝、ビーチにほとんど人がいない中で決まっていた。
ワールドチャンピオンが決まった後のパイプマスターは消化試合になってしまうのだ…。

また、ランキング的にタイトル争いに絡んでいなく、リクオリファイにも関係しない中盤の選手にとっても同じことが言える。

かつてツアーを回っていたパットも、「私を例にあげてみるよ。毎年ハワイには行っていたけど、ワールドタイトルを獲得することは出来なかった。私の仕事はツアーに参加することだけだった。パイプに着いた時はもう十分にやっていたし、基本的にはフリーサーフィンだったのさ」 と話している。

Billabong Pipe Masters Billabong Pipe Masters PHOTO: WSL/Masurel

「THE WSL FINALS」はどこで行われるのか?

「THE WSL FINALS」と称されるプレーオフはトップ5の選手によって9月に開催される。

開催場所は未定だが、12月から9月に移動させたことは何ヶ月も家を離れることを強いられる選手にとって大きな意味がある。
更に「THE WSL FINALS」の前にG-Land、J-Bay、チョープーと最高の波が続くため、ここでシーズンが終わっても来シーズンに向けてのモチベーションが下がることはないだろう。

「私達はまだ何も決めていない。数回の話し合いをして5つの場所を提案すると思う。どんなサーファーでも頭に浮かんでくるような場所になるかな」

「THE WSL FINALS」の開催場所にはいくつかの基準が設けられると言われている。

時期的に南半球のワールドクラスの波。近くにバックアップ可能な場所があり、コンテスト開催の権利が得られること。

以前に噂されていたのはインドネシアのメンタワイで、有料コンテストにすることだったが…。今回もインドネシアが最も有力で、他にもフィジー、メキシコなどが予想されている。

「THE WSL FINALS」はトーナメント方式 「THE WSL FINALS」はトーナメント方式 Graphic: WSL / THE INERTIA

2022年からのミッドシーズンカットについて

今回の新方針で最大の変更点は2022年からのミッドシーズンカットだ。

2022年のシーズン途中でメンズは36名が24名、ウィメンズは18名が12名にカットされる。つまり、シーズン前半に結果を残さなければクビになるということ。

ASPからWSLに変わり、ワールドサーフィンリーグという他スポーツのような名称になった時、多くの人はツアーのコンパクト化を予想していた。
一つのスウェルでコンテストを終えることが出来ず、誰も負けないノールーザーズラウンドが複数あったり、余り重要ではないサーフィンを見ること強いられた。
プロスポーツとしての理想的なツアーを実現するために全てコンパクト化する必要があったのだ。

選手の賛同を得るためにWSLが何を提示したか分からないが、「この変更はファン主導と言っても良いかもしれない。同時にスポーツ主導とも言えるかな。私達は賭け金を引き上げたんだ。サーファーからの支持は興味深かったよ」とパットはミッドシーズンカットについて口火を切った。

「もし、ファン主導の道を歩むなら、我々が提案した数字以上のカットを求める人もいるだろう。でも、それはこのスポーツにとって好ましくないことだと思う。最終的にはプロサーフィンの最高の環境を創るために凄い良いバランスだろう。この変更の重要なところはパフォーマンスだった。パフォーマンスが全てを左右する。最初のイベントから成績を気にしなければいけないのは、全く違うのさ。より激しく、よりスポーツらしくなる効果があるだろう。人数を絞って数日に集中させることで本当に特別なものに辿り着けるようになると思う」

今回の新方針の多くは常識的だと思うが、ここに辿り着くまで20年もかかっている。それがプロサーフィンの特質でもある。何十年にも渡って行われたコンテストをスポーツとして意味のあるフォーマットに修正するのは難しい。サーファーとして、今はツアーを運営しているパットも同意見だ。

「まだまだ進化しなければいけないことがある。それは全く新しい世界さ」

2020年の11月、ウィメンズから開幕する次シーズンだが、現在の新型コロナウィルスの状況から判断すると不透明と言えるだろう。ハワイはまだ観光客を受け入れていないし、パンデミックの中心地であるアメリカとブラジルのサーファーを受け入れることは慎重にせざるを得ない。
スケジュールでは2月にポルトガル、3月〜4月にオーストラリアが3戦と続くが、第2波によってこれらの国もまだ観光客を受け入れていない。もし、最初の5イベントが中止になれば、2年連続でキャンセルになる可能性すらある。

すでに1シーズンを棒に振ったことでサーフィンファンの熱が冷めているという問題もある。それが2シーズンになれば、サーフィンファンの情熱の真価が問われることになるだろう。同時にそれは静寂を保っているWSLの真価も問われることになる。

「時が経てば分かることさ」と言ってパットは肩をすくめた。

他メディアの意見

WSLにも記事を寄稿しているサーフィンとアウトドアのメディア『The Inertia』も今回のWSLの新方針に関して様々な意見を投稿している。

今回のプレーオフシステムを導入した新方針はアメリカの商業的なエンターテイメントの流れが色濃く反映している。

アメリカのプロ野球MLB、プロフットボールNHL、プロバスケットボールNBA、プロアイスホッケーNHLは全てプレーオフシステムを使用。MLBではワールドシリーズ、NHLではスーパーボールと呼ばれ、その期間は全米中が熱狂するお祭りのような盛り上がりを見せる。
アメリカではプロスポーツは完全なるエンターテイメントであり、そこにはドラマ、苦痛、恐怖、復讐、英雄とあらゆる要素が含まれているのだ。

アメリカ資本のWSLが「リーグ」と名称を変えてこのプレーオフシステムを使用するのは自然な流れとも言えるだろうし、プロサーフィンもアメリカの他のプロスポーツ同様の地位を築く可能性がある。

5名のサーファーが舞台に立つ「THE WSL FINALS」のバトルロワイヤル的な仕組みは従来のフォーマットではなかったエンターテイメントの要素が十分にあり、サーファーではない視聴者が見ても分かりやすいだろう。
また、実はこのシステムは逆転一発!的な話ではなく、各試合でコンスタントに成績を残した人を称賛する仕組みになっている。

最後のイベントのラストヒートで必ずチャンピオンが決まるシナリオはスポーツとしてフェアであり、ファンにとっても分かりやすいだろう。

『The Inertia』の他のエディターは新方針には長所と短所があると記していた。

長所の例をあげるとミッドシーズンカットやプレーオフのトーナメントまで従来よりも多くのヒートに緊張感を生み、理解しやすい仕組みになる。
今回のWSLの新方針はアメリカのモータースポーツの頂点に立つ『NASCARカップ・シリーズ』の改革にも似ている。
2004年から導入されたミッドシーズンカット、プレーオフは分かりやすいルールとしてファンの心を掴み、2005年にはスポーツ全体で最高の視聴者数を記録した。

短所はプレーオフ前の各戦でのシードシステムがトップシードに有利に働く可能性がある、No1シーディングの選手はその他の選手よりワールドタイトルを獲得する可能性が数段高くなる。これは他プロスポーツの統計でも証明されている。
また、ワールドチャンピオンがハワイで決まらないことにも違和感を感じる。

最後に他プロスポーツとプロサーフィンとの大きな差は、WSLのファンは100%に近い確率でサーファーであることだ。つまり、今回の大幅なルール変更や場所の選択などは、このような情熱とこだわりがあるサーファー達の議論の的になるだけではなく、彼らを裏切るような行為と捉える人も出てくるかもしれないのだ。

執筆:THE SURF NEWS編集部

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